ちひろ美術館・東京(東京・下石神井)で、来年1月31日まで「日本の絵本100年の歩み」展が開催されている。これは絵本の歴史を色鮮やかな原画でたどるものである。



 1910年代に「子供之友」や「赤い鳥」が創刊されると、大正デモクラシーの機運を背景に次々と絵本が出版され、日本の児童文学が花開いた。その後敗戦を経て、子どもたちに夢を与えようと、作家や画家たちが個性的な絵本を生み出し、70年代に絵本ブームが訪れた。

 絵本は穏やかな時代には微笑ましいものが多いが、戦時などは勇ましい内容になり、敏感すぎるほどに社会の情勢に左右されてきた。ただ、豊かな表現方法は今も脈々と受け継がれている。

「100年を振り返るだけではなく、これから100年の絵本の役割が明らかになればいい」

 と、ちひろ美術館・東京副館長の面出薫さんは語る。

 これからも絵本は平和な時代を映す鏡であってほしい。

【“絵本”との出会いやその思い】絵本作家インタビュー
■村上康成
 谷内こうたさんの『のらいぬ』という絵本に20歳前に出会い、絶対絵本を描くと決めました。でも、そんなに簡単に作れないんですね。そんなとき、ある編集者にヤマメや川の話をしたところ、それを絵本に描いてみたらとなり、生まれたのが僕と一緒に写っているデビュー作『ピンク、ぺっこん』です。これを見ると至らない所ばかりで、あまりニコニコはできません。でも、熱い気持ちを思い出し、奮い立ちますね。僕が『のらいぬ』にショックを受けたように、何かに目覚めるきっかけになれればいいなと思いながら作っています。僕の絵本がその人にとって、大切なパートナーになり得たら、冥利です。

むらかみ・やすなり 岐阜県生まれ。2003年、『なつのいけ』で日本絵本賞大賞受賞。静岡・伊豆高原と沖縄・石垣島にギャラリーがある。

■長野ヒデ子
 私の生まれた村には図書館も本屋もなく、自然が絵本の代わりでした。大人になって絵本が好きになり、子どもが生まれてから一緒に広告の裏に絵を描いて遊んでいたのを編集者が見つけ、絵本にしてくれたのがデビュー作『とうさんかあさん』です。ある人に、絵本は頭で考えるだけではダメ、自分が考えていることや思いを体の中で発酵させ、目に見えないものから溢れる気持ちや力をもらって、それを体を通して作品にしなければと教えられました。常に自分の琴線に触れることを絵本にしたいと思います。私の絵本で遊んでくれ、読者の思いを重ねて何かを感じてもらえるならもっとうれしいです。

ながの・ひでこ 愛媛県生まれ。『とうさんかあさん』で日本の絵本賞文部大臣奨励賞受賞。「せとうちたいこさん」シリーズを始め、多くの絵本を手がける。

【南伸坊】「もっと絵を“楽しんで”ほしいですね」

 僕らの子どもの頃は、親が子どもに絵本の読み聞かせをするということが、一般的ではなかったので、絵本を手にとるようになったのは、中高生になってからです。自分が絵を描く立場で見てた感じです。今はないけど、東京・池袋駅東口に「新栄堂」っていう本屋さんがあって、そこの4階か5階のデザイン本売り場に『シナの五にんきょうだい』が飾ってあったのをよく覚えています。一目見て、この絵本の世界がすごく気に入っちゃって。絵もストーリイも好き。僕が作った『チャイナ・ファンタジー』も、この絵本の影響ですね。

『おだんごぱん』も好きな絵本です。元はロシア民話らしいけどストーリイは忘れちゃった。「絵」が好きなんですね。絵本って、ストーリイの持つ意味とか背景を語られがちですが、僕は、もっと「絵」そのものに目を向けてもいいと思うんです。「絵」本なんですから。絵をそのまま楽しむ、子どもは自然とそうしているけど、大人はなかなかそうできない。最近はある種類の絵本が流行すると、同じようなものばかりになるけど、出すほうはともかく、買うほうは「この絵いいな、好きだな」という感じで絵本を選んでほしい。

 いま、絵本がたくさん出てます。僕と同じイラストレーターも、新しい発想の絵本をたくさん描いています。子どもに大人気の長新太さんの『おじさんあそびましょ』とか、片山健さんの『ぼくからみると』とかが、僕の好みですね。イラストレーターが描く絵本なら、大人も手にしやすい。その中からお気に入りを見つけて、何度も見る。自分の好きな絵であれば、いつまで見ていても飽きませんから。

(文=鮎川哲也、工藤早春[本誌])

※週刊朝日  2017年12月1日号