「趣味は何ですか?」。会話の糸口に聞かれることは多いもの。だが、これといって趣味がないと、この質問はプレッシャーだ。SNSにはリア充趣味に興じる様子がてんこ盛り。趣味界は、なんだかんだと悩ましい。インスタ映えを重視して「趣味偽装」する人、趣味仲間から抜けられずに苦しむ人もいるらしい。AERA 7月31日号ではそんな「趣味圧」の正体を探る。

 趣味は苦痛でも義務でも、自分を盛るアクセサリーでもない。己から湧きいでる「癖」、究極の「こだわり」だ。誰に理解されなくても幸せ。趣味とはきっと、そういうことだ。漫画家の清野とおるさんに、「こだわり」について話を伺った。

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「さけるチーズ」を細かくさき続ける、喫茶店では必ずアイスミルクを頼む、自宅のベランダで寝る、土日はいっさい人に会わないよう金曜に臭いとんこつラーメンを食べて準備する──。

 漫画家の清野とおるさんは2014年にスタートした『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』という漫画で、ふつうの人がもつ食べ方や日頃の生活でのくせや好みを「おこだわり」と名付けて紹介し続けている。もともと人のくせを観察するのが好きで、飲み屋や喫茶店でストローの空き袋を無意識に折りたたみ形を作る人に注目し、「無意識の創作物」と名付けてひそかに収集したりしていた。

 おこだわりも趣味も、それをしていたら時間を忘れられる行動。だが、両者には明確な違いがある、と清野さんは言う。
「アピールするようなものは『趣味』です。人から指摘され、引き出されるのが『おこだわり』。漫画のネタにしてくださいという売り込みもたまにありますが、それはおこだわりではありません」(清野さん)

「おこだわり」は、連帯や拡散を求めない。清野さんも、勧められたことはほとんどない。

「共通しているのは、みんな本当に楽しそうだということ。誰にも決められない、自分なりの正解があってそれに自信を持っている。僕は結構優柔不断なので、うらやましいです」

 そう、清野さんは語る。

「SNSが発達し、関係性の中で自分の立ち位置を見失いがちないま、自分の足で立つために必要なのが『おこだわり』かもしれませんね。どんなものでも自分なりのやり方というのは必ずあるわけで、それが『おこだわりの種』。それを咲かせていけばいいんじゃないでしょうか」

(構成/編集部・福井洋平)

※AERA 2017年7月31日号