今秋、長くから交流のあった樹木希林さんとの思い出をまとめた本を上梓した浅田美代子さん。作家・林真理子さんとの対談では、本の誕生秘話、希林さんとのいろんな話と話題が尽きることはありませんでした。

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林:樹木希林さんが亡くなって、もう3年なんですね。それに合わせて浅田美代子さんが『ひとりじめ』という本を出しましたけど、すごく評判がよくて売れているみたいですね。

浅田:うれしいです。この本は真理子さんたちがいなかったらできてないですよね。

林:美代子さんと私と、中園ミホさん(脚本家)、元編集者の女性とでごはんを食べてたら、「希林さんのことを書いてくれって頼まれてるんだけど、どうしようかと思って」って美代子さんが。

浅田:そしたら「来年あたり本を出したほうがいいわよ」って中園ミホさんが言ったの。

林:あの占師ですね(笑)。

浅田:真理子さんも「いいんじゃない? 出したほうがいいよ」って言ってくれて、「でも美代ちゃん、写真が多くて文字が大きいタレント本はダメよ。文字がいっぱい詰まってて、写真も1枚にして」とか言って、「出版社、どこがいいかしら」って、そこからが早かったの。2、3日後には編集者も紹介してくれて。

林:「用事は忙しい人に頼め」っていうけど、私、頼まれた用事はすぐするの。忙しくてまごまごしてるうちに忘れちゃうから。

浅田:あれだけ早いとは思わなかったから、感動しちゃった。

林:浅田美代子さんが書いた樹木希林さんの本、私も読みたいし、みんなも読みたいだろうと思って一生懸命やらせていただいたかいがあって、いろんな人が希林さんの思い出を書いている中で、具体的でいちばんおもしろい。いいことばっかりじゃなくって、希林さんと二人で誰かの悪口を言った思い出なんかも書いてるし。

浅田:書いてるうちに希林さんのことをどんどん思い出してきて、「この話もあの話も入れたい」って思っちゃったんだけど、こんなことをやってたら焦点がぶれちゃうなって思って、やめました。

林:希林さんにも前にここに出ていただいたことがあって。

浅田:変な人だったでしょ?(笑)

林:かなり個性の強いお方でした(笑)。希林さんと美代子さんって、親子みたいな関係に見られてるけど、親子ほど年は離れてないんですよね。いくつ違うんだっけ。

浅田:13歳かな。

林:だから親子じゃなくて、一番弟子って感じよね。「なんで私のこと、こんなにかわいがってくれるの?」って聞いたことがあるんでしょう?

浅田:ふつうの女子高生が芸能界に入るきっかけになったオーディションに、希林さんが審査員としてかかわっていて、「だから責任があるのよ」なんて言ってたけど。私、意外と性格がひねくれてるから、彼女みたいな変わった人、好きなんですよ。「おもしろい、この人」と思って、それこそ金魚のフンみたいにずっと一緒にいたんです。

林:1カ月に何回ぐらい会ってたんですか。

浅田:多いときは多いし、会わないときは月に1回ぐらいだったり。

林:それは二人っきりで?

浅田:だいたい二人っきり。あと、(内田)裕也さんがいたりとか。

林:裕也さん、希林さんのご夫妻と3人で、ハワイで過ごしたんでしょう? そんなコワいこと、よくできましたね(笑)。

浅田:部屋は違うし、飛行機だって私は私で別に行って、向こうで合流してたんですよ。1週間ぐらいの滞在だったんだけど、希林さんは物件好きだから、最初の3日とあとの3日、ホテルを引っ越したりするの。

林:不動産マニアだったみたいですね。美代子さんも、賃貸だったのに「家を買いなさい」って言われたんですよね。

浅田:延々言われてましたよ。「いいのよ私は。子どももいないし、残す人もいないんだから」と言ったら、「そういう問題じゃないのよ。60過ぎたら誰も貸してくれなくなるわよ。年寄りは孤独死とかあるから」って言われて、一緒に探してくれて。買ったら買ったで、「あんた、なんかコマーシャルに出てたけど、あれはギャラいくらだった? 100万でもいいから繰り上げ返済しなさい。借りたものは早く返しなさい」って。

林:それはすごく正しいアドバイスですね。

浅田:そうですよね。買わないつもりだったのに、「終のすみか」を持ったことで結局、精神的に変わったというか、落ち着きました。それまでは、たとえば車を買ったりすることでヨロイをつけてた気がするんだけど、家というちゃんとした資産を持ったことで、それがいらなくなったというか。

