EDかもしれない。でも病院に行くのはちょっと……というあなた。もしかしたら深刻な病気が隠れているかもしれません。

 診察室を訪れた40代前半の男性がためらいがちに口を開いた。

「最近、勃起力が落ちてきて……。男性更年期じゃないかと思うんです」

 昭和大学藤が丘病院泌尿器科教授の佐々木春明医師が男性を問診すると、近ごろ汗をかきやすく、疲れやすくなったという。そこで血液検査をしたところ、血糖値が通常1デシリットルあたり70〜110ミリグラムのところ、470ミリグラムの値が出た。糖尿病だ。

「ED(勃起障害)の陰には糖尿病や高血圧などの生活習慣病が隠れていることが多い。受診をためらううちに見逃されてしまい、深刻化するケースもあります」(佐々木医師)

●動脈硬化の可能性も

 EDにはストレスやプレッシャーなどによる心因性のものと、血管や神経に問題がある器質性のものがある。勃起がうまくいかなくなると、多くの人は心因性のものと思いがち。だが、実は、大きな病気のサインという可能性もある。なぜなら、通常、勃起は性的刺激によって陰茎の動脈が広がり、血液が流れ込むことで起きるが、陰茎に十分な量の血液が流れない理由として「動脈硬化」の可能性があるからだ。糖尿病や高血圧も動脈硬化を引き起こすとされる。

 動脈硬化で血管が狭くなったり、詰まったりすると、心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な症状が起きることも。順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科の辻村晃教授は「EDは心臓や脳の血管障害の予兆」と指摘する。

「陰茎動脈は直径1〜2ミリと体の中でも特に細く、動脈硬化の障害が最も早く現れます。心筋梗塞などの冠動脈疾患を患った男性の3分の2が、3年前からEDを自覚していたという海外からのデータもあり、まずはEDを自覚したら早めに病院を受診してほしい」

 EDは体からのSOSサインでもあるが、あまり知られていない。バイエル薬品が2016年に実施したインターネット調査(サンプル数1030)によると、「ED症状がある人はない人と比べて将来脳梗塞や心筋梗塞になりやすいと思うか」という質問に、「思う」はわずか12.8%しかいなかった。

 ED治療は内服薬が主流。しかし、EDと自覚しても受診をためらい、インターネットでED治療薬を「個人輸入」という名目で購入する人もいる。個人輸入の薬には偽造品も混じり、健康被害が起きるリスクもある。

●ネット購入4割が偽物

 前出の佐々木医師の元を訪れた50代男性が「知人からネットで買ったED治療薬をもらって飲んだけど効かなかった」と言って取り出したのは、「C50」の刻印のある黄色の錠剤だった。

「シアリスの偽造品です。実は正規品は20ミリグラムまでしかありません。偽造医薬品は何が含まれているかわからず、覚醒剤の一部や殺鼠剤などが入っていることも。過去には低血糖状態で意識喪失を起こして搬送された例もあり、命を落とす可能性もあります」(佐々木医師)

 治療薬を製造・販売する4社(ファイザー、バイエル薬品、日本新薬、日本イーライリリー)が16年に実施した合同調査によると、日本とタイのネットの販売サイトからED治療薬を購入し、鑑定したところ、約4割が偽造品だった。有効成分を全く含まないものや他の成分が入ったもの、不純物を含むものもあったという。ただ、外見は正規品と酷似していて、ネット上では「海外製のジェネリック医薬品」などと偽って販売されており、見分けるのは難しい。

 バイアグラを製造するファイザーの広報担当者はこう話す。

「中国で摘発された製造現場は非常に不衛生な環境でした。偽造医薬品は健康被害以外にも、個人情報の流出やスキミングの被害の報告もあります。ただ、目視してもどれが偽物かはわからないため、病院へ行って処方してもらうことが安全です」

(編集部・深澤友紀)

※AERA 2017年7月24日号