新築より安いといっても数千万円の買い物。「こんなはずじゃ」は避けたい。この道40年のベテラン記者が、後悔しない物件の選び方を指南する。



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 新築マンションにはない中古マンションの魅力の一つが「実物を見学できる」という点だ。

 新築は多くの場合、着工直後に販売が始まり、完成するのは1年先は当たり前で、大規模物件なら2年先、3年先のこともある。実際に住む部屋どころか、建物すら見られないのがふつうだ。

 それに対して、中古マンションは当然ながら完成済み。今住んでいる人がいる場合もあるが、基本的には何軒でも自由に見ることができる。そのメリットを生かさない手はない。

 中古マンションといっても、築年数、価格帯、エリアなど様々な違いがある。それらを見極めるためにも、少なくとも5軒程度は実物を見学して「見る目」を養いたい。まずは、ネットなどの情報を活用して物件を絞り込んだ上で、現地に足を運ぶ。その際のチェックポイントを整理してみよう。

 まずは、物件から職場、学校など家族が通う先までの交通アクセスだ。

 通勤・通学時間帯の所要時間、混雑度などは物件説明をうのみにせず、実際に体験しておきたい。表記されているのは昼間の混雑しない時間帯の所要時間である上、乗り換え時間は含まれないことも。「〇〇駅まで30分」とあっても、実際には40分、50分かかる例もある。

 駅からの徒歩時間は80メートル=1分として計算されており、信号や踏切の待ち時間、坂道などは考慮されていない。しかも駅の改札口やホームまでではなく、最寄りの出口からの距離で計算している。大規模駅や地下深くにホームがある駅などでは、所要時間が大きくずれることもあり得る。

 曜日や天候によって駅周辺の混雑度などが極端に異なることもあるので、休日だけではなく平日にも足を運び、実際の通勤時間帯に自分の足で体感してみるのが安心だ。

 できれば雨の日もみておきたい。小さな子どもや若い女性がいる場合には、駅前の繁華街の雰囲気、夜道の街灯なども確認しておこう。

 次は物件の立地環境だ。環境は自分たちの手でどうにかできるものではないし、一朝一夕には変わらない。現状をしっかりと把握し、役所で将来の都市計画なども確認しておくといい。

 買い物や金融機関などの生活利便施設、小中学校などの教育施設、公園や緑地なども自分たちの目で確認するようにしたい。小中学校に関しては、近くにある学校が学区ではないこともあるので要注意。近所の人たちに、通学することになる学校のレベルなどの評判を聞いておくと安心だろう。

 買い物についてはスーパーや商店街に入ってみて、品ぞろえや価格なども見ておきたい。

 物件に着いたら、部屋を見る前にすることがある。

 すぐに目的の部屋に入るのではなく、まずは物件の周りを歩いてみよう。敷地内は整理整頓されているか、ゴミが散らばっていないかなどで管理状態の一端が分かる。

 建物の外壁にひび割れ、シミなどがないかも見ておきたい。随所にひび割れがあったり、タイルがはがれ落ちたりしているのが放置されているようでは、建物の構造面でも、管理の面でも心配だ。

 駐輪場・駐車場がきちんと整理されているかを見れば、物件の管理状態が推測できる。駐車場では、どんな車が止まっているかも見てみよう。居住者の生活水準などもある程度想像できるだろう。

 ゴミ置き場のゴミがまとめられているのかも要チェック。管理状態だけではなく、居住者のマナーなどを判断できる。

 エントランスホールやエレベーターホールの清掃状況も重要だ。管理員の良しあしだけではなく、その背後にある管理組合、管理会社の管理への考え方も推測できるからだ。

 管理員がいれば、業務の邪魔にならない範囲で、直接話を聞いてみよう。管理は巡回なのか、常駐なのか、土日はどうかなどを確認したい。

 あわせて、可能であれば長期修繕計画を見せてもらおう。当初の修繕計画が確実に実行されているのか、積立金は足りているのか、滞納はないかなどを確認する。管理員で対応できないこともあるので、その場合には仲介会社を通して管理会社に確認してみる。

 いよいよ専用部のチェック。玄関ドアを開けた瞬間の匂いはどうか。ペットやたばこなどのほか、各家庭独特の匂いがあり、それがきついと簡単にはとれないこともある。

 玄関ドアや建具は実際に開け閉めして問題はないか、スムーズに動くかどうかなどをみる。キッチンやユニットバスに水漏れはないか、各種住宅設備機器はきちんと動作するか。壁や天井にシミやひび割れなどはないか。見える部分だけでなく、押し入れがあれば開けてその中もくまなく確認する。家を買うのに、「やりすぎ」ということはないのだ。

 細かなことになるが、水道の蛇口にはレバーを上げると止まる「上げ止め」と、下げると止まる「下げ止め」がある。古いマンションにみられる「上げ止め」は、地震などでレバーにモノが落下すると水が流れっぱなしになるので、「下げ止め」のほうが安心だ。(住宅ジャーナリスト・山下和之)

※AERA 2018年10月22日号より抜粋