ミュージカル「オリバー!」で、「スリの元締」役を演じる武田真治さん。俳優として、サックス奏者として、そして筋トレの伝道師として、年々活躍の場を広げています。作家の林真理子さんが、筋トレや今後の仕事についてうかがいました。

【武田真治、妻に愚痴らず「笑い話」に変換 「どう話せばおもしろくなるかな」】より続く

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林:今、武田さんに何回目かのブレークが来ていますよね。

武田:「再ブレーク」と言われてますので、ありがたいなと思ってます。

林:2、3年前の「紅白」でも、サックス吹いて腕立て伏せもしちゃって、すごくおかしかった。

武田:「紅白」に出られるということで舞い上がって、何の疑問もなく参加させていただいたんですが、まさか天童よしみさんが歌われている横で腕立て伏せするとは……。あんなハプニングみたいな映像って、なかなかないですよね(笑)。

林:「紅白」はその年に話題になったものが詰め込まれますから、「筋肉体操」はピッタリでした。

武田:何が自分の人生を切り開くチャンスになるかわからないですね。「オリバー!」は、「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」をプロデュースしたサー・キャメロン・マッキントッシュさんが最終オーディションの映像を見て合格をくださったのですが、「筋肉体操」がなければ、そのオーディションのチャンスさえなかったかもしれないと思っています。「筋肉体操」で注目していただいて、今回のチャンスが回ってきたのかなと思って。

林:筋肉は裏切らない……。

武田:そうですね。長期的な努力ができる人間だという証しにはなるのかな、と思います。

林:耳が痛いです(笑)。鍛え始めたきっかけは、何かあるんですか。

武田:じつは僕、20代のころに体調を崩してしまって、そのときには周りから人も離れていって、いろいろ失うものがあって……。

林:えっ、そうだったんですか。

武田:はい。精神的に弱い部分があるので、死んでしまいたいぐらいの気持ちになってしまったんですが、そのときに自分としっかり向き合って「いままで本当の努力ってしてきたのか? 一度、とことん自分を追い込んでみよう」と思って鍛え始めたんです。

林:ジム通い、週に何回ぐらいから始めたんですか。

武田:鍛え始めたころは結果がわかりやすいので、「もっと、もっと」という気持ちになって、02〜05年ごろは1日おきにハーフマラソンを走ってました。走らない日はベンチプレスとボクシングのジムに通って。

林:体形、どのぐらいで変わっていくんですか。

武田:これは何のエビデンス(根拠)もないですけれど、筋トレ界では「3」の数字で体が変わるなんて言われていて、ヘトヘトになるぐらい運動すると、3日目に「あれ?」という小さな変化があって、次は3週間ぐらいでまた少し変化があって、次、3カ月ぐらいすると体形がかなりスッとしたことに気づくんだとか。その次が3年目。僕の実感では、そこからはあまり変化がわからないですね。だから「最近、体を鍛えてますね」みたいなことを言われても、「実はもう20年近くこの体形なんですけどね」と思っていたりします(笑)。

林:食べるものも変えたんですか。

武田:いえ、それはまったく変えてないんです。

林:ジャンクフードも召し上がったりするんですか。

武田:むしろ好きなほうです。なにかで読んだのですが、人間にとって楽しいものって「太るもの」か「違法なもの」なんですって。

林:きょうも私、出かける前に芋けんぴ食べてきちゃいましたよ(笑)。知り合いから段ボールいっぱいに送られてきて。

武田:段ボールでですか? そんな罪な……(笑)。ストイックな生活をしている、と思われがちですが、僕も芋けんぴの魅力に勝てる気はしませんね。

林:それを聞いて、ちょっと安心しました(笑)。今後のことをお尋ねしますが、これからもミュージカルをガンガンやっていきたいな、と思われているんですか。

武田:先ほども話に出てきましたが、今回「オリバー!」で、イギリスのエリザベス女王から「サー」の称号を受けたサー・キャメロン・マッキントッシュさんの作品に初めて参加させていただいたことが、僕にとってはすごく大きい出来事で。地球の裏側で出会った人に「何の仕事してるの?」と聞かれて、「役者やってます」と言えるかどうかの分岐点にいると思うんです。でも、だからといって今後ミュージカルだけをやっていくというわけではありません。

林:ドラマや映画にも、もっと出ようかなと考えてらっしゃる?

武田:はい、もちろん積極的に参加していきたいと思ってます。役者業に限らずまだまだ何でもやりたいと思っています。「筋肉体操」も自分の一部です。コロナ禍で外出もままならない時代に、家にいながら運動できることを少しでも広められたことを誇らしく思っています。誰に頼まれたわけでもないサックスを続けてきたのも自分だし、これからもいろいろやっていきたいと、これまで以上に思っています。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

武田真治(たけだ・しんじ)/1972年、北海道生まれ。89年に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリ、翌年に俳優デビュー。映画「御法度」(99年)で日本アカデミー賞優秀助演男優賞など受賞。テレビ、映画、舞台などで活躍する一方、サックス奏者としても活動。2018年からNHK「みんなで筋肉体操」に出演。フェイギン役で出演するミュージカル「オリバー!」がプレビュー公演中。本公演は東京・東急シアターオーブで10月7日〜11月7日、大阪・梅田芸術劇場メインホールで12月4〜14日。

※週刊朝日  2021年10月15日号より抜粋