今年の秋冬ファッションは「赤」が流行しそうだ。赤といえば“可愛いらしい女性”のイメージがあるが、今シーズンは知的で大人っぽいものが多い。その理由として、テロ、排外主義などの社会不安をはねのけるような“力強さ”が求められているからだと分析されている。女性向け健康・ライフスタイル誌『ゆとりら 夏号』からお届けする。

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 今年の秋冬に流行しそうなファッショントレンドは、ひと言でいえば「赤」。ライフスタイルや価値観の多様化を反映してか、以前よりもトレンドが細分化されているなかで、多くのブランドがメインカラーとして提案している。

 赤といっても、今年は濁りの少ない鮮やかな色みが多い。前シーズンの甘くて可愛らしい雰囲気の女性像から一転して、知的で大人っぽい女性へと変わっている。世界各地で急
増しているテロや地球の温暖化、難民などの問題による社会的な不安をはねのけるような、強さや緊張感も感じさせる。強烈な赤はそういうイメージの象徴といえよう。

 なかでも赤を多用したのは、82歳のいまも「モードの帝王」としての威光を放つジョルジオ・アルマーニ。丈の長い優雅なモヘアのコートからスポーティーなブルゾン、毛皮のコートに合わせたマスキュリンなつなぎも、りりしく冴えたルビーレッドに染めあげた。

 毛皮のポンポンや新型バッグで人気復活中のフェンディは、輝く発色の革製スカートや極薄シフォンのブラウスが真っ赤。ロングブーツやバッグ、耳飾りまで全身を赤で統一しながら、きりっとした装いをみせた。一昨年から30代の女性デザイナーが手掛けるエルメスも、若々しさが漂う澄んだ赤がいっぱい。日本発のミナペルホネンの新作は、すべて「火と花の赤」からの発想。デザイナーの皆川明は「世界情勢を考えると今、暖かく、かつ情熱的なものが必要ではないかと思って」と説明した。「英国調」もトレンドの一つ。マルタン・マルジェラのように、タータンチェックやツイードに赤をより強調して採り入れるブランドも多い。

 赤がこれほど注目されるのは、1980年代のバブル期以来だろう。ただ、当時の赤は空前の経済成長を背景にした、華やかで目立つ、異性の目を意識した色だった。今回の場合はジェンダーの意識を超えた、もっとしなやかで意志的な香りがする。

 この春に開かれた各都市のコレクションでは、世界に広がる排外主義に反発するような表現が目立った。ヴェルサーチではデザイナー自身が「平等」との文字入りの服を着て現れ、ミッソーニは女性の権利を唱えるデモ「ウィメンズマーチ」のように、モデル全員にピンクの猫耳ニット帽をかぶらせた。あらゆる地域から年配のモデルも多数登場させたドリス・ヴァン・ノッテンの「女性は今こそ服で意志を表すべきだ。その表現は、若い子よりも人生経験を積んだ人の方がちゃんと服に息を吹き込める」という言葉が心に残った。

 赤い色で自らの意志をまとう。年を重ねるのも悪くないのかもしれない。(文/朝日新聞編集委員・高橋牧子)