80歳まで20本の歯を残すべく、厚生労働省と日本歯科医師会が推進している「8020(ハチマルニイマル)運動」をご存知の方も多いだろう。2016年に同省が公表した「歯科疾患実態調査」では、75歳から85歳までの間で20本以上の歯を保つ人の割合が51.2%と半数を超えた。また、1日2回以上歯みがきをする人の割合も年々増加。同調査ですべての年代における歯みがきの頻度は49.8%が2回、27.3%が3回以上と回答した。

 健康な歯を残すには、適切な歯みがきは必要不可欠。そう思いながら毎日みがいていると、いつの間にか歯ブラシもへたってくる。「1カ月に1本」が目安と聞いたことはあるけれど、「自宅用歯ブラシ」と「職場の置き歯ブラシ」、そして「携帯歯ブラシ」すべてを一律で考えてもいいものなのか。専門家に聞いてみた。



「フィラメントと呼ばれる歯ブラシのブラシ部分がヘッドからはみ出るくらい広がっていれば、交換したほうがいいです。目安は1、2カ月ですね」

 そう教えてくれたのは歯科器材を販売するクロスフィールドの歯科衛生士、小林亜子さん。歯ブラシ同様、歯間ブラシもフィラメントのばらけが交換のタイミングだと説明する。細かく言えば、毛先の擦れも注意したいが、見た目だけではどうにも分かりにくい。そこで、「ばらけ」や「しなり」がポイントだという。

 では、1日に歯みがきする回数はどうか? 予防歯科の“先進国”ともいわれるスウェーデンでは、「基本的に1日2回のブラッシングというルールがある」と小林さんは言う。意外にも1日に3回ではないらしい。

「そうなんです。ただ、フッ素含有量が高い歯磨剤を使うことや1日1回はフロスや歯間ブラシで歯間清掃をすることが大切です」

 そう思いながら前述した厚労省の調査を読み返すと、日本での歯間ブラシ使用率は男性30.6%、女性46.3%とまだまだ健康な歯への“伸びしろ”がありそうだ。

 実際のところ、歯ブラシの交換頻度はどのくらいが主流なのだろうか。オーラルケア用品などを販売するサンスターが2014年に実施したアンケートでは、63.7%が2カ月以上同じ歯ブラシを使用していると回答。半年以上、同じ歯ブラシを使っている人も8.7%いた。

 目安は1〜2カ月ということは頭ではわかっていても、「この程度なら、まだ使える」と歯ブラシ交換をためらう人もいるのではないだろうか。事実、3年ほど前、ばらけた歯ブラシの毛先を整える方法がテレビで紹介されたことがある。使い古した歯ブラシを熱湯につけてグルグル回し、その後冷水で冷ますというものだ。素材であるナイロンの性質を利用した方法とのことで、寿命が少し伸びるという。しかし、同社広報担当者は、この“延命策”を「推奨しない」と指摘する。

「歯ブラシには家庭用品品質表示法に基づき、耐熱温度が設定されています。それ以上の温度のお湯をかけることで毛や柄に影響が及ぶ可能性もあります。また、使用を重ねた歯ブラシは毛先が傷むので、毛先が開いていなくても歯垢除去力の低下が考えられます」

 熱湯での延命は見た目だけ、というわけか。ちなみに、同社が推奨する交換頻度は「1日3回使用して約1カ月、約90回の使用」だ。これは手持ち歯ブラシ、電動歯ブラシともに変わりないという。

 では、使用頻度が少ないであろう携帯歯ブラシや会社の置き歯ブラシはどのくらいのペースで交換するのが望ましいのだろう。昼食後1回のみの使用であれば、単純に考えて3カ月くらいは使えるのかも? そんな甘い考えはすぐに打ち砕かれた。

「外出時にキャップを付けるのは仕方ありませんが、半乾きの状態でキャップを付けて、(職場などの)引き出しに入れるのは半乾きの洋服が臭うのと同じで不衛生になりやすいです。保管状態が悪ければ、月1くらいでの交換がいいのではないかと思います。きちんと乾かしてからケースに収納するのであれば、『フィラメントが広がるまで=約3カ月』としてもいいと思いますよ」(前出の小林さん)

「きちんとする」ってけっこう難しい。この原稿を書く前に、引き出しにしまっていた歯ブラシをこっそり捨てたのだった。(AERA dot.編集部・福井しほ)