このところの酷暑で、体がバテバテという人も多いのではないだろうか。だが、単なる夏バテだと思っていたら、実は「亜鉛欠乏」の可能性も。特に夏は汗で亜鉛が失われやすいので注意が必要だ。“あの食材”をプラスし、亜鉛欠乏を徹底予防しよう。

「最近なんだかイライラする、元気が出ない、貧血かも……。そんな症状がある人は、“亜鉛欠乏”かもしれません。体内の亜鉛は汗と一緒に流れ出てしまうので、夏は特に亜鉛が不足しやすい。注意が必要です」

 こう話すのは、みまき温泉診療所(長野県東御市)の医師、倉澤隆平さんだ。亜鉛は必須ミネラルの一つで、タンパク質の生成に使われたり、酵素の活性を上げたり、情報伝達の機能を果たしたり、身体に欠かせない栄養素だ。それだけに、不足で起こる症状も実に多岐にわたる。

【亜鉛欠乏による代表的な症状】
発育の遅れ 味覚障害 嗅覚障害 食欲不振や減退 精子減少 無月経 免疫低下 皮膚のかゆみ 傷の治りが遅い 貧血 下痢 口角炎 舌痛症 元気が出ない イライラなど精神症状

 倉澤さんがこれまでに経験したのは、食欲不振や皮膚のかゆみ、口角炎や味覚障害などだ。このほかに精子減少、無月経なども起こることがある。舌痛症では原因がわからず、「精神的なもの」と片付けられてしまっていたケースも少なくないという。

 亜鉛欠乏の患者を数多く治療する倉澤さんは、長野県北御牧(みまき)村(現東御市)の住民約1400人を調査。現代人は亜鉛が不足している実態を突き止めた。1970年代と比べると血液中の亜鉛量は少なく、成人の3割が亜鉛欠乏に陥っている計算になる。

 ではなぜ、亜鉛欠乏になるのか。7年前から食事を実測し、現代人のミネラル不足を訴える、NPO法人「食品と暮らしの安全基金」代表の小若順一さんは、食材の影響を挙げる。

「野菜などに含まれるミネラルの量がかなり減っています。自然栽培が行われていたころと比べると、半分ぐらいになっているのではないでしょうか」

 小若さんらは、市販の弁当や外食、加工食品のミネラル量を調べると、厚生労働省が定めた推奨量をはるかに下回っていた。理由として考えられるのが、加工食品の製造で行われている“ブランチング”だ。

「野菜や肉などを軽く加熱する工程のことで、殺菌や、アクを取り除く、色をよくするなどの目的で行われます。ブランチング後に食材を冷凍し、解凍して洗うため、ほとんどのミネラルは流れてしまう。亜鉛はごくわずかしか残りません」(小若さん)

 亜鉛は、体内で作られないため、不足したら食べ物で補うしかない。小若さんが「いつもの食事に“プラスアルファ”して」とアドバイスするのが、「大きめ(10センチほど)の煮干し2匹」か「煮干しやアゴ(トビウオ)の粉末を大さじ2杯」を毎食とるという方法だ。

「粉末は非精製のゴマ油やオリーブオイルなどと混ぜてペースト状にするといいでしょう。元はだしなので、料理の味がよくなります。夏なら冷しゃぶのタレ、そうめんや冷や奴にかけてもいいでしょう」(同)

 このほかにも、亜鉛が多く含まれるカキなどの貝類を、意識してとるようにしたい。

 こうした食事の改善を試みても症状が改善しない場合は、医療機関の受診を。服用している薬の影響なども考えられるためだ。

「脂質異常症や骨粗しょう症、認知症の薬のなかには、亜鉛欠乏を招くものが少なくありません」(倉澤さん)

 強い皮膚のかゆみを訴えた80代の患者に、それらの薬をやめてもらい、亜鉛製剤を処方したところ、症状は改善したという。

「亜鉛欠乏は個人差が大きく、同じ量でも症状が出る人と出ない人がいます。まだ症状がない人も健診などで血液検査をする際に、亜鉛の量を測っておくといいと思います」(同)

■亜鉛の豊富な食品(mg)
カキ(貝)/中3個/6.6
鶏レバー/6切れ/2.3
十割そば/1食分/1.9
牛乳/200ml/0.8
クルミ/9粒/0.7
アーモンド/19粒/0.6
煮干し粉/大さじ1/0.5
(「食品と暮らしの安全」をもとに編集部で作成)

※週刊朝日 2017年7月28日号