林:亡くなる少し前の希林さん、ご自分の死期がわかってたのか、いろんな映画に出てましたよね。

浅田:ほんとに状態は悪かったのに、メチャクチャ出てましたよ。「モリのいる場所」(2018年)、「万引き家族」(同)、「日日是好日」(同)、「エリカ38」(19年)、ドイツの映画(「命みじかし、恋せよ乙女」19年)にも出ていて、すごく精力的に仕事してらしたのよね。

林:「エリカ38」は、希林さんが「美代ちゃん、このままだったらバラエティータレントになっちゃうよ」と言って、美代子さん主演の映画を自分でプロデュースしたんでしょう?

浅田:「バラエティー色が強すぎるし、『釣りバカ日誌』とか、いい人、やさしい人の役ばっかりでおもしろくないわよ。犯人役をやりなさい」ってずっと言われてて。50代女性が起こしたワイドショーをにぎわすような殺人とかがあると、「こういうのやればいいのよ」って。「私にはこんな役来ないよ」と言ってたんだけど、年齢を20歳以上若く偽って男をだました詐欺事件があったときに、「これはいい。あんた、やれるよ」と言って、希林さんが動いたんです。

林:美代子さんへの最後のプレゼント、という感じですよね。

浅田:そうですよね。でも、ちゃんとお返ししてない感じがする。あの作品ではまだ。

林:希林さんが亡くなったとき、美代子さん、お葬式のときもご遺族の一員として、ずっと一緒に立ってましたよね。それが希林さんとの関係をあらわしてますよ。

浅田:自然にあそこにいましたね。

林:希林さんってとても冷静で知的な人ですが、本を読むと、びっくりするような一面もあるんですね。久世(光彦)さんのドラマの打ち上げのときに、久世さんがそのドラマに出ていた若い女優さんと不倫して、その女優さんがいま妊娠中だということを、希林さんが突然暴露したんでしょう? あれについて希林さんは何かおっしゃってたんですか。

浅田:希林さんは久世さんと同志みたいな感じで一緒にいろんなものをつくってきてたから、あれにはほんとにアタマに来たんだろうと思う。久世さんには家庭があったし、そういうのは許せないタイプなんですよね。周りはみんな知っているのに、誰もそれに触れないで、見て見ぬフリしてるし。それで最後の打ち上げのときに言っちゃったんだよね。

林:久世さんは激怒?

浅田:激怒というか、それでTBSをやめなきゃいけなくなっちゃって、人生が変わっちゃった。あのあと私、「仲直りしようよ」って両方に言ったけど、両方とも「絶対イヤだ」って。

林:でも、最後は和解したんでしょう?

浅田:うん。10年ぐらいたってからかな。和解したら、またベッタリになっちゃったの。

林:あ、そうなんだ。

浅田:希林さんが乳がんで入院したとき、私もしょっちゅう病院に行ってたんだけど、行くと久世さんがいつもいるんですよ。久世さん、自分が出版する小説とかについて、相談しに来てたの。希林さんの意見は的確だからね。

林:やっぱり久世さん、あんなことがあっても希林さんからは離れられなかったんですね。

浅田:希林さんと仕事した演出家とかは、離れられないと思う。

林:是枝(裕和)監督もそうみたいね。

浅田:ホン(台本)について本音で意見を言うし、それが的確だし、あんな役者さんいないと思う。「このシーンは私、いなくてもいいよね。ロケには行かないよ」ってほんとに来なかったり、セリフがすごく長いと「後半のここのセリフ、あんたが言って」って人にセリフ渡しちゃったり(笑)。

林:すごいですね、それは。

浅田:でも、そのほうがおもしろくなるのよ。それがすごい。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

浅田美代子(あさだ・みよこ)/1956年、東京都生まれ。73年、ドラマ「時間ですよ」でデビュー。劇中歌「赤い風船」が大ヒットし、同年の日本レコード大賞新人賞を受賞。「寺内貫太郎一家」「時間ですよ・昭和元年」「釣りバカ日誌」などのドラマ・映画など出演多数。2019年、映画「エリカ38」に主演、21年には映画「朝が来る」で第30回日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞。動物愛護団体への支援をライフワークとしている。俳優・樹木希林さんとの思い出をつづったエッセー集『ひとりじめ』(文藝春秋)が発売中。

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※週刊朝日  2021年11月26日号より抜粋