「男性が惹かれる女性の服とはどんな装いか、を勘違いしている女性が多い」と話すのは、何万人ものスタイリストや販売員の育成をし、個人のコーディネートも行う服飾戦略家のしぎはらひろ子さんだ。彼女のコーディネートは『女性たちの人生を変える!』と評判となり、予約は常に3カ月〜半年待ちの状態だという。

 そんなしぎはらさんが、著書『出会いを引き寄せる服の選び方 愛されリアルコーデ』で紹介してくれた男性の目を惹くコーディネート術の実例の一部を特別にお届けする。



■34歳の女性 「目立ちたくも劣りたくもない」誠実で無難なチョイスの服

 強い結婚願望を持つ34歳の女性、由希子さん。高校、大学ともに女子校育ち、学生時代から男性と接する機会が少なく、あまり男性慣れしていないという女性で、とにかく物事に対してもご自分に対しても否定的。

 でも、記入してもらったヒアリングシートにはスタイリングで「得たい効果」という項目に、「モテ、モテ、モテ」と太く大きな書体で力強く、書いてありました。また男性に対して「つい構えてしまう」とも。

 待ち合わせ場所に現れた由希子さんは、白のツイードジャケットに、紺のタイトスカートという格好。とても誠実でしっかりしている女性に見えました。彼女が選んだこのコンサバティブな組み合わせは、どこに着て行っても後ろ指をさされることのない、社会人としてきちんとした印象を与える装いです。

 一方で、髪の毛は後ろで一つにまとめ、メイクも薄め。“無難な自分でいたい”という典型的なチョイスだと感じました。由希子さんと話をはじめてみました。

■「身体のラインを見せるような服はムリ」

しぎはら:結婚したい、と本当に切望しているのね。

由希子さん:婚活も3年目で、今年35歳になるんですよ。今の職場はほぼ女性なんです。男性と知り合うきっかけはないですね。学校も女子高、女子大と女だらけでした。本当に縁がなかったんです。どう男性と接していいかわからないし。

しぎはら:結婚相談所にも登録しているのよね。積極的な活動が成就への近道で、素晴らしい行動力だと思う。今まで何人くらいとお見合いしたの?

由希子さん:たぶん20人以上と会っていると思います。相談所に入会してもう3年目ですけど、今までいいと思った人にも出会えない。

しぎはら:20人以上に会って、どうしてみんなダメだと思うの?

由希子さん:写真とイメージが違うんですよ。実際会ってみて、やっぱりムリ、みたいな。

しぎはら:ところでお見合いや合コンには今日みたいな格好で行っているの? あえて聞いちゃうけど、普段、身体のラインに沿うような服って着る?

由希子さん:全然着ないですね。ムリです。そういう服って相手から引かれちゃうんじゃないですかね。ぴたーっと身体のラインを見せるような服って素敵とは思わないし。

しぎはら:自分が着ると引かれちゃうと思うのね。どうして?

由希子さん:どうしてって、そんなのムリだからに決まってるじゃないですか。そういう服は似合うと思わないし、そんな格好に惹かれる男性って、信用できない気もします。それにもう30代半ばだし、お腹まわりとかやっぱり気になって……。

しぎはら:男の人ってお腹が出てる、出ていないなんて、実は女が気にするほど見ていないのよ。重要なのは細部よりも全体のイメージ。やっぱり男性が惹かれる女性のイメージというのがあるものなの。

 今まで誰にも惹かれないって言っていたけど、由希子さんが人生で本気で好きになった人はいるの?

