5月16日から始まるNHKの夜ドラ「カナカナ」で主演を務める眞栄田郷敦さん。人気コミックのドラマ化で、居酒屋店主で元ヤンキーのマサを演じる。今回の役どころと今後の展望について語った。AERA 2022年5月23日号から。

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――ドラマ「カナカナ」で、ケンカには強いが天然、という居酒屋店主で元ヤンキーのマサを演じる。人の心が聞こえる不思議な能力を持つ5歳の少女・佳奈花(加藤柚凪)と織りなす心温まるコメディーだ。

眞栄田郷敦(以下、眞栄田):「カナカナ」は4月からNHKで新しく始まったドラマ枠の第2弾です。新しい枠に挑戦させてもらうことにワクワクしています。ドラマを盛り上げていきたいので、自分たちでも何かやろうと、TikTokを撮ったり、主題歌にあわせて踊る動画を撮ったり。ドラマの撮影はすごく大変なので、多くの人に見てもらいたい。出演者は本当にいいメンバーで、そういう工夫も楽しくやっています。

誰よりも持っておこう

――地上波の連続ドラマでは初主演を務める。

眞栄田:主演ではありますが、皆さん先輩ばかり。年が下でも芸歴は先輩の方もいて、僕としては「(主役だから)引っ張っていくぞ」というより、「この作品に対する思いを誰よりも持っておこう」というくらいの意識で現場にいます。

――演じるにあたり、重要だったのが「見た目だった」という。

眞栄田:マサは見た目と心のギャップがすごく大きい。このドラマに入る前は髪の毛がちょっと長かったこともあって、マサのイメージがわきませんでした。でも、髪を切ったり、特殊メイクで傷をつけてもらったり。見た目が変わったことで、すんなりマサが入ってきたんです。

 マサはとにかくまっすぐ演じています。彼は他のキャラクターとの感覚のズレというか、リアクションのズレが面白い。みんなとは全然違うリアクションを取るところがあります。脚本を読みながら、「マサならどうするかな」と妄想しています。

 マサは見た目は強面ですが、もともとがすごくいいヤツ。カナ(佳奈花)と出会ったことで、成長というか変化していく。そのエモーショナルなところも、大切にしています。


――カナとの絆は物語のカギでもある。演じる加藤柚凪との絆はどう築いているのか。

眞栄田:めちゃめちゃ仲いいですよ。普段からマサ、カナで呼び合っています。昨日(取材の前日)はセットの撮影が最後だったんですが、指輪をもらったんです。「プロポーズ?」って聞いたら、「違う!」って(笑)。僕から関係を築いたというよりは、柚凪ちゃんから娘と父親というか、後輩先輩というか、そんな関係性を築いてくれた。人見知りしない子で、最初のうちから似顔絵や折り紙などをくれていました。いつも楽しくやっています。

 僕は子どもが好きなので、違和感なくすんなり入れました。ただ、マサは「子どもだから」ということはなく、誰にでも平等みたいなところがあります。だけど話を重ねるごとにどんどん普通のお父さんになっていく。その様も魅力だと思います。

背中押してもらった

――2019年、映画「小さな恋のうた」で俳優としてデビューした。コロナ禍でも出演依頼は途切れることがない。この三余年で、俳優としての意識を変えた人や作品との出会いがあった。

眞栄田:デビュー作は僕にとってすごく大きかった。この作品に出会わなかったら、絶対に役者をやってないと思うし、やりたいとも思わなかった。「小さな恋のうた」のプロデューサーや監督、いろいろな人との出会いやご縁があって背中を押してもらい、「やってみよう」と踏み出せたことが大きかったと思います。

 現場での居ずまいや作品に向かう姿勢を学んだのは、昨夏のドラマ「プロミス・シンデレラ」です。二階堂ふみさんと共演させていただいたことが大きかったと思います。

――特に感じ入ったのは、二階堂の「俳優としてのスタンス」だったと振り返る。

眞栄田:二階堂さんは周りをよく見ている方でした。何より「自分はこうしたい」という意見を持っている。もし、例えば話の流れをよくするために、台本に辻褄の合わないことがあったとしたら、「それでは気持ちがつながらない」ということもきちんと話す。「その通りだな」と思うことが何度もありました。

 それは作品をより良くするための主張で、彼女が監督とディスカッションしている姿を見て、僕も演じる側として自分の意見を伝えようと思ったんです。監督といい意味でぶつかり、ディスカッションする。その結果、台本以上のシーンができあがったら、みんながハッピーになるでしょう。士気が高まり、現場の雰囲気も良くなります。ポジティブなスパイラルができるという体験をして、そういうふうに仕事をしたいと思うようになりました。

海外でも認められたい

眞栄田:デビュー後しばらくはわからないことばかりで、もらった台本をそのまま演じるのが精いっぱいでした。でも、演じるということは、浅いことではなくて。自分の意志をしっかり持ってぶつかりたいと思いましたし、制作の方々と対等にディスカッションできるよう準備をして現場に臨みたいと思っています。

――将来の目標を尋ねると、意外にも「生活できるお金を稼いで、贅沢(ぜいたく)でなくても自由に生活できればいいな」と堅実な答えが返ってきた。だが、「役者としての目標は違う」と話す。

眞栄田:最終的には海外でも認められたいという目標があります。その前に、日本で認められることはもう絶対です。外国で認められるとはイコール、アメリカで認められるということになるのかな。アカデミー賞もありますし。アメリカでアメリカの俳優たちと対等に芝居ができる。その上で評価をいただくというのがやはり最終目標です。

――これから演じてみたい役を尋ねると、こう即答した。

眞栄田:苦労したいですね。苦労する役ってなんだろう。たとえばハンデがあるとか、みんなが見たことがない役とか。僕は出演作を自分で決めていますが、新しい自分、見たことのない表情や芝居を見せることを大切にしています。なので、演じたことのない役は全部やりたいというのが正直なところです。苦労する役はやったことがないですし、体験したことがないから刺激になる。面白いと思いますし、間違いなくやりがいがあり、成長できると思うんです。

(フリーランス記者・坂口さゆり)

※AERA 2022年5月23日号