営業や広告、PRできない「殺し」は、世の中で最も売ることが難しい。三省堂書店・新井見枝香さんがおすすめする三浦崇典の著書『殺し屋のマーケティング』は、そんな「殺し」をどう売るかを題材にした、書店経営で培ったノウハウが詰まった一冊だ。

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 現役の書店員が書いた本で、大ブレークした例を私は知らない。カリスマ塾講師が書いた勉強法やスポーツ選手が書いた自己啓発の本とは違い、書店員が書いた本には大してプレミアム感がない。そんな一般的な常識を、本書に登場する伝説のスナイパー「サイレンス・ヘル」が見事に打ち砕く。

 本屋は出てくるが、まず本を売っていない。売りたいものを売るために女子大生が奮闘する話なのだが、それは本ではなく、殺しだ。最高にクレイジーである。書店員と書店経営の経験で得た最強のマーケティングメソッドを、なんと4年もかけてエキサイティングな小説に仕立て上げたのだ。専業作家だったら野垂れ死んでいる。こんなクレイジーなことができるのは彼が本屋だからであり、もしかしたら、裏で殺し屋もやっているからかもしれない。

※AERA 2017年12月25日号