「アイスクリーム=ダイエットの敵」と思うなかれ。食生活に上手に取り入れれば、体重コントロールも可能なのだ。皆さん、食事制限にストレスがかかるなら、ぜひアイスを食べましょう。我慢するダイエットなんて、もう古いのですから。

 今、空前のアイスブームが起きている。

 アイスクリーム流通新聞社によると、2016年度の販売額は前年比7%増の約5千億円。5年連続で伸び、過去最高。ビール市場は前年割れが続いて冷え込むなか、アイスの市場はアツい。「アイス」を「愛す」人が増えているのだ。

 かくいう記者も大のアイス好き。朝昼晩、アイス、アイス……。アイスを主食代わりにすることも多く、この原稿を書いている今も、ハーゲンダッツのアイスを食べている。前夜の夕食はアボカドとナッツ入りのサラダと、クラシエの豆乳アイス「Soy」のみ。

 学生時代にアイスクリーム店でアルバイトしていたときに、ダイエット目的もあって2週間アイスしか食べないで過ごした体験もある。冷たさに飽きたら、電子レンジで“チン”してホットミルクに。振り返るとばかばかしいほどの工夫で、ひたすら食べた。

 するとどうだろう。意外にも体調は悪くなかった。糖質や脂質を過剰摂取したとは思う。でも、太るどころか体重が少し落ちた。アイスを食べる幸せを味わい、「ストレスフリー(無縁)の自己流アイスダイエット」を実践した。

 そんな経験から、「アイスは悪くない! むしろ、ダイエットの味方かもしれない」ことを考えたい。

 アイスといえば、乳脂肪分。飽和脂肪酸を多く含むため、多くとると悪玉コレステロールが増える、が通説だった。しかし、最近の研究で、必ずしもそうではないこともわかってきた。

 一般社団法人Jミルク広報グループの箸本弘一さんは「牛乳はアミノ酸の比率の高いたんぱく質など、いろいろな栄養素がバランスよく入っている。この点に着目すべきです」と話す。

 飽和脂肪酸を多くとると、生活習慣病につながる。ただ、低脂肪牛乳よりも全脂肪の牛乳を飲む人のほうが病気になりにくく、太りにくいとの研究結果もある。

 乳脂肪には脂溶性のビタミンやカロテンも含まれる。さらに、牛乳は大豆や卵などよりも、筋肉をつくるスイッチを入れる分岐鎖アミノ酸「BCAA」が多い。筋肉がつけば体重も落としやすくなる。牛乳を上手に食生活に取り入れると、間接的にダイエットにつながるのではないか。

「アイスでダイエット、可能ですよね!?」

 箸本さんに聞いてみた。すると、「アイスクリームを食べると太る、とあまり心配しすぎなくてもよいでしょうね。常識の範囲内なら、ですが」とのお答え。

 食品機能化学に詳しい玉川大農学部の八並一寿教授にもアイスのことを尋ねると、乳酸菌入りのアイスがおすすめ、と教えてくれた。

 腸内環境を整えられるから、便秘に悩む肉食女子は肉を食べた後のデザートにアイスを選ぶとよい。「アイスを食べて、と言って嫌がる人は、そういないでしょうからね(笑)」と八並教授。ダイエットに良いかどうかも、ズバリ聞いた。

「ほかのスナック菓子と違って、少量で満足できて食べすぎを抑えられますから、その意味ではいいでしょう。冷たさは心地よい脳への刺激になりますしね」

 なるべく小さくておいしいアイスを選ぶのが満足度を高めるポイントという。

 アブラに詳しい麻布大生命・環境科学部の守口徹教授は「冷凍庫から出してすぐにスプーンですくえる滑らかなアイスには要注意です」とアドバイスする。

 滑らかにすくえるのは、たいてい植物油が入っているから。過剰に摂取すると、動脈硬化を引き起こすとも指摘されている。だから、守口教授のおすすめは「植物油が入っていないアイス。これなら、健康志向が高くなります」。

 乳脂肪分が高いアイスの多くは植物油を含まない。ただカロリーは若干高め。カロリーをとるか、アブラの質をとるかは悩ましい。

 スーパーなどに並ぶラクトアイスは、乳固形分が少なく植物油が使われている製品が多い。ただ、アイスクリーム流通新聞社の山内洋行・編集次長は「メーカーは健康を意識した商品を展開しています。今後も健康志向のアイスは、注目のカテゴリーです」という。

 明治が3月に発売した「明治 デザートプラス more(モア)」シリーズは、ヨーグルト仕立てのアイス。脂肪ゼロなのにこくのある味わい。健康意識の高い40〜60代の男女に調査し、「おいしくて我慢しないで食べられるアイス」のニーズが強いことがわかり、開発した。

 江崎グリコが2月に発売した「SUNAO(スナオ)」は、1個わずか80キロカロリー。糖質を40〜50%オフ(10グラム以下)にしたうえ、食物繊維もたっぷり。豆乳を使い、砂糖を使わない、など素材にこだわった。

 食べたい気持ちに「素直に」寄り添う思いで開発。20〜30代の女性を中心に人気だ。カロリーをコントロールしつつ、アイスを食べて前向きにダイエット。そんな思いに応える商品をめざしているという。

「ガリガリ君」の赤城乳業も3月、10種の野菜と3種のフルーツを使い、チアシードも入れた「リッチ グリーンスムージー味」を出した。ヘルシーな商品がずいぶん増えたものだ。

 ちなみに、アイスは乳成分が高い順に、アイスクリーム(乳固形分15%以上、うち乳脂肪分8%以上)▽アイスミルク(同10%以上、3%以上)▽ラクトアイス(乳固形分3%以上)の3種に分かれる。「ガリガリ君」のような商品は「氷菓」と呼ばれる。

 食べたい気持ちを無理に抑えることなく、体を絞る。そんな健全な、アイスダイエットがあってもよいのではないだろうか。

 グリコの「スナオ」の開発担当者は、アイスを食べながらもバランスの良い食事と適度な運動を心がけ、1年2カ月で12キロやせたという。「アイスはハッピーな食べ物ですから、それでダイエットできればいいと思いますよ」。その一言が印象的だった。

 アイスの消費が世界トップクラスのフィンランドや、ジェラート大国・イタリアでアイスを食べる人を観察すると、本当に幸せそうだ。米国から日本にも上陸したアイス店「コールド・ストーン・クリーマリー」の店内では、アイスを作りながら、店員が笑顔で歌う。アイスは自然と人を笑顔にさせる。それは世界共通なのだ。

 アイスを食べる幸せにとろけつつ、サイズダウン。うまくいくかどうかは保証しませんが、この猛暑を乗り切るためにもアイスダイエット、やってみます?

※週刊朝日 2017年7月28日号