「機動戦士ガンダム」安彦良和、「キャンディ・キャンディ」いがらしゆみこから、相原コージ、山本直樹まで。なぜ多い?

 北海道出身のマンガ家は実に250人以上もいると言われている。その理由について美術家の伊藤隆介は、2013年に行われた「ほっかいどう大マンガ展」(札幌芸術の森美術館)の図録の中で解説している。簡単に言うと彼は、北海道が「貧しい土地」であったため、そしてマンガ自体が「貧しい文化」であったためなのだ、という。

 この説にはうなずけるものがある。本州から断絶され、芸術の「原典」に触れる機会の少ない道民は、テレビ・雑誌などからの情報をひときわ熱心に求めて、自分たちでも同様の創作を行おうとする。

 実はこれはマンガに限らず、音楽など他のポップカルチャーでも見られる傾向だ。中央に追いつきたい一心で創作に励んでいる北海道のクリエイターは、いつしか先進的な表現を追い求めるようになり、中央を追い越したり、全く異なるものを生み出したりしてしまうのだ。「ほっかいどう大マンガ展」を企画した一般財団法人地域創造の佐藤康平は、「これだけマンガ家さんがいるのに『少年ジャンプ』で現在活躍する作家は空知英秋先生くらい。マニアックな作家が多いです」と言う。

●オタク先進地・北海道

 だから北海道発のマンガは、半ば必然的に従来の日本土着のマンガから少し距離をおいたようなもの、ハイセンスだったり、批評的だったりする作品が多くなる。筆者(札幌市出身)は本州出身のマンガ家から「北海道出身のマンガ家は雪や反射光の表現がうまい」と言われたことがあるが、他の地域の作家が思いもよらないような、繊細で斬新な筆づかいを生み出しているという意味なら理解できそうだ。

 マンガは、ペンと紙さえあれば作品を生み出すことができ、それをそのまま印刷して全国の人に届けることのできるジャンルだ。この手軽さが、文化資源に乏しい北海道での創作と発表には向いていたと言える。

 マンガというジャンルの盛況が、北海道にいわゆる「オタク」文化と呼ばれるポップカルチャーの土壌を築いたことは間違いない。古くはハドソンなど個性的なゲーム会社の誕生、近年ではクリプトン・フューチャー・メディア社による初音ミク、さらには現代美術家の村上隆が参画したアニメスタジオ「ポンコタン」の設立などまで、数々のクリエイターによるトライ&エラーが繰り返されている。

 行政もこうしたジャンルの支援には前向きなようだが、長年の取り組みにもかかわらず、北海道のポップカルチャー全体が個性を主張し、発展するところまでは至っていない。元々がマンガという、クリエイターの独立性が強いジャンルに端を発しているせいかもしれない。

 しかし豊かな自然や食品のように、道民がその価値に気づかなくとも人々が驚くような作品はたくさんある。それを北海道ならではの魅力としてどうブランディングし、コミュニティーとしてカルチャーシーンを盛り上げていけるかが今後の課題になるだろう。(ライター・さやわか)

※AERA 2017年7月31日号