由希子さん:過去に結婚したいと思っていた、本当に好きだった人がいたんですが、振られたんです。30の時だったんですけど……。

しぎはら:失恋は本当に苦しいよね。それでも頑張って偉いわ。

由希子さん:偉くないですよ。だって、まだ平静になれないんだから。別れた後、彼のフェイスブックに女性と楽しそうに写っている写真も見つけたんです。友達って書いてあったけど、私とは全く違う、派手な雰囲気の女性でした。男の人は結局、そういう女性がいいんですね。

しぎはら:そうか、由希子さんが敬遠する「派手な女性」に男性たちが惹かれる。それは複雑な気持ちになるよね。でも女性だもの。嫉妬は当たり前の感情。嫉妬という感情をいかに自分の糧に変えるかが大切なのよ。

■男性が着られない服「ワンピース」の効果

 由希子さんも懐疑的ですが、男性の目を引き寄せる女性は、ほとんどの場合、絶世の美女というわけではありません。実は「雰囲気」がモテの秘訣で、モテ雰囲気をつくる賢い戦略が、装いなのです。

 例えば男の人が惹かれるナンバーワンはやはりワンピースです。形は身体のラインにつかず離れずのソフトタイトシルエット。特にドレープが利いているものは、裸でいるよりもむしろ身体のラインを色っぽくきれいに見せてくれるくらいです。

 まず1着目は、無難に浸りきっていた彼女の中の殻を破るような強烈な一枚をご用意しました。上質なレースの白いワンピースです。ノースリーブでゆるやかなタイトフィットが女性らしい「ANAYI」のワンピースは、身体のラインを美しく見せるカッティングが特徴。緻密に計算された完璧な一着で、人を虜にさせるようなオーラがあります。

 この服を由希子さんに渡した時、「え〜、これ着るんですか?」と予想通り不安げな顔。けれども、試着室に押し込みました。

 そして3分後――。まるで別人の由希子さんが現れました。

 私は白いレースのワンピースを着ただけの少し手持ちぶさたな由希子さんに、小ぶりのバッグを持たせ、店内を一周するよう促しました。さらにレモン色のカーディガンをコーディネートし、いくつかポーズを決めてもらって写真に収め、彼女に見せました。

 さまざまな方向から写された自分の姿に驚きながら、ちょっぴり瞳が潤んで輝き、頬にぽーっと赤みがさしていくのを私は見逃してはいませんでした。

「衝撃的です。自分では白なんて恐れ多くて絶対に選ばないし、総レースの洋服なんて恥ずかしくて着られないと思っていましたし。スコールが降って、パーッと晴れたような、そんな感じがしました」
 
 2着目はデートの場面を想定して、「COUP DE CHANCE」の淡いピンクのワンピースを選びました。柔らかく、胸元からウエストまわりにかけてきれいなドレープがデザインされているのが特徴です。

 そして2着目を着た由希子さんは鏡の前で自然にポーズを決め、かすかに色っぽい表情が浮かび始めていました。

「私、着こなせてますか? こんな服、選んだことないけど、コレ、本当に素敵です」

 否定の言葉しかなかった由希子さんの口から、「コレ、本当に素敵です」の一言。これこそが運命の洋服に出会うことの喜びなのです。

 3着目は、写真写り、顔映りともに良いものを意識しました。そこで、着ただけでパッと華やぐような、「LIMITED EDITION VIVAYOU」のピンクオレンジのワンピースを選びました。少し高めのウエスト位置にパイピングが施してあり、光沢のある織りが顔を艶やかに見せてくれます。婚活写真といえば、紺や白のブラウスを着る人が多いもの。ですが、特に婚活サイトのプロフィール写真においては、その他大勢が着ているような服を選んではいけません。なぜなら、たくさんの写真が並ぶなか、自分も「その他大勢」となってしまい、誰の目にも留まらない人になってしまうからです。

 3着の試着を終えた由希子さんの笑顔は、輝きで満ちあふれ、優しさの中に強い意思を秘めたオーラが漂い始めていました。試着後は毎回お茶をしながら、それぞれの服をどんな気持ちで着ていくべきかをレクチャーします。この時すべての女性にお願いするのが、

「その服を着た瞬間“女優スイッチ”も一緒に入れてください」

 ということ。つまり今回なら、好きな男性の前に立つ、愛される素敵な女性のイメージ。自分に“なりきり力”がなければ、どんな服も素敵になりません。

■男の人は相手の服装によって見方と態度が変わる

しぎはら:3パターンを選んだけど、実際に着てみてどうだった?

