「歯周病のメインテナンスで歯がきれいになるのはいいけれど、歯ぐきがしみるのが苦手」。このような悩みを持つ人は意外に多いようですが……。歯ぐきがしみる原因は何でしょうか? しみないようにする対策はあるのでしょうか。『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。

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 歯周病のメインテナンスで歯ぐきに刺激を与えるような処置をおこなうことは基本的にありません。「歯ぐきがしみる」と患者さんが訴える原因のほとんどは、実は歯ぐきではなく、歯根の「知覚過敏」によるものです。

 知覚過敏とは、歯の白い部分(エナメル質)のさらに下の層にある象牙質がなんらかの刺激を受けて、しみたり、痛みが起こるものです(2019年7月15日配信分参照)。

 歯周病のメインテナンスでは歯にこびりついたプラークや歯石をスケーラーという器具で徹底的に取り除きます。プラークは歯周病菌をはじめとした細菌の集まりであり、プラークを放置しておくと歯周病が再発しやすいためです。

 歯周病の患者さんには自宅でのセルフケア(歯みがき、デンタルフロス、歯間ブラシなど)が重要であることをお話しし、やり方を指導しますが、それでも患者さん自身のケアで完全にプラークを取り除くことはできません。

 歯周病になると多くの場合、歯周ポケットができるため、ここに歯周病菌が入り込み、歯の根元である歯根にプラークや歯石がたまりやすくなります。

 スケーラーでプラークや歯石を取り除くと歯根の表面はツルツル、ピカピカになります。

 しかし、この歯根は象牙質でできているのでメインテナンスの刺激により、知覚過敏が起きることがあるのです。象牙質には表面に小さな穴がたくさん開いており、奥の歯髄(神経)に至る管になっています(象牙細管という)。この象牙細管への刺激がしみたり、痛んだりという症状につながるのです。

 メインテナンスの間隔が空いてしまったり、プラークや歯石がたっぷり付着している人ほど知覚過敏を訴える人が多いように思います(歯石がきれいに取り除かれ、歯と歯の間の空気の通りがよくなったことで“スカスカした感じがする”と言われることもよくあります)
プラークが付着している歯面は歯周病菌だけでなく、むし歯菌などほかの細菌もたくさん集まってきています。こうした菌の中には酸を出すものもおり、この酸によって歯が溶けている患者さんも多くみられます。ただでさえ刺激に敏感な歯根が酸で溶けてさらに薄くなることで、知覚過敏が起こりやすくなります。

 ただし、メインテナンスによる知覚過敏は一時的なもので、数日のうちに症状は消えてしまいます。

 それでも知覚過敏が理由でメインテナンスをためらっているようなことがあればぜひ、主治医に伝えてください。知覚過敏を起こさないようにするためにできる治療があるからです。

具体的には象牙細管を遮断する樹脂を塗ったり、象牙細管の中に薬をしみこませることで予防ができます。

 また、メインテナンスでよく使う電動の「超音波スケーラー」で知覚過敏が起こりやすい患者さんもおり、このような場合は「ハンドスケーラー」で歯科衛生士が手作業で少しずつおこなうことで症状が出にくくなります。

 メインテナンスにかかわらず、日常的に知覚過敏が起きやすい患者さんには知覚過敏予防効果のある歯磨き粉をおすすめしています。こうした歯みがき粉には神経を保護する「硝酸カリウム」という成分が含有されています。

 これらの方法でも知覚過敏が改善されない場合は、くいしばりや歯ぎしりが原因かもしれません。くいしばりや歯ぎしりで歯が揺れることで神経が刺激されると知覚過敏が起こりやすいのです。このような場合、少しだけ歯を削ってかみ合わせの調整をしたり、マウスピース治療をしたりすることでよくなります。