iDeCoの税金メリットは多くのメディアが解説しているが、受け取るときの税金に関する記事はそれほど多くない。



 AERA増刊『AERA Money 今さら聞けない投資信託の基本』では、2つあるiDeCoの受け取り方法のうち、どちらがトクなのかを徹底検証している。その記事から大事な部分をご紹介。

 「iDeCoの場合、自分のつみたてた掛け金と運用益をどのように受け取るかで払う税金などが大きく変わります」

 と語るのは、ファイナンシャルプランナーの平野雅章さんだ。

 iDeCoの掛け金、運用益の受け取り方は2種類から選べる。一つは60歳以降70歳までの間に、退職金のように一時金として受け取る方法。この場合は、会社員の退職金と同じように「退職所得控除」が適用される。

 もう一つは、60歳以降、5年から20年の期間で年金として受け取る方法。この場合は「公的年金等控除」が適用され、控除後の課税所得金額が雑所得扱いとなり、他の収入と合わせて総合課税される。なお、iDeCoでは一部を一時金として受け取り、残りを年金で受け取る形の組み合わせも可。

 会社員の退職金に適用される退職所得控除は、勤続年数に応じて控除分が計算される。勤続年数20年以下なら「年40万円×勤続年数」。20年以上なら「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」が控除額になる。

 たとえば勤続20年の人なら800万円、30年なら1500万円、40年なら2200万円までの退職金には税金がかからない。しかも課税されるのは「退職金から退職所得控除額を引いた額の2分の1のみに対して」だ。

 iDeCoの一時金での受け取りには退職所得控除が適用されるが、iDeCo分の計算は前述の「勤続年数」を「iDeCoの加入期間」に置き換えて計算する。退職金がない自営業者も同様に「加入期間」で控除額を計算すればいい。

 会社員の場合、退職所得控除は「勤続年数」と「iDeCoの加入期間」が重なっている場合、長いほうの期間で計算する。勤務先からの退職金とiDeCoの一時金を合計した金額がギリギリ控除額までに収まるラインで受け取るのが理想的だ。

 「大企業勤務で退職金が数千万円に及ぶ場合、それだけで退職所得控除分を使い切ってしまい、iDeCo分に控除が適用されない=まるまる所得税・住民税を払うことになるケースもありえます。

 ただ、課税されるのは退職所得控除額を超えた分の2分の1ですし、退職金とiDeCoを受け取る年をうまく変えることで所得税率が下がり、支払う税額が減る可能性があります」

 一方、年金として受け取る場合は公的年金等控除が受けられる。2020年分からは、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が1000万円以下の場合、公的年金等の収入金額が65歳未満の人は年間60万円以下、65歳以上の人は年間110万円以下なら税金を払う必要がない。

「昭和36(1961)年4月2日以降に生まれた男性の厚生年金の受給開始年齢は65歳なので、iDeCoの受取額が300万円以下の場合は、60〜65歳の5年間で60万円ずつ受け取れば税金を払う必要がありません。でも65歳になって厚生年金を年間110万円以上もらえる場合、iDeCoの年金受け取りがあると、全額が雑所得として他の所得とともに課税の対象になるので注意。ただ、基礎控除や配偶者控除などの所得控除を差し引けますし、現役時代の給与に比べれば安くなるでしょうから、適用税率は低いはず」

 一時金での受け取りと違って、年金での受け取りの場合は、退職所得控除のような2分の1課税ではなく、公的年金等控除を超えた受取額すべてから所得控除を差し引いた金額に課税されてしまう。さらに国民健康保険料や介護保険料といった社会保険料も徴収される。この保険料の存在が大きいこともあり、一時金で受け取ったほうがトクになるケースが多い。

 毎月2万3000円の掛け金で年2.3%の運用益を得ながら、iDeCoの運用を20年間続けた会社員の場合で試算をした(上の表参照)。この会社員は勤続38年で退職金が2060万円、65歳以降は年間230万円の厚生年金収入があると仮定。一時金として受け取る場合と年金として受け取る場合の、それぞれで支払う税金と社会保険料を計算したものだ。この場合は一時金として受け取ったほうが12万円ほど、税金と社会保険料の支払いが少なかった。

「この会社員はiDeCoのつみたて期間中の年収が800万円だったとすると、一般的な条件では20年間で約165万円の所得税・住民税を節税できていました。受取時の税金(一括受取時)に比べて、現役時代の節税額は約2.6倍です。やはりiDeCoの節税効果は大きい。受け取るときの税金が節税額を上回るケースは少なく、おトク度は揺るぎません」

(取材・文/安住拓哉、編集部・中島晶子、伊藤忍)

※アエラ増刊『AERA Money 今さら聞けない投資信託の基本』の記事に加筆・再構成