皆さんの家計はどんな状況ですか。給料や年金は増えず、食費などがかさんで楽ではないでしょう。そこで見直すべきは家と車。自分で買わなくても、借りれば安くて便利です。マイホームやマイカーを「断捨離」して、あなたもハッピーになりましょう。



 かつては誰もが欲しかったマイカー。自動車検査登録情報協会によると、1世帯当たりの自家用車の普及台数は、今年3月末で1.062台。全国では「一家に1台」が実現している。都道府県ごとの順位表を見ると、福井や富山のように一家に2台近いところもある一方で、東京や大阪のように公共交通機関の発達したところでは低い。

 都市部で車を持つには想像以上にお金がかかる。まずは駐車場代。都内だと通常月2万円は必要だ。中央区や港区といった中心部だと、相場が月5万円を超えるところもある。

 次に毎年払う自動車税は、排気量2リットルなら3万9500円。任意で入る保険料は保障内容にもよるが、年5万〜8万円は見ておいたほうがいい。ガソリン代やエンジンオイルなどの消耗品代もある。

 通常2年に一度の車検時には、重量税や強制加入の保険料も徴収される。全て合計すると、都市部では維持費だけで年40万円は下らない。新車の購入費も考えれば、車を諦めることで年100万円近いお金が自由に使えるようになる。浮いたお金で外食したり、旅行に行ったりすれば、車がない生活のほうが楽しく過ごせそうだ。

 ファイナンシャルプランナーで『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』(明日香出版社)などの著作がある山崎俊輔さんは、マイカーにこだわる時代ではないという。

「車が必須なものではないと、みんなが気づき始めている。本当の車好きでなければ、必要なときだけ借りればいい。今はカーシェアリングも広がっている」

 カーシェアは車を会員で共同利用するサービス。都市部を中心に伸びていて、交通エコロジー・モビリティ財団によると今年3月で会員数は約108万人、車両は約2万4千台。人気の秘密は料金の安さだ。

 業界最大手の「タイムズカープラス」の場合、月額基本料金は1030円。コンパクトカーなどのベーシック利用料金は15分206円。駐車場代やガソリン代、保険料といった維持費はかからない。仮に毎日1時間使うとしても、月2万5千円くらいですむ。

 運営する「タイムズ24」によると、今年9月に佐賀県でサービスを始め、全都道府県で展開している。今の車両台数は約2万台で、2020年には3万台まで増やす方針だ。

「台数を増やして利便性を高め、市場を成長させていきたい」(広報担当者)

 長距離を走るなら、カーシェアよりもレンタカーが有利な場合もある。好きな時間に出発・返却できる24時間の営業所も増えてきた。街中の移動なら「自転車」という手もある。車を手放して積極的に歩くようにすれば、足腰が強くなり、高齢者にとっては認知症の予防にもつながる。

 それでも地方では、マイカーを手放せない人もいる。山崎さんは普通車にこだわらず、税金や保険料、消耗品代などが安い軽自動車をすすめる。

「普通車と比べても、性能や耐用年数に大きな差はない。私も乗っているが、小回りもきいて運転しやすい。1台目は普通車、2台目は軽という家庭も多いが、両方とも軽にすれば維持費をかなり抑えられる」

 車も高いが、人生で一番大きな買い物といえば、やはり家だろう。日本では土地は安定した資産だという「土地神話」が、長らく続いてきた。家を持てば将来値上がりが見込めるとして、資産形成の手段になった。都心から離れても「庭付き一戸建て」が庶民の夢だった。東京の多摩ニュータウンや大阪の千里ニュータウンなど、各地に街が生まれた。

 ところが1990年代初めのバブル崩壊で神話は崩れた。少子高齢化や住宅の供給増によって、今や全国的に空き家が目立つようになっている。高くても新築が好まれるため、いったん空き家になった家は買い手がつきにくい。

