猛暑を乗り切るためにはまず体力。しかし、夏場の激しい運動には、熱中症の危険がついて回る。そこでオススメなのが、部屋の中ですぐできる“4秒筋トレ”。無理せず徐々に体の引き締めや筋力をアップでき、1カ月後には“目に見える効果”を実感できるという。

「夏こそ、意識的に筋トレを取り入れてほしい」

 これまで6千人以上に筋トレを指導した経験を持つ、熊本大学教授で医師の、都竹茂樹さん(熊本大学教授システム学研究センター)は、こう断言する。

 うだるような暑さの中では運動する気も起こらず、体力を温存しようと部屋でじっと過ごしがち。だが、放っておけば体力は衰える一方。筋肉は普段どおりの生活だと、年間1〜2%も減るといわれている。さらに、暑さで水分を奪われがちな夏は、脱水で水分量が減り、体重は変わらないが脂肪は増えている“隠れ肥満”に陥ることもある。

「筋肉が衰えると、体形の崩れを招き、生活習慣病のリスクも高まる。無理をするのは危険ですが、夏の間は運動をストップ、と考えている人は要注意です」

 都竹さんは、中高年を対象に、時間とお金を極力かけずに筋力アップできる効果的な方法を研究し続けてきた。そこで行き着いたのが、「4秒」を一単位にした筋トレ法だ。都竹さんの近著『くまモンと一緒にユルッと4秒筋トレ』にまとめられている。

「4秒筋トレなら、涼しい部屋でテレビを見ながらできるし、細切れでやっても効果がある。短期間で手っ取り早く効果を出すには、筋トレがベスト。ウォーキングより早く、効果を実感できますよ」

 さっそく試しに、実践してみよう。四つのフォームが、4秒筋トレの代表的な動作だ。

「膝上げ」と「手足伸ばし」は、インナーマッスルを鍛えられるため、下腹部の引き締めや転倒防止、姿勢改善などに効果的。「スクワット」は足腰を鍛えられ、太ももの引き締めや膝痛予防に役立つ。上半身を鍛えられる「腕立て」はちょっとキツいが、厚い胸板、二の腕やおなかの引き締めに効果的だ。

 ポイントは、一つの動作を4秒かけて、ゆっくり行うこと。そして、反動を意識的に使わずに、常に体のどこかに力が入った状態をキープすることだ。

「筋肉をしっかり刺激するには、一つひとつの動作を丁寧に、ゆっくり行うことが何より大事です。一見、楽にできそうな動作も、ゆっくりやれば、負荷がかかって結構キツい。この“ゆっくり”の最適な目安が、4秒なのです」

 スクワットなら、しゃがんだときに一瞬止まり、立ち上がるときにも反動は使わない。また立ち上がったときには膝を伸ばし切らず、太ももに力が入った状態を維持する。力を抜け切らないように気を付けるだけで、一つひとつの動作にかかる負荷が増し、筋肉をしっかりと刺激することができる。

「反動を使えば、何回でも楽にできますが、それではあまり効果がない。鍛えている筋肉を意識して、一つひとつの動作をじっくり、力を抜かずに行うだけで、ぐっと効果が増します」

 1日の目安は、各動作を10回×2セット。朝と夜に分けても、まとめてもいい。体力に自信がない人は、負担が軽めの「膝上げ」「手足伸ばし」から取り入れてみるのも手だ。これなら熱中症の心配もない。

「1カ月続ければ、おなか周りが2〜3センチ減り、徐々に体重が落ちてきます。1千人を超える中年男女を対象にした研究では、標準体形の人も含め、平均2.5センチ減りました」

 生活習慣病の予防には、ウォーキングに代表される有酸素運動が良いとされていたが、最近では病院でも運動療法の一環として、筋トレが積極的に推奨されるようになってきた。筋トレには、ダイエット効果を始め、血糖値やコレステロール値を下げる、内臓脂肪を減らす、膝痛改善、つまずきにくくなり階段の上り下りが楽になるなど、多くの効果が実証されている。

「実はウォーキングだけでは、筋肉は減ってしまう。歩くことは脂肪燃焼には良い手段ですが、筋肉を維持、強化するという点では弱い。筋トレとウォーキングの併用がベストですが、どちらかなら、短期間で効果の出やすい筋トレから始めることをおすすめします」

 年齢とともに体力の衰えを感じている人でも大丈夫。都竹さんが2005年に実施した研究では、平均年齢72歳の女性15人を対象に、1年間、4秒筋トレを続けてもらった。その結果、筋トレを始める前と比べて、平均で約4%の筋肉が増加。84歳でも、筋肉の厚みが増したという。

「死ぬまで一人でトイレに行くためには、筋肉が何より大事です。つまりシニアこそ、諦めずに筋トレをやってほしい。90歳以上の方からも、3カ月ほど続けると、“階段の上り下りが楽になった”などの声も聞かれました。筋トレを始めるのに、遅すぎることは決してありません」

 運動後の水分補給で、今の季節に注意したいのが、スポーツドリンクや炭酸飲料、栄養ドリンクなどを飲みすぎること。

「例えばスポーツドリンク500ミリリットルには、スティックシュガー11本分の砂糖が、コーラには19本分の砂糖が含まれています。暑い日の運動後に、スポーツドリンクをがぶ飲みする人もいますが、運動で消費したカロリーをそのまま飲むようなものです」

 何事も継続は難しい。都竹さんがおすすめするのが、毎日必ずやることにひもづける方法。例えば歯磨きの時間には必ずスクワットする、トイレに行けば膝上げをする……など。筋トレをした日にはカレンダーに印をつけ、達成度合いをわかりやすくするのも手だ。

「手軽にできるので、“時間がない”は言い訳になりません。重い器具も使わないので、膝に痛みがある人でも取り入れられる。暑い夏に負けない体を作るためにも、ぜひ実践してみて」

 いよいよ夏本番。運動は今すぐ室内に切り替えて、涼しく手軽に、猛暑を乗り切る体を作ろう。(本誌・松岡かすみ)

<4つのフォーム>
【腕立て】
(1)肘を曲げ、体を沈ませる。両手は胸の位置。脇は30度開き、肩・腰・足首は一直線に
(2)おなかに力を入れ、腕を伸ばして体を持ち上げる。肘は伸ばし切らない

【膝上げ】
(1)手を腰にあて椅子に座る。視線は正面。引き上げる足は1センチほど浮かす
(2)足を20〜30センチ引き上げる。戻すとき、足の裏は床につけない。左右各10回を2セット行う

【スクワット】
(1)椅子に座り、視線は正面に。手は腰、足と膝は肩幅に開き、つま先は30度外向きに
(2)立ち上がる。膝は伸ばし切らない。しゃがむときはお尻を後ろに突き出すように

【手足伸ばし】
(1)両手を床につけ、四つん這いに。両手、両膝は肩幅に。両肘は少し曲げ、背中をそらす
(2)右手と左足(左手と右足)を、床と平行になるまで上げる。左右各10回を2セット行う

※週刊朝日 2017年7月28日号