新型コロナウイルスに感染した28歳の力士が死亡した。糖尿病を患っていたという。重症化しやすいのは、高齢者や基礎疾患を持つ人だ。なかでも糖尿病・腎臓病を持つ人が通常の治療をどうすればいいかなどを専門医に取材した。



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 基礎疾患を持つ人は新型コロナウイルスに罹患すると重症化しやすいとされるが、どの基礎疾患がその傾向にあるかを示す報告が出ている。米疾病対策センター(CDC)の調査は、アメリカの7162人の患者(2020年2月12日〜3月28日)を分析している。入院してICU(集中治療室)に入った、つまり重症化した患者は457人。うち、糖尿病患者がもっとも多く32%を占め、続いて心血管疾患が29%、慢性肺疾患が21%、慢性腎疾患が12%となっている。

 防衛医科大学校病院感染症・呼吸器内科教授の川名明彦医師は説明する。

「基礎疾患を持つ場合、新型コロナウイルスに感染すると重症化する可能性があるため、感染症対策は神経質すぎるくらいに気を付けてほしいです。3密を避ける、マスクを着用する、石鹸を使用した手洗いやアルコール消毒で手指の衛生を保つ……基本的な感染症対策は通常どおりです。それに加え、できれば医療機関に行く機会を減らすことが重要になります」

 糖尿病と新型コロナウイルス感染症重症化の間の因果関係は明らかにされていない。データによれば、確かに重症化する人の中に糖尿病患者は多い。

「しかしほかにも喫煙や肥満が重症化と相関しているというデータもあり、何が重症化の大きな原因となるのかははっきりしません」

 と、順天堂大学順天堂医院糖尿病・内分泌内科科長(教授)の綿田裕孝医師は言う。

 また、糖尿病を患っているからといって、新型コロナウイルス感染症が特別な経過をたどるわけではない。特別な治療が必要ということもない。ただ綿田医師によると、感染症が流行する現下では、普段より一層、血糖コントロールに注意する必要がある。

「一般的に、血糖値が高くなると免疫力が低下することが知られています。糖尿病の人は血糖値に気をつけることで、感染リスクが下がると考えられます」(綿田医師)

 そもそも糖尿病の治療においては、食事制限や運動のほか、薬剤やインスリンによる血糖値のコントロールが重要になる。しかし処方箋をもらうためとはいえ、感染リスクを負う外出はできる限り避けたい。綿田医師は、コントロールの安定している糖尿病の患者には、薬剤の継続使用のために、電話診療やオンライン診療で処方箋をもらうことをすすめている。

 しかし、一部には実際に通院して診療を受けたほうがいい場合も存在する。たとえばもともと治療の一環で運動を続けていたのに、それができなくなった人。通っているスポーツクラブが自粛・閉鎖してしまったというケースもあるだろう。運動ができなくなった場合、血糖値を下げることができなくなり、高血糖の危険性が増す。

 反対に、これまで仕事などで外食の機会が多かったが、自粛要請により、意図せずして食事制限をすることになってしまった人。こうした場合、平時と同量の薬剤を使用すると、血糖値を正常値以下に下げすぎてしまうことがある。低血糖は重度の場合、意識障害などを引き起こしてしまうため、注意が必要だ。

 いずれの場合も、突然の生活の変化により、血糖コントロールがうまくいかなくなってしまった可能性がある。

「これらに当てはまる場合、一度病院で採血をしたほうがいいでしょう。血糖の状態によっては、薬剤の種類や量を調整する必要があるかもしれません」(同)

 慢性腎臓病(CKD)についてはどうか。東京大学病院腎臓・内分泌内科教授で、日本腎臓学会副理事長の南学正臣医師によれば、特に注意が必要なのはウイルスに感染しやすい透析患者だ。透析患者は自身の腎臓が十分機能せず、透析を受けていてもからだに尿毒素が蓄積しており、免疫力が低下している。

 また、腎移植を受けた人やネフローゼ症候群などで免疫抑制剤を服用している患者もハイリスクだという。

「慢性腎臓病の人がなぜ重症化しやすいかは現時点では明らかになっていません。一方、健康な人がコロナウイルスに感染した場合でも、腎臓が悪くなり、急性腎不全を高率で発症することが明らかになっています。軽度や中等度の慢性腎臓病の患者さんも含め、すべての人が感染予防を心がける必要があります」(南学医師)

 慢性腎臓病のある人はどのようなことに注意すればいいのだろうか。

「流行が落ち着くまではとにかく外出を控えることです。慢性疾患の場合、感染源と接する機会を少なくするため、長期処方によって受診間隔を空けるように努めることが原則です」(同)

 発熱などの症状があった場合はかかりつけ医に連絡をする。コロナ感染が疑われた場合のその後の流れは一般の患者と同じだ。

 血液透析の患者は流行期でも透析施設に通わなければ命の危険がある。とはいえ、透析を受けるために2日おきに通院しなければならないので、感染のリスクが常にある。

「施設での集団感染が起きないようにスタッフは対策マニュアルを作成して感染予防に取り組んでいます。患者さんにも体温測定やマスクの着用、患者さん同士の近距離の会話を控えるなどをお願いすることがあります」(同)

 日本透析医会・日本透析医学会の発表(5月8日付)では透析患者における新型コロナウイルスの感染者数は累計で76人、死亡率は11.8%(9/76人)となっている。

「医療崩壊してしまったスペインでは透析患者の死亡率は約25%と高いのです。このような事態は絶対に避けなければいけません」(同)

 関連する学会では蔓延期には感染の疑いのある患者や入院ができない患者に対し、透析施設で対応するよう指針を出している。(アエラムック編集部・濱田ももこ、白石圭、ライター・狩生聖子)

※週刊朝日  2020年5月29日号