人口が減少し、経済が停滞するときに起きるのが「社会の分断」だ。

 今年1月、神奈川県小田原市の生活保護担当職員が「保護なめんな(HOGO NAMENNA)」と書かれたジャンパーを着て世帯訪問していたことが問題となった。ジャンパー着用が10年間引き継がれていたことも、世間を驚かせた。

 着用のきっかけは、07年に生活保護を打ち切られた男性が、市役所窓口で市職員をカッターナイフで切りつけた事件だった。市職員の結束力を高めるため、着用が始まった。

 市が問題を受けて今年設置した有識者による検討会では、財政社会学が専門の井手英策慶応大教授が座長を務めた。会議を重ねるなかで、社会の分断を身近に感じたという。

「生活保護の担当は、市職員にとって『外れくじ』のようなものと認識されていて、誰もやりたがらない仕事でした。つまり、ジャンパーを着用していた職員は組織内で弱者になっていました。その弱者が、生活保護受給者という弱者を差別する。問題は、構造的なものでした」

 井手教授を驚かせたのは、市に届いた意見だ。約2千件のうち46%が「不正受給と闘う姿勢を示してくれた」と、職員を擁護するものだった。

 井手教授は、分断社会を終わらせるために「増税でくらしが楽になるしくみ」が必要だと主張する。

「日本の社会保障は『収入が○○万円以下の人に○○万円給付』といった制度が多い。これが『私の税金があの人に使われている』と不公平感を生み、社会を分断させている。発想を転換して、中高所得者も等しく税金の受益者にするべきです」

 井手教授は「増税=悪」と思いがちな日本人の発想を改めるべきだという。

「例えば、消費税を1%上げると税収は約2.8兆円増えます。3.5%上げると約10兆円で、幼稚園、保育園、大学授業料、医療、介護、障害者の自己負担費用などを驚くほど軽くできます。増税で各家庭の貯金がゼロになっても、将来不安はゼロ。そういう社会をめざすべきです」

 消費増税は低所得者層の負担が重い逆進性が指摘されるが、将来不安が減れば、負担の受け止め方も変わる可能性がある。

 現在の経済規模を維持するために、人口減対策にも手を打たなければならない。日本国際交流センター執行理事の毛受(めんじゅ)敏浩氏は言う。

「日本は移民を受け入れるしかありません。すでに一部の地域では、外国人住民をテコに町おこしなどをする動きも始まっています。もちろん、無制限の受け入れは社会の不安定を招くので反対です。職歴などを勘案した上で、日本語が一定程度話せる人材を、親日的な国から段階的に受け入れることが現実的です」

 日本で暮らす外国人はすでに約238万人。昨年から約15万人増え、在留資格別でみると「永住者」も約73万人になった。いずれも過去最高の人数だ。

「総人口に占める外国人は現在1.9%。私は35年までに約2倍の4%をめざすべきだと考えます。東京23区の外国人は現在4.4%ですが、住民同士で解決不可能なほど大きな問題は起きていません。全国が今の東京23区と同じ受け入れ割合になれば、人口減少は緩やかになる」(毛受氏)

※週刊朝日  2017年8月4日号