失った歯を補う方法には、入れ歯やブリッジ、インプラントなどがあり、どの治療を選べばいいか迷うところ。そこで、週刊朝日MOOK「いい歯医者2017 誰も教えてくれなかった歯科の選び方」が、実際に現場で活躍する歯科医に、入れ歯についての素朴なギモンを尋ねてみた。

【Q:入れ歯が完成したあとはどれくらいの頻度で通院すればいい?】

A:状況によりますが3カ月から半年に1回は通院が必要

 入れ歯は完成してからもトラブルが起きやすく、ブリッジやインプラントに比べて通院の頻度は多くなります。最低でも半年に1回は受診しましょう。

 歯科医院でのケアの一つが、セルフケアではカバーしきれない入れ歯の洗浄です。さらに染め出し液で入れ歯に汚れが残っていないかどうかをチェックしてもらい、みがき方を再度指導してもらうこともできます。

 入れ歯の場合、かみ合わせの変化や入れ歯を支える顎の粘膜が吸収されることなどから、定期的に調整することも必要です。トラブルが起きているにもかかわらず放置すると、入れ歯を作り直さざるをえないこともあるのです。

【Q:入れ歯は熱湯消毒するときれいになる?】

A:熱湯をかけるとプラスチック部分が劣化します

 保険診療で作れる入れ歯は、「レジン床(しょう)」といってプラスチックでできています。自費でできる「金属床」は金属でできていますが、部分的にプラスチックを使用しています。プラスチック製の食器などで実感したことがある人も多いと思いますが、プラスチックは熱に弱い性質があります。このため、入れ歯を熱湯につけると、劣化しやすいのです。

 そこで、入れ歯は熱湯ではなく、「入れ歯洗浄剤」につけて、除菌・殺菌するようにしましょう。また、入れ歯を装着したまま、通常の歯みがき剤でみがく人もいますが、歯みがき剤に含まれている研磨剤は、入れ歯のプラスチック部分を傷つけることがあります。入れ歯は必ず外して、流水ですすぎながら専用歯ブラシで汚れを落としましょう。

【Q:入れ歯が外れやすくなってきた】

A:かみ合わせの変化や床とのすき間が原因。入れ歯の微調整を

 入れ歯は動かないように口の中の形に合わせて作られていますが、口の中の状況は、時間とともに変化していくもの。かみ合わせが変わっていくほか、入れ歯を支えている顎の粘膜が減っていき粘膜と「床」との間にすき間ができることなどにより、入れ歯は動いたり、外れやすくなったりします。

 だからといって、そのたびに入れ歯を作り直さなければならないわけではありません。歯科医師に入れ歯を微調整してもらうことで、使い続けることはできます。鶴見大学歯学部病院補綴科教授の大久保力廣歯科医師はこう話します。

「入れ歯が動きやすくなっているのに放置してしまうと、入れ歯を作り直さなければならなくなることもあります。さらに入れ歯が動くことでほかの歯が影響を受けてむし歯や歯周病になり、歯を失ってしまうと、より大きな入れ歯が必要になることもあるのです」

 また、入れ歯のプラスチック部分が摩耗することで、入れ歯が外れやすくなることもあります。

【Q:入れ歯がにおうのはなぜ?】

A:入れ歯に汚れが付着しているサイン。専用洗浄剤でケアを

 入れ歯はもともと無臭です。それなのに、におうということは、汚れなどの付着物がある証拠。特にプラスチックは中に細かい穴がたくさんあいていて水分を吸収しやすく、細菌が混ざった水分を吸うと、におうようになります。専用ブラシで汚れが残りやすい「バネ(クラスプ)」の内側や歯ぐきと接している凹んだ部分を徹底的にみがくほか、入れ歯洗浄剤につけて、入念にケアすること。それでもにおうようなら、歯科医院で清掃、除菌してもらいましょう。

「歯科医院で手入れしてもらっても、自分で清掃できなければ、再びにおってしまいます。手入れしてもらった際には、清掃の仕方も指導してもらいましょう」(大久保歯科医師)

 においというのは、入れ歯が汚れているサインととらえることもできます。汚れたままの入れ歯を口の中に装着すると、周囲の歯がむし歯や歯周病になるばかりか、誤嚥性(ごえんせい)肺炎を引き起こすこともあるので要注意です。特に唾液中の細菌が肺に流れ込んで生じる誤嚥性肺炎は高齢者の死亡原因にもなる病気。肺炎予防のためにも、入れ歯を清潔にしておくことは重要なのです。

【監修】
鶴見大学歯学部病院 補綴科 教授
大久保力廣(おおくぼちかひろ)歯科医師

(取材・文/中寺暁子)