由希子さん:驚きの連続でした。鏡の中に見たことがない自分がいて、服を着てこんなに幸せな気分になるなんて。

しぎはら:最初に着た白いレースのワンピースを着ている人はどんな性格の人に見える? ドラマの中にこういう人が出てきたら、どんな役だと思う?

由希子さん:きっと明るくて清楚な女性、ですよね。

しぎはら:明るくて聡明で清楚な女性ね。女性がこういう格好しているのにB級グルメに連れて行く男性は、ちょっとセンスがない。男性向けの服装戦略の講義のときによく聞いていて実感するのですが、デートで女性が白のワンピースを着てきたら気分があがってエスコートしたくなるのが男性なの。服って上手に使うと相手をコントロールできるものなのよ。それだけ、白には強い力があるのよ。

 次に、2着目の淡いピンクのドレープワンピを着た由希子さんはどんな感じの人だと思う?

由希子さん:この人はなんか、元気で親しみやすそうな感じですよね。2軒目も付き合ってくれそう。

しぎはら:これをライバルだと思った子が合コンに着てきたらどう?

由希子さん:絶対嫌ですね。なんか負け感を覚えちゃう。

しぎはら:いい? これだけは覚えておいてね。どんなときも「この女の子には負けちゃう」って思われるようなものを選ぶのよ。それは、とても嫌な女に思えるかもしれないけど、自分が「負けた!」と思うものを持つというのは、逆に「これがあれば自信が持てる」ということの裏返しなのよ。

由希子さん:はい。今まで考えもしませんでした。それにあの淡いピンクのワンピースは上品なのに、変な危機感を覚えるんですよ……。

しぎはら:なぜなら、あのワンピースは身体につかず離れずで、女性ならではのボディーラインを引き立たせているから。こういうワンピースは、男の人も「帰したくない」って思うわよ。他の人に取られてしまうんじゃないかって相手も危機感を抱くかも。

由希子さん:普段黒とかネイビーばかりを着ていて、こういう色を選ぼうと思ったこともなかったので、すごく新鮮です。

しぎはら:今回選んだ色は、由希子さんが自分ではムリと思っていた色ばかりだったでしょ? 実は普段手に取らない色だからこそ、由希子さん自身が気づかなかった自分に出会えたの。服は本当に大きな力を持っている。

由希子さん:そういうことなんですね。今日しぎはらさんに薦められたワンピースを着て、知らなかった自分と出会えた感じがします。自分のなかにたくさんの発見があって、勇気が湧いてきました。

■1年後、由希子さんのモノローグ

 あの後、早速お見合い写真をオレンジピンクのワンピースのものに替えたら、デートの申し込み件数がウソみたいに増えました。確かにインターネットにあがっている私の写真、オレンジピンクが目立っているんです。

 コーディネートを変えたら、余裕をもって男性と話せるようになりました。なぜか、この人いいかも、と思える男性も増えました。一番びっくりしたのが、同僚から合コンやいろんなパーティーに誘われるようになったことです。やっぱり同性でも、地味な人より華やかな人を連れていきたいって思うものなんですね。それからは出会いの機会がすごく増えて。

 その合コンで紹介された男性と何回かデートしました。素敵なバーにも連れていってくれるような人で、私の人生にこんなことがあるのかと、その時はちょっと浮かれました。その男性とは結局続かなかったんですけど、今はお見合いで出会った四つ上の男性とお付き合いしています。あんまりカッコいいタイプではなく、むしろちょっと太っているくらい。お腹も出てるし(笑)。以前なら写真の段階で断っていたかも。でも会ったらすごく真面目に話を聞いてくれる人だったので、安心感があって、私からまた会いたいと伝えました。

 お付き合いして半年くらいかな。私をすごく大切にしてくれることがわかる、優しい男性です。お互いのことがわかり合えるようもう少し時間を重ねて、結婚につながったらいいな、と思い始めています……。

(編集/内山美加子 編集協力/河辺さや香)