コンビニ冬の風物詩、おでん商戦に変化が起きている。今年はレジの横で売られる鍋おでんだけでなく、カップスープタイプやレトルトパックなど、「新型おでん」のバリエーションが広がった。新たなおでんに込めた各社のねらいは? コンビニ大手3社に聞いた。

*  *  *
 気温が下がるにつれて、店内で存在感を放つおでんは、コンビニの顔とも言える定番だ。通常、夏のさなかに「今年のおでん」のリリースが各社から出されるのだが、今年は新型コロナや酷暑の影響だろう、“新おでん”の情報が入ってくるのがいつもより2〜3週間遅かった。その分、各社、商品開発に知恵を絞っているのだと思っていたが、フタを開けてみると案の定、劇的な変わりぶりだ。
 
 新タイプのおでんが増え、販売スタイルは三者三様。ここまでコンビニのおでん商材がバラエティー豊かになったのは、過去に例をみない。

■「Withコロナの新たな形でのおでん」を提案するローソン

 今年8月下旬、真っ先におでんのリリースを出したのがローソンだった。「Withコロナの新たな形でのおでん」とし、品ぞろえから売り方まで、随所に細かな新型コロナ対策が考えられている。
 
 変化のひとつは、メインである「鍋おでん」の具材すべてを90円均一にしたこと(一部エリアを除く)。価格をそろえたのは、「お客さまに価格を気にせず選んでいただきたいのと、接客時間の短縮や会話を減らすことができ、飛沫防止につながるため」と、広報担当の遊田久美子さんは言う。反響は大きく、例えば昨年135円だった牛すじが90円になったことで、家飲みニーズと相まって好調に売れているという。
 
 また、セット販売を始めたことも新しい。大根、たまごなど5品を入れた「定番セット」、炭火焼つくね串なんこつ入り、あらびきウインナーなど5品を入れた「おつまみセット」の2パターンをそろえた。上記同様、接客時間を減らすねらいがあったというが、「おつまみセットは男性に、定番セットは女性のお客さまからの人気が高い傾向がある」と遊田さん。

「サッと買える」販売スタイルが、例年以上に幅広い客層に支持されていることがわかる。

 さらに、家族で食事をする機会が増えたことから「自宅でおでんを楽しみたい」というニーズに応え、おでん種25個(つゆ付き)の「具材セット」も販売している。即食ニーズが高かったコンビニで、おでん種だけを販売する日が来るとは。生活様式が変わったことは、間違いない。

■ファミマはフードロス対策も視野に

 新型コロナ対策だけではない。ファミリーマート(以下ファミマ)も、多彩なおでん商材をそろえた。

 なかでも昨年に引き続き、フードロス削減などの観点から開発した「レンジおでん」の販売時期を早めて商戦に臨む構えだ。今年、ファミマの店舗で鍋おでんを販売するのは全体の3分の1ほどの約5000店。10月13日から販売がスタートする、このレンジおでんを積極的に売っていく店が多いという。
 
 レンジおでんとは、昨年登場したレトルトタイプのおでんで、レジで注文すれば店員が容器に移し替え、レンジで温めて提供してくれる商品。おでんの具材を鍋で仕込む店員の手間が不要なうえ、賞味期限が180日と長いことから、店の従業員・消費者の両者から好評を得たという。

「通常の鍋おでんもリニューアルしましたが、今年はレンジおでん、パウチタイプおでん、容器に入ったセット販売のおでんなど、選択肢を多くそろえました。召し上がるシーンに合わせて楽しんでいただきたい」(ファミマ広報・和田賢治さん)
 
■セブンはカップスープタイプが仲間入り

 「今年もおでんを積極的に販売します」と、もっとも熱く語ったのがセブン−イレブン(以下セブン)。

「1977年から販売しているおでんは、セブンのソウルフード」という社員がいるほど、おでん開発にかける意気込みには並々ならないものがある。衛生面を配慮する取り組みを強化して、ローソンやファミマと同じく、鍋の前にアクリルカバーを設置。常時、鍋のフタを閉めて販売するという。

 改良ポイントは「つゆ」。基本のだしに「真鯛のあらスープ」を新たに加え、魚のうまみがより増した(全国9エリアで嗜好に合わせてだしを変更)。多くの具のうまみが混ざってできるおでんのつゆを、昨今、スープ代わりに楽しむ人も多い。
 
 また、新たなチャレンジもある。初めてカップスープタイプの「味しみおでん」を販売した。商品の特徴を一言でいうと、カップごとレンジで温めるだけで食べられるチルドおでん。
 
 担当者である商品本部の石田真さんによると、「この2月に北関東地区でテスト販売し、予想以上の反響を得て、8月から沖縄県を除く全国で展開している」という。やはりランチ時のスープ代わりに、また自宅で楽しむおかず&おつまみとして利用されているそうだ。

「こちらは総菜売り場に並びますが、鍋おでんのクオリティーに近づけるために、つゆや具材について鍋おでんのこだわりを踏襲しています」(石田さん)
 
 高い評価の品質レベルはそのままに、買い方を選べるようになったことで、「鍋からおでんを買いたくない」「店員が忙しそうなときに注文しづらい」と考えて買ったことがなかった、新規のおでんファンを囲い込むことができている。現に、「最近、気温が下がってきており、発売以降、好調な販売数を維持しています」(同)

 季節をまたぎ、味しみおでんが人気をキープできているのは「お客さまのなじみのメニューが手軽に購入できるため」と、石田さんは見ている。容器の中に入っているのは、大根・たまご・ちくわ・厚揚げ・白滝の5品。コンビニおでんは「大根・たまご・白滝」が、不動の売れ筋トップ3として君臨しており、コンパクトな容器に人気具材を盛り込んだことが当たったのだろう。カップスープタイプのおでんが、“買い置き”できるおでんの定番になる日も近い。
 
 そもそもコンビニにとっておでんは、野菜がとれ、こんにゃくなど低カロリーの具材が多いことから、「ヘルシーだ」として男女問わずリピーターが多い商品だ。

 今年は、自宅にいる時間が長くなったため「運動不足」「健康に気をつけたい」と食生活を気にする消費者がいっそう増えており、商機は広がったと言えるだろう。

 だがラインアップが多彩になった分、何がヒットするかわからない。鍋から買うか、売り場で選ぶか――消費者の食シーンにかかっている。(吉岡秀子)