コロナ禍で広まったオンライン授業。しかし新たな学習様式は、子どもはもちろん親にも負担を強いているようだ。AERA 2020年9月28日号では、オンライン授業に悪戦苦闘する親子らを取材した。


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 都内の会社員女性(47)の息子(中1)と娘(小4)が通う区立の学校では、オンライン授業は強制ではなかった。在宅勤務の合間に何度か動画を再生したものの、娘が誤ってキーボードに触れて画面が消えるたびに「ママー」と呼ばれ、仕事を中断。娘は授業内容に興味を示さず、結局ほとんど受講しなかった。

「自分が隣に座って、つきっきりで見てあげれば勉強したかもしれませんが、在宅とはいえ仕事をしている身でそれはできませんでした」(会社員女性)

 授業が再開した後は、学校側はオンライン授業で配信した内容はもうやったことにしている様子だった。娘は「教えてもらっていないことはわからないよ」と怒っていた。

 休校中の家庭学習について調査したベネッセコーポレーション「進研ゼミ中学講座」商品責任者の山根伊都子さんは、「公立の小中学校で本格的なオンライン授業を行うことは大変難しかったのではないか」と話す。

 同社が幼稚園年中から高校3年の子どもがいる全国2800世帯を対象に5月に実施したネット調査によると、学校からデジタル機器を使って行う学習や宿題が出されたのは、小学校高学年で15%、中学生で18.9%。ただ、同社に寄せられた声として聞こえてきたこととしては、週1回の登校日にプリントが手渡され、自宅で動画を見たうえで宿題をするといった強制力がないものが多かった。保護者から寄せられた「オンライン授業への不安や不満」のトップは、小学校高学年から高校生は「子どもが本当に理解できているかわからない」(43.1〜45.8%)、小学校低学年は「集中力が続かない」(38.8%)。その他、「わからないところを質問できない」「受け身な学習になりがち」など、共通するのは“一方通行型”の授業という点だ。

■キーワードは“自律力”

 山根さんによると、子どもの集中力が持続するのは15分くらい。ただ観ているだけの受け身の動画の場合は「3分もたない」という。

「そのため当社では、チャット機能を使ってリアルタイムで一人ひとりの疑問に答えたり、“なるほどボタン”で一緒に授業を受けている子のリアクションがわかるようにするなど工夫しています」(山根さん)

 教育方法学が専門の早稲田大学大学院の田中博之教授も、先の休校中のオンライン授業に対し「改善が必要」と指摘する。

「先生たちも突然のことで準備が整わず、研究も経験も実践もないまま始めることになった。今後は双方向型の授業が増えていくことは間違いない。その際、授業内容を各学年に合った形にするべきです」

 田中教授によれば、小学校中学年からは話し合いなど対話討論型の授業が望ましい。

「お互いが気持ちよく発言できる術を覚えたら、かえってオンラインのほうが濃密な討論ができるんです。また、不登校や障がいのある子どもが参加しやすいということもあります。社会の多様性におけるオンライン授業の重要性は明らかです」

 先述のベネッセの調査では、「(休校明けに)学習習慣を取り戻せるか」について小学生から高校生の保護者の過半数が「不安」と回答。田中教授は言う。

「家庭学習のキーワードは“自律力”。まずは自分自身で学習計画を立て、後で大人と一緒に振り返る。結局、どういう環境でもこれに尽きます」

(編集部・藤井直樹)

※AERA 2020年9月28日号より抜粋