18歳の人口の減少が始まるとされる2018年。どの大学にとっても脅威だが、国立大学のなかではとりわけ教員養成系の大学が苦境にたたされている。生き残るためにはどうすればいいのか。

 文部科学省は2016年度から、全国に86ある国立大に改革を促すため、収入の柱である「運営費交付金」の一部について、傾斜配分制度を導入した。



 各大学は、文科省が示した「世界最高水準の教育研究」「特定の分野での世界的な教育研究」「地域活性化の中核」という三つの枠組みから、自らが特化すべき一つを選んで改革の戦略を提示する。文科省はその内容を「査定」して配分を決める。

「地域活性化の中核」を選んだ55大学の運営費交付金の再配分率を、高い順に並べてみた。再配分率が100%未満は「マイナス査定」で、運営費交付金は減額される。マイナス査定の27校のうち8校を教員養成系の単科大学が占める。

 厳しいのは予算だけではない。公立小中学校の教員需要は今後10年で半減する見込みだ。また、小学校の教員免許が取れる私立の4年制大学がこの10年で3倍以上に増え、実際の教員採用者に占める国立の教員養成系出身者の割合は3割にまで落ち込んでいる。文科省の有識者会議は8月、国立の教員養成系大学・学部に対し、定員削減や機能の集約、連携・統合の検討を提言。統合について、「単科大と同一県内もしくは近隣の総合大」「都道府県をまたぐ単科大同士」などのパターンを示し、21年度末までに結論を出すよう迫った。

 教員養成系の縮小・統廃合は、00年代初頭の小泉政権下でも検討されたが、実現したのは島根大学と鳥取大学の教育学部の統合のみ。東北大学高度教養教育・学生支援機構教授の羽田貴史さんは言う。

「明らかなメリットがない限り統合は難しい」

 羽田さんによれば、メリットがあるのは補完し合える組み合わせ。医科単科大学は規模が小さく、教養科目担当教員の確保が難しいが、近隣の総合大と統合すれば自前で確保する必要がなくなる。総合大も「医学部」を得ることで魅力が増す。

 しかし、教員養成系大同士では補完性がない。教員養成は戦前から都道府県単位で行われ、現職教員の研修など教育行政とも結びついてきた。

「地域との密接な関係を壊してまで統合するメリットはない」(羽田さん)

 文科省も「必ずしも統合で数を減らすこと自体がゴールではない」(柳澤好治・高等教育局大学振興課教員養成企画室長)という立場。いま、大学が模索するのも「連携」だ。

 例えば鳴門教育大学は2年前から、同じ四国の香川大学、高知大学、愛媛大学と教職大学院での連携を進めている。教職大学院は、座学中心の学部では身につきにくい実践力を養う場として、文科省が今後の教員養成の核と位置づけているものだ。

 鳴門教育大の佐古秀一理事は、

「4大学の間でかつて検討された統合ではなく、授業の共同化など、連携体制を整えています」

 北海道教育と愛知教育、東京学芸、大阪教育の各大学も、「へき地教育」「外国人生徒支援」などそれぞれの得意分野でプログラムを開発し、共有を進める。

 高等教育を専門とする筑波大学特命教授の金子元久さんは、一つの大学が小中高すべての教員養成を担うのではなく、近隣の大学で分担する形も進むとみる。他にも、「国立大教育学部の学生が、毎週月曜日と夏休みの集中講義は、近くの私立大で受ける」といった形が広がる可能性がある。

 ただし、連携だけで生き残れる保証はない。金子さんは言う。

「個人的に完全な統合には賛成しないが、財政は厳しくなる一方だ。地元の学校への協力や教員の再教育を有料にするなど収入を増やす努力が必要だ」

(編集部・石臥薫子)

※AERA 2017年11月27日号より抜粋