体の老廃物を濾過(ろか)する「腎臓」は、人の老いに深くかかわっており、労わることで老化スピードを遅らせることができるという。

 東洋医学の「腎」から老化を見ていこう。何を隠そう、五臓六腑の一つである腎は、生きていくための生命力を指していて、成長や老化、生殖にもかかわっているのだ。

「東洋医学では、腎は腎臓としての機能だけでなく、骨や耳、目、髪なども支配している臓器です。年を取ると腰が曲がったり、白髪が増えたり、耳が遠くなったり、目がかすんだりしますが、これらはすべて腎の力が不足(虚)した『腎虚』という状態なのです」

 こう説明するのは、高齢者の漢方診療に詳しい野木病院(栃木県野木町)副院長で筑波大学附属病院臨床教授の加藤士郎医師だ。

 東洋医学では40歳ぐらいから老化、つまり腎虚が始まると考えられている。

「現代人は寿命が延びた分、老化とともに過ごす時間が増えました。老化はあらがえませんが、そのスピードを緩やかにすることはできます。大事なのは、そのためのスキルを身につけることです」

 その上で、提案するのは“養生”だ。養生とは、病気にかからないための生活の知恵のようなものだ。

 腎虚がある人に共通する不調の一つが、冷え性。女性に多い不調というイメージがあるが、腎虚がもたらす冷えは必ずしもそうとは限らない。

 実際、男性にも多いのが、年を取ってから下半身が冷えるケースだ。冷えがあると免疫力が低下する。風邪などの感染症にかかりやすくなったという人は、体が冷えている可能性大で、対策をとったほうがよい。

「腹巻きや靴下などで体を冷やさない工夫を。入浴も効果的です。運動ではウォーキングがいいですね。太ももの筋肉を動かすことで体内から熱を生むことができます。ウォーキングをする際はなるべく歩幅を広めにして歩きましょう」

 と加藤医師。夏は冷えないと思いがちだが、クーラーがついていると、意外と体は冷える。今の時期も対策は必要だ。

 食養生も大事だ。

「冷たい食べものや飲みものはできるだけ避け、温かいもの、あるいは常温のものを取るようにしましょう。食材を選ぶときは産地にも気を付けてください」

 加藤医師によると、パパイアやマンゴーなど南国でとれた果物や野菜は、体から熱を奪う作用があるとされているので、なるべく控えたほうがいい。反対に寒い地域でとれたものは、体を温める作用がある。ニンジンやタマネギ、ショウガ、ジャガイモなどは体を温める食材なのでお薦めだ。

「緑茶やコーヒーは温かくして飲んでも体を冷やしてしまうので、飲むとしたら番茶やほうじ茶、紅茶が望ましいです」

 養生だけでは改善しきれない諸症状に対しては、漢方薬が有用とのこと。その人の体質や訴える不調によって必要な漢方処方が変わってくるが、腎虚では不足した腎の力を補う八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などを用いることが多いそうだ。

「養生と漢方薬を上手に使って腎虚に対応できれば、数年前の体の状態に若返らせることも不可能ではありません」

(本誌・山内リカ)

※週刊朝日  2020年6月26日号