「4歳の息子の妊娠中に知って、ものすごくショックを受けました」

 専業主婦の田中直美さん(仮名・36歳)は、夫が元カノを中絶させていた過去があることを知り、今でも不信感が消えないという。



 田中さんの夫と元カノのA子が交際していたのは15年前。夫が25歳の時だったという。A子は同じ職場の上司で、夫の独立を機に連絡は取らなくなったと聞いていた。

 しかし、それから10年以上たったある日、A子から夫に対して連絡が入った。田中さんはA子が夫の元カノだと知ってはいたが、仕事の話だというので、連絡を取ること自体は了承した。しかし、どうもやりとりが怪しい。明らかに仕事とは違う雰囲気を感じ取ったという。田中さんが、不信思って問い詰めると、

「夫は『ごめん! A子を中絶させたことがある』と、土下座して謝ってきました」

 A子が久しぶりに連絡してきた理由は、一緒に水子供養へ行ってほしいというものだった。夫いわく、当時、A子がキャリアアップのために中絶を選んだというが、それを額面通り信じているわけではない。夫が責任を取りたくなかった可能性も大いにあると考えている。

 最後に水子供養に行ったのは15年前だという。事情が事情なだけに最初は了承するつもりだったという田中さんだが、あるメールの一文を見て許可しなかったという。

「“その日は、私のことを昔のように○○ちゃんって呼んで”って書かれていました。この女性、水子供養がメインじゃないんだって思ったんです」

 ただ、心が晴れなかった田中さんは、この件を知った後に、夫と水子供養へ行った。そこで見た多くの水子地蔵の光景は、今でも忘れられないそうだ。

「婚前交渉を否定しているわけではありません。でもこんな重大な過去を隠して結婚するのはひどすぎます。水子供養をダシにして会おうとする女性にも腹が立ちますが、私は夫に対しても同じくらいの怒りを感じています」

 この件がきっかけで、夫を避けるようになってしまったという。

 お金にまつわる“過去”を隠されていた女性もいる。

「周囲にはうらやましがられるデートばかりしていましたよ。でもこんな裏があるとは思いませんでした」

 製薬会社に勤務する橋本咲さん(仮名・33歳)は、夫が自己破産をしていた過去を知らずに結婚をした。現在、2歳の子供がいるがこのまま夫婦生活を続けていけるか不安を抱いている。

 橋本さん夫妻は同い年。大手企業に勤めている夫は、若いときからかなり羽振りがよかったという。

「記念日には高級ホテルとレストラン。大型連休は必ず旅行へ行っていましたよ」

 友人たちからは“うらやましい!”と言われ続け、「とても気分がよかった」と当時を振り返っていた。だが、いくつか「ん?」と思う所がなかったわけではない。

「今思えば、結婚式と結婚指輪がしょぼかった。それは既に自己破産していたからだったんですね……」

 結婚式はフォトウエディング、結婚指輪は2人で10万円程度のものだったそうだ。

「“これから家族になるし、生活は引き締めていかなくちゃね”って言われた時は、ぜいたくが大好きな私はげんなりしました。でも、既に30歳目前。次の結婚相手を探すことも厳しかったので、『ある程度の我慢も必要だ』と自分を納得させて結婚を決めました」

 夫が自己破産していたことに気づいたのは、子供が生まれて間もなくしてから。夫にマイホームの購入を提案した時のことだったという。

 橋本さんの提案に対して「まだ早いよ〜」とのらりくらりと話をかわそうとする夫。「じゃあ、いつ買うの?」と迫っても明確な返事をしようとはしない日々が続いた。毎月家賃を払い続けることに嫌気がさしていた橋本さんは、皮肉っぽく「自己破産でもしてローン組めないんじゃないの?」と言ってみたそうだ。そこで返ってきたのは「そうだよ」という一言だったという。

「本当にあり得ないと思いました。こんな大切なこと秘密にするってありえますか?『知ったらフラれると思って』って言われたんですけど、そりゃそうですよ!」

 橋本さんは今でも怒りが収まらないようだ。だが、まだ子供が小さいため、すぐに離婚することは難しいとも話していた。

「次、何かあったときのために、夫には内緒で貯金をして対策をしています」

 女性関係やお金以外でも、夫の過去が夫婦関係に微妙な影を落とすこともある。

「普段から態度が大きい夫が、まさか高校時代に“ぼっち”だった過去があったなんて、完全に見る目が変わってしまいました」

 出版社に勤務する坂上りかさん(仮名・36歳)は渋い顔でそう話す。夫は会社経営者。以前から偉そうで、男尊女卑を感じる言動が多かったが、安定した経済力に魅力を感じ、結婚。現在は3歳の子供が1人いる。

 夫の“過去”を知ったきっかけは、坂上さんの取引先との会話だったという。

「何げない会話のなかで、取引先の女性から『私の夫も同い年で同じ高校ですよ』と言われたので、私が夫名前を伝えたら、すごく微妙な顔をされて……。ご主人とうちの夫との間で何かあったのかなと」

 気になった坂上さんは、高校時代の話を詳しく聞いてみた。そこで夫が高校時代には周囲から嫌われ、浮きまくっていたという話を聞いたという。しかもそれで高校を中退していたことも発覚した。

「取引先の方いわく、“周囲と雰囲気が合わなかったみたいだよ”とオブラートに包んでくれましたが、夫の態度から想像するに、すごく横柄な態度をクラス内でも取り続けていたんでしょうね。夫は私に高卒だけど成り上がったみたいに言っていたけど、卒業もしていなかったわけです。中退がどうこうよりも、それを隠していたことが“小さい”なあって」

 坂上さんは夫に対して、「あんなに偉そうにしているから……なんかガッカリだし、ダサイ。子供にもお父さんとして誇れる気がしなくなった」と話す。

 だが、当の夫に対しては、高校時代のことは気づいていないふりをしているそうだ。

「バラしてもいい結果にならないでしょうし、むしろ逆ギレされそうで面倒だなって。偉そうな態度を取ってるときに、“お前、高校ではハブられて中退したクセに”って思うほうがスッキリします」

 現在は、有利な条件で離婚できないかをネットで検索するのが怒りの発散方法だそうだ。

 誰にでもある過去の秘密。全てをさらけ出すカップルもいるだろうが、「知られたら幻滅されるかもしれない」と、いくつかの過去は秘密にしたまま結婚するカップルも少なくないはずだ。

 しかし、何かしらの形でそれがバレてしまう可能性も高い。今回取材を受けてくれた3人とも「過去を知っていたら結婚していなかった」と話していた。

 もしあなたがパートナーの過去を知ったとき、どの範囲までなら許すことができるだろうか。また、あなただったらどこまでの過去は許してほしいと思うか。まったく違う人生を歩んできた2人が全てを受け入れ合うというのは、想像以上に難しいことなのかもしれない。(取材・文=吉田みく)