東京・上野動物園の人気者、ジャイアントパンダに赤ちゃんが誕生した。生後7日目に死亡した出産から5年。同園では「今度こそ」と万全のサポート態勢で臨む。

 上野動物園では5年ぶりのパンダベビーとあって、上野の街も喜びに包まれている。

 赤ちゃんが産声をあげたのは12日午前11時52分。「ギャー、ギャー、ギャーッ」。人間の手のひらに収まるほどの小さな体から鳴き声が響いた。14日の身体検査では鼻先からしっぽの付け根までの体長が14.3センチ、体重は147グラムだった。

 野生のパンダは生後10日ほどはエサも食べずに子育てをする。シンシンは大好物のタケノコには目もくれず、赤ちゃんを大事そうに抱き続けている。福田豊園長は「赤ちゃんにとてもよく反応している。いい母親になるんじゃないか」と目を細める。

●シンシンに強い発情

 リーリー(11歳)とシンシン(同)の交尾が確認されたのは2月27日。過去3年は交尾に至らなかったが、今年は雌のシンシンに強い発情が見られていた。「いけるかもしれない」。飼育係たちはひそかに期待を寄せていた。

 とはいえ、パンダの繁殖は難しい。雌の発情期は年に1〜3日と短く、「その時」を的確に見極めて同居させる必要がある。行動からホルモン値まで妊娠時と同じように変化する「偽妊娠」の可能性もあり、出産当日までわからないという。

 120キロほどのお母さんからわずか150グラムの子どもが生まれるため、母親の「子育て力」が赤ちゃんの成長を左右する。シンシンが初産だった2012年は生後2日目でエサに気をとられて赤ちゃんをコンクリートの床に放り出してしまい、飼育係が保育器に移したが、最終的に肺炎で死んでしまった。

 福田園長は「成長が遅い動物なので、半年くらいは緊張する場面もあると思う。いざという時は飼育係がサポートする」と話す。

 上野動物園にとって5頭目となる赤ちゃんの誕生で、国内のパンダは9頭に。上野で3頭、神戸市立王子動物園で1頭を飼育しており、なかでも日本一の大家族が和歌山の民間施設アドベンチャーワールドだ。

●繁殖握る雄の「気配り」

 かつては「パンダといえば上野動物園、上野動物園といえばパンダ」と言われたが、近年のアドベンチャーワールドの繁殖実績は著しい。上野の5頭に対し、17頭。多くは中国に帰って立派なお父さん、お母さんになっている。秘密はどこにあるのか。企画営業課の井上杏菜さんは「14頭の父親になった永明(エイメイ)の力が大きい」と話す。永明は1992年、中国で生まれ、94年に来日した。優しく穏やかな性格で、雌の体調や気分の変化に気づく「気配り」ができる。永明自身双子だったためか、最初のパートナーとの間には2組の双子を含む6頭が、2頭目との間にも3組の双子を含む8頭が生まれている。

「リード力」の点では上野動物園のリーリーも負けていない。受け入れてもらえるよう、雌を観察し、発情のタイミングを我慢強く待つ姿が見られるという。

 加えて、「リーリーとシンシンの相性はばっちり」と福田園長。2頭は前回に続き、今回も人工授精に頼らず出産にこぎつけた。「世界の動物園では自然交配できないことがほとんどで、人工授精で生まれているケースが多い。自然交配できるペアが日本に2組もいるというのは素晴らしいこと」と話す。

 待望の赤ちゃん誕生に地元はお祝いムードが続く。上野観光連盟の二木忠男会長は「パンダは上野の看板役者。やっと生まれてくれた」とほくほく顔だ。

 同園によると、赤ちゃんは生後1週間ごろから黒い部分が見え始め、1カ月ごろにはパンダらしい模様が完成する。公開の予定は未定だが、29年前にユウユウが生まれた時は3カ月後に名前を公募し、その姿は半年後に公開された。

(朝日新聞社会部・西村奈緒美)

※AERA 2017年6月26日