「長生きみそ汁」「腸活」「食事術」など、健康をテーマにした著書でベストセラーを連発する自律神経の名医、小林弘幸さん。小林さんは「腸内環境」が糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、特に認知症予防にも重要だといいます。その理由と健康法を、作家の林真理子さんが伺いました。



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林:腸内環境をよくすれば認知症も治るというのは、いろいろ実証されてるんですか。

小林:いろいろ出てきてますね。37兆個の人間の細胞の一個一個に質のいい血液を十分に流す、それが健康の定義だと僕は思ってるんです。血液の質をよくするのは腸なので、腸内環境をよくすれば、脳に栄養が十分に行くし、認知症も防げるのではないでしょうか。どんな病気も原因は血流障害ですからね。

林:血流障害ですか。

小林:ええ、だから血流を十分に保っておくことが重要。血流を保つためには年齢とともに活性化が低下する副交感神経を上げておかないといけない。そうしないと血流が悪くなって、心筋梗塞とか脳梗塞とかいろんな病気が起こるんです。

林:副交感神経を上げるために、腸内環境をよくする……。

小林:はい。腸内環境がよくなると腸の蠕動(ぜんどう)運動がよくなる。この蠕動運動をつかさどってるのが副交感神経なので、副交感神経を上げたければ腸内環境をよくする。

林:自分の腸内環境がいいか悪いかは、どうやったらわかるんですか。

小林:いろんな調べ方がありますが、いちばんわかりやすいのは、やはり排便状況だと思いますね。おなかのことがほとんど気にならずに排泄できるというのが一番です。私の「便秘外来」の患者さんは、鬱の傾向が強い。腸内環境が悪いんですね。腸内環境が改善されてくると、性格もどんどん変わってきて、明るくなってくるんです。

林:先生は日本で初めて大学病院に「便秘外来」をつくったんですよね。患者さん、1日にどのぐらいいらっしゃるんですか。

小林:60人から70人ぐらいですね。予約制でして、今、7年待ちぐらいじゃないですか。

林:えっ、7年も待つんですか!

小林:僕の外来でいちばんひどい人は、薬局で買える下剤を1日400錠飲んでました。これが僕の外来での記録で、1日100錠なんていう人はザラです。

林:えっ! 400錠って、どのぐらいの量ですか。

小林:どんぶり1杯半だと言ってましたね。それを毎日食べてるという感じ。強迫観念ですね。下剤を飲まないと何をやってもダメだという強迫観念。だから、食事と運動で治していけばいいんだという自信をつけさせてあげることが重要なんです。

林:そういう人が自然にスルッと出たときの喜びって、すごいものでしょうね。

小林:下剤を大量に服用している人は、もう排便の感覚がないんですね。いつトイレに行ってどうすればいいかがわからないんです。そういう方には、決まった時間にトイレに行って、そこに10分なら10分座ったら出るというのが重要で、僕の外来ですごかったのは、1日20時間トイレの中にいるという人。だからトイレの中で生活している感じになっちゃうんです。

林:「便秘外来」がないときは、皆さんどういうところに行ってたんですか。内科ですか。

小林:ほとんどの人はいろんなところを転々としてるんです。ついこの前「便秘外来」に来た20代の女性は、どこへ行っても「ただの便秘です」と言われて、たまたまうちの家内のクリニック(「小林メディカルクリニック東京」)に来て、おなかに何か触れるものがあるということでMRIを撮ったんです。それを見たらびっくりですよ。直腸が胸のところまで来ちゃってるんです。

林:えっ……。

小林:便が2カ月出てないんです。それで順天堂の小児外科の山高篤行教授という有名な先生に診察していただいたのですが、手術することになるかもしれません。

林:つらかったでしょうね。私も便秘のつらさはわかってるんで。

小林:まずは便臭ですね。便臭がすごいんで、学校とか職場で行けないんですよ。

林:なんて可哀想なんでしょう。特に女性は会社とかで大きいほうをしたくても、我慢したり、自宅に帰ってしたりする人がいるみたいですけど、これがまた便秘の原因になったりするわけですよね。

小林:そうですね。でも、腸内環境がよくなると、便はほとんど無臭です。

林:えっ、無臭ですか。

小林:はい。ガスもまったくと言っていいほど無臭になります。トイレに入ったら前に誰かが使ったことがわかるというのは、腸内環境が悪い人が使ったからです。

林:腸内環境がよくなったら便が無臭になって、会社のトイレも新幹線のトイレも飛行機のトイレも使えるから、ますます健康になるということですよね。

小林:「腸は内側と外側から鍛えろ」というんですけど、案外簡単なんですよ。内側から鍛えるのは食事ですよね。外側から鍛えるのはもっと簡単で、階段を上れば腸に刺激が行くんです。あるいは、腰骨の脇と左の肋骨の下を揉むと、便をつくる大腸が動くようになるんです。

林:私、酵素を飲んだらすごく調子よくて、「これがあれば便秘は一生大丈夫」と思ったら、パタッと効かなくなっちゃって。

小林:何でもそうですけど、最初はいいんですよ。そのうち体が慣れてくるんですね。腸内環境を整えておけば、酵素もずっと効いてると思いますよ。

林:私はいま、3日間保温した玄米というのを食べてるんです。通販で買って。

小林:そういう努力は報われますからね。今までその人が育ってきた中での腸内環境がありますから、ご自身が食べて「調子いいな」と思うものは何でもいいと思うんです。

(構成/本誌・松岡かすみ)

※週刊朝日  2019年12月6日号より抜粋