この年末、朝日新聞朝刊で連載中の4コマ漫画「ののちゃん」の山田一家が相続をテーマに家族会議を開いた。会議中、祖母のしげ(70)は夫が最後、認知症で大変だったと明かすが、世の中では認知症による相続トラブルも問題になっているらしい。

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しげ「おじいちゃんな、最後はボケてなぁ。大変やったわ」

父たかし(40)「そうなんですか。認知症は、800万人時代が来ると言われていて、相続のあり方にも関わってくる問題ですよ」

しげ「近くの町で事件があったやろ。ボケた親の財産を息子夫婦が使い込んで。かわいそうな親やわ。なむあみだぶつ」

母まつ子(40)「ちゃうわ。話が違うで。かわいそうなのは、逆に息子夫婦や。使い込んだと疑われて、弁護士さんに相談したって聞いたわ。真実は、こういう話らしいわ……」

 たまのの駅に近い住宅街に、認知症の父親の介護をしながら暮らす長男夫婦がいた。長男には姉がいるが、母親の介護に全く無関心だった父親に嫌気がさし、姉と父親は絶縁状態となった。結局、姉が母親の介護をしたが、数年前に他界。実業家だった母親は多額の遺産を残したが、その半分を当然のように相続した父親に姉は怒り、とうとう家を出ていった。

 父親が認知症になると、今度は姉が知らんぷり。長男は父親と同居し、主に長男の妻が父親を介護。すると姉は「そんな父親の介護なんかするな」と言って、長男夫婦まで敵視するようになった。そんな姉に怒りを覚えた長男の妻が、長男をせかして、父親の財産の多くが長男に来るような内容の遺言を、父親に書かせようとした。でも、認知症で判断能力がない父親に遺言を書くことはできなかった。

 そして父親が亡くなった。遺言がないから、姉は当然、法に従って、財産の半分の相続を要求。さらに認知症になった後の父親の財産管理を長男が任されていたことを取り上げて、長男が勝手に父親の預金を自分の口座に移し、横取りしていたと主張した。

 困った長男が弁護士に相談すると、こう言われた。

「親が認知症になった場合、子どもの一人が財産管理をすることが多いが、どうしても親と自分の資産を混同し、全ては自分の資産だと錯覚して使い込んでしまうケースは確かに多い」

 実際に長男は、父親の生活に関わる費用を毎回、父親の口座から引き出すのは面倒なので、まとまった額を自分の口座に移していた。

 使い道は医療費や薬代、食費の一部など、全ては父親のためだったが、父親の介護日誌などもつけていなかったので、姉が主張する「資産の不正利用」がなかったことを証明するのは、なかなか困難だった。

 姉は、親戚や知り合いに「長男が父親の資産を違法に使い込んでいた」と言いふらし、長男夫婦は名誉毀損で姉を提訴。相続問題が一転して損害賠償請求の訴訟に発展し、今もまだ続いている。

しげ「なんや、ドロドロやな。姉弟で恐ろしい話や」

たかし「遺産分割というより、感情の争いですね。相続問題って、うらみ、つらみが積もり積もった末の骨肉の争いであることが多いんです。家族なのに、悲しい話です」

まつ子「こんな話、子どもたちに聞かせたくない。のの子、カレーが作ってあるさかい、あっちで食べとき」

のの子(小3)「でも、うちは仲がいいから大丈夫でしょ。ね、お兄ちゃん」

兄のぼる(中2)「意識したことなかったけど、そういう話を聞くと、わが家は意外といい家族なのかもね。これからも、みんな仲良くしていこうね」

たかし「そうだな。相続に一番重要なことは、家族同士の絆が壊れていないかどうかってことなのかもしれないね」

しげ「ほんまやわ。なんか、心が温まってきた。家族会議、ええんちゃうか」

のの子「おばあちゃんやお父さん、お母さんが残してくれるお金は、感謝しながら、大切にもらわないとね」

まつ子「のの子、3年生なのに立派なこと言うやないの。ちょっと見直したわ」

のの子「うわぁ、ほめられた。また、家族会議やろうね」

(編集部・山本大輔、江畠俊彦)

※AERA 2017年12月25日号