美の達人たちが最終的にたどり着くのが、オイル美容という。肌が酸化すればシミやしわの原因となり、体が“サビれば”万病を引き起こす。美しく健康でいるために、今日からでも遅くない。オイル美容を始めてみませんか。



 20代のころからヨーロッパと日本を行き来していた美容家の日下部知世子さん(59)は、今から35年前、乾燥した気候なのに、フランスのマダムたちの肌が、オイル美容だけで輝いているのを見て驚いた。シャワー後に、顔から全身にオイルをパシャパシャ。たったそれだけしかしていないのに、美しかった。

「そこで私も30歳を機に、美容法を『オイル一本』に変えました」

 マカデミアナッツオイル、アプリコットオイル、ホホバオイル、ローズヒップオイルなどあらゆるオイルを試した。シャンプー後、生乾きの状態で一滴毛先につけてからドライヤーをかける。すると、

「髪がつるんとします」

 リンスなど必要ないという。

 入浴後にはひじなど乾燥が気になる部位を中心に、全身に椿オイルなどを塗る。オイルに、レモンやマンダリンのアロマオイル(精油)を混ぜることもある。これらの精油には、肌を柔軟にする力があるので、オイルと精油に含まれる成分が浸透し肌がしっとり滑らかになるという。

 首を見て驚いた。年齢が顕著に表れる「首」に縦じわが全然ないのだ。

 紫外線ケアでも、オイルを愛用する。アプリコットオイルとプルーンオイルを塗って、その上に薄くパウダーを当てるだけという。「日焼け止めなんて、使ったことないわ」
 もうすぐ還暦なのに、肌はもちもちとシミ一つない。

 日本ではこれまで、オイルが肌に良いことがあまり知られてこなかった。日本でオイルといえば、「サンタンオイル」(日焼け用オイル)のイメージが強く、「オイル=日焼け」との固定観念から、「肌に悪い」と敬遠してきた。

 日下部さんによると、ラズベリーは日焼け止め成分として知られる二酸化チタンと同等の保護作用があるため、ラズベリーのオイルを塗っての日焼け対策も有効だという。さらにラズベリーオイルには肌の修復に良い必須脂肪酸と抗酸化成分も含まれている。

 とはいえ、肌に塗るのに向かないオイルもあるという。たとえば、鉱物油。浸透性がなく、油分が植物油より強く、肌に残る。2〜3回洗い流さないと、しっかりと落とせないようだ。

 日下部さんは「鉱物油入りの化粧品は、美容効果を期待できません。乾燥肌の人が使い続ければ、肌が本来持つ、皮脂を出す力が弱まり、乾燥しやすくなることもあります」と話す。

 マカデミアナッツオイルを肌に塗ると、美肌効果だけでなく、血糖値上昇を抑える作用があることもわかってきた。メタボリックシンドロームや糖尿病予備軍の人に適しているとされる。

 日下部さんはよく飛行機に乗り、移動中の乾燥防止に余念がない。あるとき、機内で気づいたことがある。

「乾燥防止にシュシュって化粧水をスプレーするほど、肌が乾燥していったのです。不思議だなぁ、と。ぬれてゴワゴワになった革靴にいくら水をかけても、かたいままですよね。乾燥した革靴とドライ肌は一緒。水分が足りないときに与えるべきは油分だったのです」

「オイル美容の母」と呼ばれる人がいる。オイル美容歴21年の小林ひろ美さん(53)。若いころはずいぶんと日焼けしたというが、シミ肌でない。長年のオイル美容の効果のようだ。

「肌の角層を構成する角質細胞は、一個一個の細胞が碁盤の目のように並んでいます。細胞と細胞をつなぐセメントのようなものが細胞間脂質。紫外線や大気汚染等の外的刺激から肌を守り、体内の水分のコントロールに関係します。この脂質が何らかの形で薄くなると、保湿をしても水分がすぐに飛ぶ」

 女性が陥りたくない肌の五つの悩みは、シミ・しわ・くすみ・たるみ・毛穴の開き。これらを呼び起こすのが、乾燥だ。

 肌にオイルを塗って経皮吸収させると、細胞間脂質をつたって細胞の隅々まで水分を浸透できる。35歳を過ぎると、女性は皮脂量が一気に減る。小林さんは「オイル美容で肌の表面を柔らかくさせ、水分が入りやすい状態をつくることが大事です」という。

 化粧品会社「ハーバー研究所」美容部ビューティプロデューサーの廣森知恵子さん(63)も、35歳は肌の節目として注意を呼びかける。

「オイルをつけるだけで、素肌は変わる。男性もキレイになりますよ」

 男性は頭皮やひげそり後に口まわりに塗ったり、リップクリームの代わりに使うのもよいそうだ。

 同社が扱う天然由来のスクワラン100%のオイルは、酸化や油やけの心配がなく、夏でも安心して使えるという。廣森さんはオイルを常に持ち歩き、洗面所で手を洗った後にも使う。ハンドドライヤーで乾かすことは、手荒れのもとになるのですすめない。ぬれた手にオイルを一滴。タオルを使わなくても、自然乾燥でハンドクリームをつけた後のようにしっとりと仕上がる。

「ぬれた手にオイルを一滴つけると、シルクの手袋になるんです」

 前出の小林さんは「美の目利きたちが最終的にたどり着くのが、オイルです。だから美容誌は夏でも『オイル祭り』状態」と話す。オイル美容以上によい美容法を知らないから、「ここ(オイル美容)で止まる、もう浮気しない」。そんな現象が起きているという。

 美容業界紙「WWD BEAUTY」編集長の大出剛士さんも「オイル美容は今、確実に(ブームが)来ています。最近は技術や商品も進化し、べたつかずサラッとして、あっという間に肌に吸収されるものが多くて、非常に使いやすい」。

 2002年にニュージーランドで誕生した「トリロジー」は、現在、世界20カ国以上で40を超えるアイテムを販売する人気ブランドだ。日本にも08年に上陸し、日本でのオイルブームに火をつけた商品のひとつ。輸入代理店の「ピー・エス・インターナショナル」社によれば、「ローズヒップオイル」が人気で、生産が追いつかないほどという。

「オイルブームは、オーガニック好きな人から火がつきましたが、今は大手の外資系や国産化粧品ブランドからも続々とオイル製品が登場しています」(大出さん)

 最後に、食用オイルにも触れよう。

 美容の最前線の品がそろう伊勢丹新宿本店本館地下2階の「ビューティアポセカリー」。ココナツオイルブームのころは毎朝客が駆け込み、品ぞろえが追いつかなかったそうだ。バイヤーの岡部麻衣さんは「ココナツオイルは、汎用性が高いオイル。ブームが落ち着いた今も続ける人は、昔からその魅力を知る人です」という。

 ココナツオイル上級者は、その進化版であるMCTオイル(中鎖脂肪酸油)を使っているようだ。短時間でエネルギーになるのが特徴だ。

 これから、どんなオイルがブームになりそうか。岡部さんに聞いてみた。

「ヘンプオイルです。オメガ3、6、9のバランスに優れていて、和食にも、洋食にもよく合います」

 口に入れても、肌に塗ってもよい、奥深いオイル美容の魅力。オイルはキッチンにあるもの、という固定観念を捨て、オイルで美肌づくりをめざしませんか。

※週刊朝日  2017年9月29日号