20日から鈴木京香さんと夫婦役で共演する舞台が始まる俳優・高橋克実さん。作家・林真理子さんとの対談では、新作舞台のこと、情報番組での苦労など明かしてくれました。

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林:高橋さん、日比谷のシアタークリエで「Home, I’m Darling〜愛しのマイホーム〜」というお芝居をなさるんですね(10月20日〜11月7日)。しかも、鈴木京香さんのご主人というすごくいい役で。

高橋:そうなんです(笑)。京香さんとの共演回数は多いんですが、夫婦役は初めてなんです。

林:チラシの写真を見ると、皆さん1950年代ごろの格好をしてるから、古いお芝居かと思ったら「2019年度ローレンス・オリヴィエ賞ベスト・ニュー・コメディ賞を受賞」と書いてありますね。これ、初演はいつなんですか。

高橋:初演は2018年だったと思います。確かに皆さん、舞台のビジュアルを見ると「昔のお芝居なのかな」と思うでしょうね。幕が開いても、衣装なんかもレトロな雰囲気ですし。でも、そういうテイストが好きな現代の夫婦、という設定なんですよ。

林:あ、チラシに書いてありますね。「1950年代のインテリアやファッションに囲まれた生活を満喫している夫婦」って。

高橋:洋服とか、冷蔵庫とかの家電も、昔のものを集めて修理しながら使っている、現代のロンドンの夫婦の話なんです。

林:昔のお芝居の再演かと思ったら、「日本初演」って書いてあるから、あれ?と思っていたんですけど、そういうことなんですね。

高橋:そうなんです。この舞台、登場人物の年齢が台本に書かれていなかったんですよ。何歳の役なんだろう?と思っていたら、演出の白井(晃)さんが「じつは皆さんすごく若いんですよ」っておっしゃって。じつは僕が37歳、京香さんは年上女房で38歳か39歳の設定なんですって。二人とも実年齢より若い役なんですけど、京香さんは年を重ねるごとに魅力的になられているので、「夫婦っていうより、親子?」って思われるんじゃないかって、不安なんです(笑)。

林:そんなことないと思いますけど、いま大ブレーク中の江口のりこさんも出てるし、青木さやかさんとか銀粉蝶さんとか袴田吉彦さんとか、人気の方ばっかりじゃないですか。

高橋:じつは京香さんと江口さんと僕は、7年ぐらい前にも一緒に「鼬(いたち)」という芝居をやっています。それは昔の日本の話で、東北を舞台にした暗〜い話だったんですけど、今回は一転してポップな色のお芝居なんです。

林:劇場がシアタークリエというのも、いい感じなんじゃないですか。あそこはしゃれたミュージカルとかもよく上演されますよね。

高橋:昔は「芸術座」でしたけど、名前も変わっておしゃれですよね。僕も、前に井上芳雄君とコメディーで一回出たことがありますが、きれいな劇場ですね。

林:おしゃれでおもしろそうなお芝居ですので、ぜひ拝見したいと思います。

高橋:ぜひぜひ。

林:ところで高橋さん、フジテレビの「グッディ!」のキャスターは、何年やられてたんでしたっけ。

高橋:去年の9月いっぱいで終わったので、5年半ですね。

林:あの安藤優子さんの横でニュースを毎日やるなんて、ふつうの俳優さんだったらちょっと二の足を踏みますよね。いま、テレビでMCの方が政治とか事件について何か言うと、SNSですぐに批判されるじゃないですか。それを覚悟のうえで毎日時事問題を扱うって、すごくストレスがたまると思いますよ。

高橋:僕も最初、「すいません、それ、私がやるんですか?」って聞きましたよ(笑)。最初は……いや、最初だけじゃないな。最後まであんまり思うようにはしゃべれませんでしたね(笑)。

林:新聞を何紙も読まなきゃいけないし、レクチャーを受けたりもするんでしょう?

高橋:現場に行けば新聞は何紙も置いてあります。その前にうちで1紙は読んでいきますけど、読んでいたとしても、的確なコメントができるようなバックボーンもないですからね。結局、安藤さんがストレートにニュースを報じて、僕はその横で、ちょっと和ませるという立ち位置でしたね。

林:「グッディ!」をやってるあいだ、役者のお仕事はちょっとセーブされてたんですか。

高橋:レギュラーですから、ほかの仕事をする時間はそれほど多くはありませんでした。でも、なるべく舞台を年に1本は入れさせていただいてましたね。

林:私、「女の一生」を拝見しましたよ。大竹しのぶさん主演の。

高橋:あれは去年の11月でしたから、稽古が始まったのは「グッディ!」のあとですね。

林:「早く、早く」って感じで皆さん待ってたんですね、高橋さんが舞台にたくさん出られるようになるのを。

高橋:ハハハハ、そんなことはないと思いますよ。

林:大竹さんとはもちろん初めてではないですよね。

高橋:大竹さんとは何回かご一緒させていただいてますけど、あれだけびっちり一緒、というのは初めてでした。しのぶさん、風間(杜夫)さん、段田(安則)さんなどのメンバーの中で、僕がほぼいちばん若かったので、先輩たちに当たって砕けろ、みたいな感じでしたね。

林:杉村春子さんの代表作で、名作と言われるものをおやりになるんだから、そりゃ大変ですよね。

高橋:たしか大竹さんは、杉村春子さんが演じられた役は3作目だったと思うんですけど、役にかける気合がすごかったので、こっちも何とかちゃんとやろうと思って。なかなかハードな舞台でした。

林:「キャスターよりやっぱり舞台が楽しいな」って思いました?

高橋:「グッディ!」、楽しかったですよ。でも、それぞれのおもしろさ、楽しさは全く違います。昔、俳優の仕事は、映画やテレビドラマとか舞台が中心だったと思うんですけど、今はそれに加えて、コマーシャルとか、バラエティーやトーク番組、ラジオとか多くの表現の場がありますからね。僕自身、自分のことを「本格派俳優」と意識することもありませんし。

林:これだけのキャリアを積んでるのに?

高橋:はい。今はジャンルのこだわりとかはあまりないですね。昔は、小劇場出身の人間がテレビで忙しくなったりすると、「あいつ、テレビに魂を売りやがった」とか羨ましさ半分、冗談で言ってたんですけどね(笑)。

林:まあ、そんな言い方、ひどいじゃないですか(笑)。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木敏雄)

高橋克実(たかはし・かつみ)/1961年、新潟県生まれ。小劇場で活躍し、93年「トーキョー国盗り物語」でテレビデビュー。過去の出演歴は、ドラマ「ショムニ」シリーズや、バラエティー番組「トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜」、報道番組「直撃LIVE グッディ!」など幅広い。そのほか、テレビ、映画、舞台など出演多数。舞台「Home, I’m Darling〜愛しのマイホーム〜」(10月20日〜11月7日、日比谷・シアタークリエ、その後全国6カ所でツアー公演)では、鈴木京香の夫役を演じる。

>>【後編/俳優・高橋克実が愛される理由「こだわるほどの哲学がない」】へ続く

※週刊朝日  2021年10月29日号より抜粋