口腔内が汚れているとウイルス感染のリスクを高まることがわかってきた。口の中の健康を保つためにはどんなケアをすればいいのか。AERA 2020年7月13日号では、予防歯科に注力する歯科医院の取り組みや、自浄作用があるという「唾液」に注目した。



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 鶴見大学歯学部寄付講座教授であり、予防歯科に力を入れる東京都千代田区の紀尾井町プラザクリニックの根深研一理事長はこう言う。

「歯を磨き、歯石を取るだけでは、口腔内の菌をしっかり取り除くことはできない。悪玉細菌を減らし、善玉細菌を7割以上にして、口内細菌(フローラ)のバランスを取ることが鍵です」

 紀尾井町プラザクリニックでは、除菌作用のある「除菌水」を噴射しながら、歯垢や歯石を取る「口内除菌治療」を行っている。

「一般的な洗口液は、細菌が集まってこびりついたバイオフィルムに入り込まずに効果が薄い。一方、分子量が小さい除菌水は、バイオフィルムの内部に浸透します。それを使って歯周病治療をすると、細菌を減らすことができます」(同)

 実際に、除菌水で治療する前は、口腔内に悪玉を含む細菌がいることが顕微鏡で確認される人も、一度の治療で細菌はほぼゼロになるという。

 虫歯のリスクが高い場合は、マウスピースに除菌水を入れ、歯についた悪玉菌を除菌する治療を行っている。5分ほど装着すれば、歯や歯肉溝にしみわたり、細菌の数が激減し、続けるうちに、口内フローラに占める悪玉菌の割合が減っていくという。

 一方、神奈川歯科大学副学長の槻木恵一教授は「唾液力」にも注目する。唾液には自浄作用があるが、唾液の量は加齢と共に減少する。唾液の量は食事中によく噛むなど、生活習慣で増やすことができるという。さらに、唾液の分泌量を増やすマッサージもある。

「耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)と呼ばれる三つの唾液腺を刺激するとよいでしょう。唾液の99%は水分ですが、残り1%に抗菌作用のある免疫物質が含まれます。特に、唾液中のIgA(免疫グロブリンA)という抗菌物質が、幅広い病原体に反応して防御することがわかっており、新型コロナの感染予防に有効である可能性があります」(槻木教授)

 唾液中のIgAの分泌量を増やすには、唾液腺マッサージのほか、適度な運動や発酵食品、食物繊維を多く含む食事をとることも重要だという。

 鶴見大学歯学部の花田信弘教授はこう話す。

「歯周病はゆっくり静かに進む病気。慢性疾患のリスクがあるといっても、これまでは治療に急を要さないイメージがあったかもしれません。ですが、新型コロナの第2波の心配もあります。感染症対策のために、すぐにでも口腔ケアに取り組むべきです」

(ライター・井上有紀子)

※AERA 2020年7月13日号より抜粋