昨年、初舞台を踏み、自然体の演技で評価を受けた松島聡(Sexy Zone)が、中島らもの傑作舞台「こどもの一生」に挑む。演じるのは横暴な社長に振り回される若き秘書、柿沼役。心のケアが専門の孤島のクリニックを訪れ、やがて奇妙な現象に巻き込まれていくコメディーホラーだ。急成長を続ける松島の今に迫った。

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──今回の舞台は、突発性難聴の治療で降板した八乙女光さん(Hey! Say! JUMP、以降JUMP)の代役として抜擢されました。オファーを受けた心境は?

 初舞台から半年も経ってない自分が引き受けていいのか、それがこの作品にとって本当にベストなのかをめちゃくちゃ考えました。でも、僕もたくさんの方にサポートしていただきながら休養した経験がありますので、代役として僕を選んでくれた(八乙女)光くんの気持ちに応えたかった。あとはもう、台本を読んで、らもさんの世界観にどっぷりハマってしまったんですね。僕、ホラーが大好きなんですよ。ビデオ版の「呪怨」から入ってたくさん見てきたけど、この作品ほどコメディーとホラーが融合したものを見たことがなかった。闇を抱えた役を演じてみたかったこともあり、自分自身への挑戦としてもやらせていただきたいと思いました。

──柿沼は優秀な秘書でありながら、ストレス治療で10歳に“こども返り”して共同生活を送ります。柿沼役の難しさは?

 柿沼にはさらにもう一つの人格もあるんですよ。だから三つの役を演じ分けるような感覚があって。最初の読み合わせのときは、それぞれ別のテイストで演じてみたんですけど、演出家のG2さんに「それは違う」と言われました。「どの人格も、軸には柿沼がいるんだ」と。でも軸になる柿沼がどんな人物なのかいまいち理解できなかった。「台本の中にすべての答えがある」というG2さんのアドバイスを受けて、ひたすら台本を読み込んで理解しようとするんだけど、かなり苦戦しましたね。最初にぶつかった課題でした。

──どう乗り越えた?

 他の登場人物のセリフや言葉選びから台本に書かれてない柿沼像も想像して、それをG2さんにぶつけて、答え合わせをしながら進んでいった感じかな。あとは、自分と共通した部分を見つけて近づいていこうと。

──共通する部分とは?

 不器用で、うまく自分を表現できないところですね。柿沼は社会人として仕事はできる人だけど、本質的な部分で自分を理解できてない。だから勝手にストレスがたまって別人格が出てきてしまうんです。僕も表舞台で活動している自分と、本当の自分は違う。でも、本当の自分って何だろうと考えてみても、あんまり理解できなくて。

 僕、「素」になれる瞬間があまりないんです。家で一人になってもそうで、常にスイッチが入ってる感じ。メンバーで言うとケンティー(中島健人)と同じで、24時間、松島聡なんです。(菊池)風磨くんみたいにうまくオンオフの切り替えができたらいいんですけど。

──疲れません?

 そう疲れちゃう!(笑)だから、リフレッシュしに一人でカラオケに行ったり、愛犬と散歩したり、今日はもう何もしないでだらだら寝ようって日もあるし、いろんなことをやってます。決めないのがいいんです。これをしなきゃいけない、みたいな義務になっちゃうと、それもストレスになっちゃうから。だからもう直感? のどが渇いた。おいしいジュース屋さんに行こう〜♪みたいな、自分の感覚を大事にするようにしてます。

──ちなみに一人カラオケではどんな曲を?

 これはもう、ジャニソンです! 僕、ジャニオタ(ジャニーズオタク)なんで(笑)。1曲目はJUMP。で、2曲目はNEWSだね。3曲目は自分たちの曲でちょっと苦手意識があるもの。曲は毎回変わります。あ、(JUMPの)「真夜中のシャドーボーイ」は毎回、歌うかな。店員さんがドリンクを持ってくるとき気まずいんですよね。ジャニーズめちゃくちゃ好きやんって思われそうで、恥ずかしくて(笑)。

──「こども返り治療」、受けられるなら受ける?

 いや、大丈夫です。僕は今の人生が好きで、今が一番幸せなので。

 10歳のころは、学校という閉鎖空間が苦手で、お姉ちゃんが見てたJUMPのライブDVDに感動して「この世界に行きたい!」と、ジャニーズ(事務所のオーディション)を受けたんです。JUMPのバックダンサーになりたかったのに、入って9カ月でデビューするとは……人生、何があるかわかりませんね(笑)。

──13歳で大人の世界に入った松島さんが、初めて「子どもじゃいられない」と感じたのは?

 ここ最近かもしれない。お休みをいただいて、(2020年8月に)復帰してからじゃないかなぁ。子どもじゃいられないっていう感覚は「責任感」への意識の変化だと思うんです。若いころは余裕がないから、目の前のことに必死で周りが見えなかった。自分とゆっくり向き合う時間を持つことで、意識が変わったんだと思う。自分の埋め合わせをしてくれているメンバーの姿を客観的に見ることができて「あ、このままじゃいけない」と思ったんです。4人で抱えてくれている責任を自分も持たなきゃいけないし、持ちたいと思った。「責任感」をよりポジティブに感じられるようになったというか。メンバーとの関係性や、仕事への取り組み方もポジティブに変わったと思う。以前は自分の意見を言わないほうがいいと思ってたんです。グループでは年下でしたし、お兄ちゃんたちのほうが絶対良い意見を言うと思ってたから。でも意見を言わないのは参加してないのと同じなんだよね。今はちゃんと意見交換をすることを大事にしてます。

──舞台に取り組む中で発見した新しい自分は?

 自分ってこんなに悩めるんだと知りました。最初の2週間くらいは、G2さんのオーダーに応えられない自分の無力さが苦しくて悔しくて……。すごく丁寧に教えてくれるし、何を求められているのか頭ではわかるんです。でも表現力の引き出しが足りなくてうまく体現できないんですよ。僕、初めて悔しくて泣きましたもん。家に帰ったら、ドバ〜ッと涙が出てきて。びっくりした、自分でも。でも、その悔しさをバネに、悩む時間も楽しさに変えていけた。

 この舞台をやらせていただくことになって風磨くんにアドバイスをもらったんです。「演出家さんから言われる情報量は毎日増えていくけど、それを苦しいと思うか楽しいと思うか。楽しいと思えるかが一番大事なんだ」と。まさに「楽しい」に変えていけた。復帰前だったら、ネガティブなほうに走って「もう無理だ」となってたと思うけど、「いや、絶対できるから!」と自然と思えるんです。自分の考え方一つで現実が変わることを実感したからかな。一つずつでしたけどね。

──最近、柿沼のごとく振り回されたことは?

 あんまり振り回されないタイプかも。それよりも、これから僕がどんどん成長して楽しい驚きで振り回していきますよ、ファンの皆さんを!(笑)

(取材・構成/大道絵里子)

※週刊朝日  2022年4月29日号