日本人がなじんできた「お葬式のかたち」がいま激変している。従来型のお葬式ではなく、「家族葬」が広く受け入れられ、弔いの形は家から個へ――。葬儀費用の「見える化」と価格破壊は何を生むのか。AERA 8月7日号で、新しい葬式の姿と、大きく影響を受ける仏教寺院のいまを追った。

 日本人がなじんできた「葬式のかたち」がいま激変している。従来型のお葬式でなく、「家族葬」が広く受け入れられ、弔いの形は家から個へ──。新しい葬式の姿を追った。

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「スター・トレック」などのSF映画や、有人月面着陸のアポロ計画を見て育った世代には、宇宙への憧れを抱く人も少なくないだろう。そんな夢を死後にかなえられるのが「宇宙葬」だ。

 故人の遺灰1〜7グラムをカプセルに入れ、小型ロケットで宇宙空間に打ち上げたり、地球を周回する人工衛星に載せたりする。民間のロケット打ち上げが活発な米国で始まったが、米企業と提携して日本でも宇宙葬が始まっている。

 葬祭会社「銀河ステージ」(東京都港区、大阪市)は2014年に日本人2人、15年に3人の宇宙葬を手がけた。遺灰が入ったカプセルを、全長3〜4メートルほどの宇宙葬専用ロケットで米ニューメキシコ州から打ち上げる。宇宙空間に数分間とどまり、その後ロケットは大気圏に落下して遺灰は燃え尽きる。価格は45万円(税抜き)から。

 次回打ち上げは9月中旬を予定しており、すでに国内で11人が申し込んだ。

「宇宙への憧れのある60〜70代の男性やその家族が希望することが多い」

 と同社メモリアルプランナーの佐野高志さんは話す。

 西山浄土宗泰聖寺(大阪市)副住職の純空壮宏(じゅんくうそうこう)さん(40)は昨年、宇宙葬の生前予約をした。海洋散骨など分骨の相談が増えたことをきっかけに調べ始め、宇宙葬を知った。

「お釈迦様の骨は世界中に分骨されています。宇宙葬も現代社会での供養のひとつです」

 と話す。墓に納骨したうえで故人の遺言に合わせて分骨するのはよいのではと考えている。自身は子どもの頃から宇宙飛行士に憧れていたこともあり、宇宙葬の予約をした。

 さらに、今後は米航空宇宙局(NASA)の調査と連携して、月面に遺灰を持っていく宇宙葬の計画もある。まだ打ち上げ日程は未定だが、生前予約をしている会社役員の男性は言う。

「家族や会社を、月から見守っていたい」

●価格破壊のお葬式

 ここ数年、日本人のライフスタイルで変わったもののひとつに、「葬式」がある。日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」によると、葬儀費用の平均は195万7千円(16年)。ピーク時の03年から2割近く減ったというが、いま葬儀費用の「見える化」と価格破壊が進む。

 葬儀業界では、バブル期の大きな祭壇を構えたホール形式から、数十人単位のいわゆる「家族葬」が主流になりつつある。大手スーパー・イオンが手がけるお葬式は、火葬だけをする「火葬式」が19万8千円(税込み)、告別式・火葬を1日で終えてしまう「1日葬」は34万8千円(同)、「家族葬」は49万8千円(同)で、分割払いも可能だ。それとは別に僧侶に払うお布施の目安(4万5千〜15万円)も示す。

●お坊さん便も定着

 仏教界に大きな波紋を広げたのが、法事に僧侶を手配するサービス「お坊さん便」だ。15年12月のアマゾンでのサービス開始当初は新聞やテレビで大きく報道され、全日本仏教会がアマゾンに販売中止を申し入れた。

 しかし、運営する葬儀関連会社の「みんれび」(東京都品川区)によると、利用数は右肩上がりを続け、サービスとして定着しつつあるという。お坊さん便は、法事などの仏事の価格を「見える化」した。基本価格は3万5千円で、日時と宗派を選んで注文。離島と山間部を除く全国が対象で、菩提(ぼだい)寺とつながりのない人が対象だ。

 繁忙期に当たる16年の7、8月の問い合わせ件数は、前年同期比で95%増。アマゾンに出品する直前の15年11月末時点で、提携していた僧侶は300人だったが、今では1千人を超えた。

