全国には「サザエさん通り」が三つある。ファンならばそれぞれどこにあるか知っているだろうか。

「サザエさんの町」と言えば、多くの人が思い浮かべるのが、東京都世田谷区の桜新町。作者の長谷川町子が長年にわたって住み続けた町で、町子が姉妹で収集した美術作品を常設展示する長谷川町子美術館も、この地にある。1987年には、東急田園都市線桜新町駅から美術館を結ぶ商店街通りが「サザエさん通り」と命名された。今年はこの通りができてからちょうど30年だ。

 桜新町以外のサザエさん通りは、二つとも福岡市内に存在する。福岡は町子ゆかりの地でもあるのだ。

 町子は幼少期と戦中、戦後を福岡で過ごした。終戦の翌年に当たる46年、「サザエさん」が初めて発表されたのも、福岡の地方紙「夕刊フクニチ」の紙面だった。当時、西南学院大学(福岡市早良[さわら]区)の近くに疎開していた町子は、自宅からほど近い百道(ももち)海岸を散歩。そこでカツオやワカメ、磯野波平やフネなど、登場人物みんなを“海のものにしよう”と思いついた。町子の自叙伝風漫画『サザエさんうちあけ話・似たもの一家』では、サザエさんの着想を得たエピソードとともに、漫画の一コマに西南学院の塀なども登場している。

「つまり、サザエさん誕生の地は、福岡にあるというわけです」

 早良区役所で企画を担当する山喜多洋一さんは言う。同区では、“サザエさん誕生の町”を積極的に発信しようと、西南学院大学や福岡市博物館、福岡タワーなどを含む、全長約1.6キロの通りを2012年、「サザエさん通り」と命名した。見どころの一つは、通りの真ん中に位置する「磯野広場」の“サザエさん発案の地 記念碑”。広場は町子が歩いたとされる百道海岸の跡地で、「まさにサザエさん発案の原点とも言える場所」(山喜多さん)だと言う。

 さらに今年1月、サザエさん通りに面した西南学院大学の新図書館前広場に、町子とサザエさんの銅像が建てられた。西南学院が学院創立100周年とサザエさん生誕70周年を記念して制作し、市に寄贈。町子をモチーフにした銅像は全国初で、サザエさんスポットとして注目を集めている。

 同じく今年1月には、サザエさん通りにほど近い、同区の西新(にしじん)地区の五つの商店街が連なる約1.5キロの通りを、通称「サザエさん商店街通り」と命名、これで三つめのサザエさん通りができた。商店街は、町をあげてサザエさんを生かした地域づくりに取り組む。

 今秋には、同区と西南学院、商店街、長谷川町子美術館とが連携して、福岡でサザエさんをテーマとしたイベントを開催予定。西南学院と同美術館は福岡時代の町子の足跡を調査する共同プロジェクトもスタートさせるという。

 桜新町が「サザエさんが育った町」だとすれば、福岡は「サザエさんが生まれた町」。新たな取り組みが広がる今年、サザエさん通りからますます目が離せない。

昨年70周年を迎えた「サザエさん」。今でも4コマ漫画の傑作に加え、四つの短編を収載した週刊朝日臨時増刊号「サザエさん 2017夏」が発売される。

※週刊朝日  2017年8月4日号