 野村総合研究所の推計では、2013年に13.5%だった総住宅数に占める空き家率は、23年には21.1%、33年には30.4%まで上昇する。3軒に1軒が空き家になる計算だ。不動産は安定した資産ではなく、負の遺産になりかねない。土地問題に詳しい閣僚経験者もこう指摘する。

「土地神話は完全に崩壊した。30年ごろになると地価はさらに下がる。駅から離れたところでは、土地を売っても建物の撤去費用さえまかなえないケースが出てくる」

 それでも日本人の持ち家信仰は今も根強い。15年の国勢調査によると、全国の持ち家の割合は62.3%。3世帯に2世帯が家を所有している。背景には、賃貸よりも買ったほうがお得だという考え方がある。

 今は超低金利で、35年の固定金利でも1.5%以下で借りることができる。新築マンションを買った場合、毎月の返済額が低く抑えられ、借りる場合の家賃と変わらないケースも少なくない。マンション販売会社の担当者は、このようなセールストークをしてくる。

「同じ金額を毎月払うなら、資産が残るほうが有利です。賃貸だと払うだけで何も残りませんよ」

 確かに、ローン返済額と長期間賃貸する場合を単純に比較すると、買ったほうが得に思える。しかし、マンションの場合、ローンとは別に管理費や修繕積立金が毎月かかってくる。ほかにも、固定資産税を毎年支払わなければならない。

 35年かけてやっとローンを返済しても、建物の価値は下がっている。外壁や配管などの傷みが進んで、修繕積立金だけでは足りないことも考えられる。住宅ジャーナリストの榊淳司さんは警告する。

「建物は水回りなどを定期的にメンテナンスしないといけない。長期間たつと外壁などの修繕も必要になってくる。特にタワーマンションは下から足場が組めず、通常のマンションよりも費用が倍近くかかる。積立金があるから大丈夫とは言い切れません」

 意外なところにもリスクが潜む。マイカー離れで、駐車場が「がらがら」のマンションは珍しくない。駐車場代が当初の想定より集まらないと、管理費や修繕積立金の不足につながる。榊さんはマンションの機械式駐車場には、問題点が多いという。

「機械式駐車場は、空いていても維持費がかかる。耐用年数は建物より短く、屋外だと約15年。設備の更新には1台100万円以上はかかる。駐車場代は入ってこないのに費用だけ大きくなれば、管理組合の予算が厳しくなる」

 さらにやっかいなのが建て替えだ。修繕を繰り返しても、いつかは限界を迎える。マンションを建て替える場合は、区分所有者らの5分の4の合意が必要だが、とりまとめるのは簡単ではない。まとまらず、多くの住民が去り、老朽化した中で一部の人だけが暮らす。こうした“廃墟”マンションはすでにある。榊さんは、これからこうしたケースは激増するとして、早めの対応を促す。

「交通の便がいい都心部以外は、廃墟マンションになる危険性がある。郊外の一戸建ても、一緒に住んでいない子どもたちにとっては、維持費ばかりかかる“負動産”。今は不動産バブルで、いつ崩壊してもおかしくない。売るなら高値の今がチャンスです」

 それでも老後は家賃を払いたくないので、持ち家がいいという人もいるだろう。前出のファイナンシャルプランナーの山崎さんは、買うなら定年直前が狙い目だという。

「80歳や90歳のときに、建て替えを迫られると大変です。定年前までは、自分の収入で支払い可能な家賃より1、2割安い部屋に住みましょう。その差額をため、定年のタイミングで築浅の中古住宅を購入するのが合理的かもしれません」

 高齢者は賃貸物件を借りられないと言われてきたが、状況は変わっている。不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME‘S(ライフルホームズ)」は、賃貸物件の検索サイトに「シニア・高齢者歓迎の物件」の特集ページを16年2月に開設した。全国で約2.2万件の情報があるという。

 ほかにも公営住宅などがあり、高齢者でも住む家がなくなるという心配はしなくて良さそうだ。

 家を買うより賃貸をうまく活用するほうが、どの年代にとっても有利な時代になってきている。(本誌・大塚淳史、多田敏男)

※週刊朝日 2017年10月20日号