 利用者は、一般の葬儀の喪主の世代と同じで50代、60代が多い。都市部に住む地方出身者の利用が多い。提携する僧侶は30代の若手から70代のベテランまでと幅広い。檀家(だんか)が少なく、あるいは檀家が多くても、将来的に寺院経営が成り立たないと考えている僧侶が多い。

 13年から提携している日蓮宗経王院(東京都足立区)の仲田恵慶住職(38)は、自ら布教して信徒を増やし、新たに寺院を設けて活動をしている。檀家制度を取らず、信徒は300軒弱。信徒を増やすことを目的に、年会費や寄付を募っていない。そのため寺院経営上、お坊さん便はなくてはならない存在だ。

 仲田住職は、お坊さん便に対する風当たりの変化も感じるという。

「もともと『金もうけだ』と先輩方からお叱りを受けることが多かったのですが、今ではどういう気持ちで派遣を受けるのか、どういった式を行って、どういうことを話すのかと質問を多く受けるようになりました。だんだん意識が変わってきていると感じます」

 矢野経済研究所(東京都中野区)によれば、葬祭ビジネス市場は近年1.7兆円台で推移。市場の伸びは鈍いが、多死社会を迎え死者は確実に増えていく。新たなビジネスチャンスを狙い、異業種からの参入や奇抜な演出を売りにする葬儀も相次ぐ。

●葬儀も明るく個性的に

 色とりどりの花々、友人からのメッセージ、入り口にはウェルカムボードと、その横に添えられた笑顔の写真。結婚式のようだが、葬式なのだ。02年に設立した葬儀社「アーバンフューネス」(東京都江東区)が始めたサービス。創業者は結婚式業界にいた。

 同社は結婚式のように、お金をかける、かけないを選べるビジネスモデルを構築した。

 家族以外も参列する「一般葬」の場合、一番安い価格は60万円から。今では月に約200件の葬式をプロデュースし、17年9月期決算の年間葬式件数は2500件、売り上げは28億円の見込みだ。同社葬祭営業部長の本多亮之(あきゆき)さん(40)は言う。

「葬式をどのような場にするかをお客様と決めることが大前提です。その上で、単なる儀式ではなく、故人がどう生きたかを振り返る。そこに意味を持たせたいと思っています」

●色鮮やかなLED仏

 愛知県豊田市の葬儀会社「FUNE」。これまで「感動葬儀」として音楽の生演奏を取り入れた葬儀を演出してきたが、6年前に「故人をしのぶ時間を、より感動的にしたい」と、同社の三浦直樹社長が映像システムの導入を決めた。

 祭壇裏の巨大スクリーンに、故人が好きだった風景や思い出の写真が映し出されそこにバイオリンやピアノの生演奏が流れる──。システムを開発した「ファンテックス」(愛知県豊橋市)では、生花祭壇に蝶やホタルの映像が舞うといったプロジェクションマッピングを活用した「祭壇マッピング」も展開する。

 葬儀の明るいショー化に抵抗する仏教者もいるが、寺院側にも変革は起きている。東京都新宿区の大江戸線牛込柳町駅から徒歩2分。閑静な住宅街にある日蓮宗の幸國(こうこく)寺。その緑豊かな敷地内に、06年にできた永代供養納骨堂の琉璃(るり)殿がある。お参りすると、故人などを表すガラス製の仏像(一体20センチ弱)が白く光る。LEDで色は黄や青へと鮮やかに変わる。

「現在、琉璃殿には2046体のうち、600弱の方が入っていて、生前予約は200件です」

 そう話すのは幸國寺28世住職の矢嶋泰淳(たいじゅん)さん(65)。きっかけは、檀家の40代独身男性の一言。

「(墓を)つくってもしょうがない。ひとりなもんで……」

“みんなのお墓”的なものがあってもいいのでは、という考えの下、91年に屋外に永代供養墓を設けた。その後、屋内型の琉璃殿を建てた。宗派は基本的に問わない。同寺では、普通の墓(永代使用料)は1平方メートルあたり180万円が目安。対する琉璃殿は遺骨の合祀(ごうし)、個別に納骨などが選択でき、個人の場合は金額が9万円から75万円。現在は月に10人ほどが永代供養の相談に来る。

「永代供養墓を積極的に勧めているわけではありません。お身内がおらず、将来が不安という方の最後の手段。同じ志を持った方に来てほしい」(矢嶋住職)

(編集部・野村昌二、小野ヒデコ、長倉克枝、山口亮子)

※AERA 2017年8月7日