「ビットコインの売買で数百万円の利益が出ました」

 都内に住む30代の会社員は笑顔でそう話す。

 インターネット上の仮想通貨、ビットコインなどの価格急騰を受け、投資を始める人が増えた。1年前は1ビットコインあたり約10万円だったが、今年12月には一時200万円を超えたほどだ。この会社員は、「短期間で売り買いをして、利ざやを稼いでいる」という。

「ビットコインの売買で利益が出たら、税金はどうなるのでしょうか?」

 価格が高騰し始めた今年夏ごろから、仮想通貨に詳しい丸山正行税理士の事務所にはそんな問い合わせが増えた。取引で生じた利益は所得税の課税対象となる。国税庁は12月1日、仮想通貨に関する所得税の計算方法をウェブサイトで公表した。

 取引の多くは、短期の売買で利ざやを得る投機目的だ。取引した人、すなわち自分が死亡したときのことはあまり考えていないケースが多い。だが、

「故人が残した価値がある資産は、すべて相続の対象となります。仮想通貨も同様です」

 と、丸山さんが解説する。仮想通貨を取引する人は20〜30代が多いが、前出の課税に関する相談は60〜70代からもあった。相続を意識する年代だ。

「基本的には、亡くなったときの時価が相続税の課税対象になります。換金した時点でも所得税がかかります。相続後、取引で生じた利益は相続人の所得税の対象になります」(丸山さん)

 仮想通貨は故人のパソコンやオンライン上にあるデータ、つまり「デジタル遺品」にあたる。デジタル遺品の対策や啓発を手がける日本デジタル終活協会代表理事で弁護士の伊勢田篤史さんはネットサービスについてこう語る。

「まず使っているネットサービスの利用規約を確認してください。ネットサービスのアカウントは契約者本人に限り、アカウントを相続できずに『死亡時には契約解消』というケースが多い」

 仮想通貨はネットサービスのひとつ、ネット上の取引所を介して売買する。大手取引所ビットフライヤーは利用規約で「死亡した場合」に「登録取消」をするとしたうえで、「登録取消の場合には全残高を当社の任意のタイミングで決済」するとしている。つまり取引所が本人の死亡を確認次第、仮想通貨を売って現金に換える。

 だが、仮想通貨は家族などにも知らせずに取引していることも多い。都内の20代の会社員は、「数年前に勉強のためにビットコインを買い、ずっと保有しているが家族には言っていない」と話す。さらにスマホアプリなどのウォレット(電子財布)で管理していると、通常本人しかパスワードはわからない。

「まず家族や相続人に、自分は仮想通貨を所有していると知ってもらうことが重要です。それに加えて、『自分が死亡した際には取引所に連絡する』といった具体的にとってほしい行動を伝えてください」

 と、伊勢田さんはアドバイスをする。遺族が「知らない」ことが余分なリスクにもなりかねないからだ。前出の丸山さんはこう警鐘を鳴らす。

「たとえ、故人の仮想通貨の保有やウォレットから取り出す方法を相続人が知らなかったとしても、課税対象にならないことはありません。むしろ、税逃れとされる危険もあります。なるべく早くから相続の対策をしてください」

(編集部・長倉克枝)

※AERA 2017年12月25日号