誰もが必ず向き合うことなのに、なかなか考えない相続にまつわる問題。自分の財産(遺産)を家族にどう引き継げばいいのだろうか。



 法定相続の取り決めとは異なる内容で財産を分割する方法も法律には記されている。最も強力な手段は、故人が遺言を残すことだ。故人の遺志を反映する形で、誰にどれだけ残すのかを指定することができる。また、遺言がない場合でも、相続人全員が話し合いで合意すれば、相続する割合を変えることができる。

 遺言は、被相続人が誰とも相談することなく1人で決められるため、相続人からすると、本来受け取るべき財産を失うリスクがある。法律では、遺言によって法定相続分を侵害された相続人が、「遺留分」として一定の割合を取り戻す権利も保障している。

 遺留分は、配偶者、故人の子ども(非嫡出子を含む・代襲相続で孫なども)が相続人の場合、それぞれの法定相続分の半分。また、両親が相続人の場合は、法定相続分の3分の1の割合で請求できる。相続人が故人の兄弟姉妹の場合は適用されない。例えば、妻と2人の子どもがいる夫が、遺言で全財産を他人に与えるとした場合、妻は法定相続分(全財産の半分)の半分、子どもは法定相続分(残りの半分)の半分を均等配分して取り戻すことができる。

 逆に、負債といった負の財産も相続の対象になるので、相続人には相続を放棄する権利も与えられている。

 2015年1月1日施行の税制改正によって、相続税の基礎控除額が引き下げられ、逆に最高税率は引き上げられた。法定相続人が3人の場合、これまでは8千万円だった基礎控除額が、4800万円まで下げられた。改正前は8千万円以下の遺産には相続税がかからなかったのに、改正後は4800万円を超えれば、相続税が発生するようになったということを意味する。

 専門家によると、これは地価の高い地域なら一戸建てやマンションなどの不動産を所有し、さらに預貯金などの金融資産が多少あれば、相続税が発生する可能性が出てくるという相場観なのだという。これによって相続税の納税義務がある人が一気に増えたのは間違いない。

 また、改正前は50%だった最高税率が55%となるなど、税率は上がった。これまでは金持ちが対象の税という印象が強かった相続税が、一般のサラリーマン家庭も課税対象になりうる「大衆の税」の傾向を強めたことは、ぜひ知っておきたい。

 さまざまなことが法律で細かく、詳しく決まっている相続だからこそ、その仕組みや準備方法を知っているのと知らないのとでは大きな差がつく。一歩間違えば、故人の遺産を家族で奪い合うような「憎しみの財産」にもなる危険性がある相続財産。できることなら、家族の安心、安定を気持ちよく引き継ぐ「希望の財産」にしたいと誰もが思っている。(編集部・山本大輔)

※AERA 2017年12月25日号より抜粋