内臓脂肪を落としたい。内臓脂肪をつきにくくしたい。そのためには、日常生活においてどんなことに気を使うべきか。ライフジャーナリスト・赤根千鶴子氏が、スリムな体形をキープする69歳の医師に聞いた。



 今年は“内臓脂肪本”が大はやり。基本の「き」だが、そもそも内臓脂肪とは何か。

「体脂肪には大きく分けて、皮下脂肪と内臓脂肪があるのです。皮膚の上からつまめる脂肪が皮下脂肪。つまめない脂肪が内臓脂肪です。私たちのおなかの中には、腸などの消化管を包み込み、固定している『腸間膜(ちょうかんまく)』という薄い膜があるのですが、内臓脂肪はこの腸間膜にまとわりつき、蓄えられていきます」と教えてくれたのは京都・高雄(たかお)病院理事長で『内臓脂肪がストン!と落ちる食事術』の著者・江部康二医師だ。

 内臓脂肪がたまりすぎると、おなかまわりがぽっこりと出てくる。そして内臓脂肪の脂肪細胞は、全身に悪玉ホルモンを活発に分泌するようになるというから恐ろしい。

 血糖値を下げる働きのあるホルモン「インスリン」の効き目を悪くする「TNF‐α(ティーエヌエフアルファ)」、血圧を上げる働きがある「アンジオテンシノーゲン」、血管内で生じる“血栓”を溶かす作用を邪魔する「PAI‐1(パイワン)」。いずれの悪玉ホルモンも、内臓脂肪のたまりすぎが原因で増えてしまうのだ。

「だからこそ、皮下脂肪よりも内臓脂肪を優先して減らしていくよう心がけてほしいのです。多くの方々がよく誤解されていますが、内臓脂肪は決して脂質の摂りすぎによって増えるのではありません。内臓脂肪が増える原因は、糖質の過剰摂取にあります」

 空腹時に糖質を多く含む食事を摂って血糖値が上がると、からだは血糖値を下げるために、余った血糖をどこかに貯蔵しようとする。だが肝臓も筋肉も貯蔵庫がいっぱいで受け入れができないと、インスリンは脂肪細胞に働きかけて、「中性脂肪」として貯蔵させてしまうのだ。

「これが、内臓脂肪をはじめとする体脂肪の正体なのです。内臓脂肪の蓄積を遠ざけるには、まず日常の食生活を見直して、糖質をたくさん摂りすぎないようにすることです」

 江部医師は現在69歳だが、35年前から1日2食。そして52歳から糖質制限を実践しながら20代のころと変わらないスリムな体形をキープしているという。

「私は朝食抜きの1日2食です。たとえば晩ごはんを夜7時ごろに食べたとしたら、翌朝は何も食べません。朝はコーヒーに生クリームを入れて飲むだけです。そして昼12時ごろに昼ごはんを食べたとすると、約17時間断食をしたことになるわけです。当然のことながら糖質はほぼ摂っていませんから、血糖値は急上昇したり急降下したりすることもなく、安定しています」

 血糖値が安定していると、空腹感も感じにくいという。

「空腹感は血糖値が急降下するときに感じるものです。血糖値の乱高下が生じなければ、空腹感も生じにくい。私はこの17時間は、内臓脂肪をはじめとする体脂肪を“身体活動のエネルギー源”として燃焼させるための時間と考えています」

 1日3食より2食のほうがベターなのは、あくまでも「糖質制限」をしている人だけ、と江部医師は言う。

「糖質をたくさん摂っているのに食事回数を減らすと、逆効果にしかなりません。長い空腹時間を経て大量の糖質を摂取すれば、血糖値は一気に上がるだけです」

 糖質制限の基本は、ごはんやパン、麺類などの「主食」を控えること。主食を食べるなら、「玄米」「全粒粉パン」「十割そば」など、“黒っぽい主食”を少量に。

「黒っぽい主食は、精製度の低い穀類を原料にしているので、食物繊維の含有量が多い。それによって血糖値の上昇は、精製度の高い“白っぽい主食(白米、食パン、うどん等)”よりも若干ゆるやかになるのです」

 糖質を控える分、たんぱく質、脂質はしっかり摂る。「たんぱく質は肉、魚、卵、大豆、大豆食品などから。脂質はこれらに加えて、バターやオリーブオイルなどからしっかり摂ることです」

 そしてそれ以外にも野菜、海藻類、きのこ類などを鍋や鉄板焼きや野菜炒めなどにして摂取していくことも大切だ。野菜にも糖質が多めの野菜、糖質が少なめの野菜がある。「れんこん、人参、ゆり根などの根菜やかぼちゃなどは、野菜の中でも糖質が多めです。これらはあまり食べすぎないよう注意しましょう」

 冬の料理には欠かせない野菜だが、忘れないようにしておこう。そして逆に糖質が少なめの野菜は「キャベツや白菜やほうれん草、小松菜などの葉物野菜や、ブロッコリー、ピーマン、ゴーヤなどでしょうか。厚生労働省では1日350グラム以上の野菜を摂ることをすすめていますから、野菜は意識的に、食べる量を増やしたいですね」。

 これからは忘年会のシーズンに突入する。お酒を飲むときも糖質には気をつかいたいもの。

「おすすめなのは、焼酎、ウイスキー、ジン、ラム、ウォッカといった蒸留酒です。ジンとラムは100ミリリットルの中に糖質0.1グラムを含みますが、微量ですから飲みすぎなければいいでしょう。そのほかは糖質ゼロです。ただしアルコール度数は高めですから、ある程度薄めてたしなむこと」

 近年は糖質ゼロの発泡酒や日本酒なども多く登場。

「私自身、診療、晩ごはんのあとに毎日、糖質ゼロの発泡酒1本と焼酎の水割りを2〜3杯飲んでます」

 日々の暮らしの中で飲むのは水がベストだろうか?

「糖質ゼロでカフェインもほぼ含んでいないものというと、水と玄米茶です。コーヒーはもちろんカフェインを含んでいますが、実は糖質もわずかに含んでいます。でも朝のコーヒーを砂糖なしのブラックで飲むくらいであれば、問題ないでしょう」

 内臓脂肪は皮下脂肪にくらべて落ちやすいという。急に極端な糖質制限を始めたり、極端に食事回数を減らしたりするのではなく、まずは糖質の高いものを好き放題に飲食するのをやめること。そのストッパーのひとつとして、これらの知識を覚えておこう。

※週刊朝日  2019年12月6日号より抜粋