今後、数年は続いていくとみられる新型コロナウイルスの感染拡大。感染リスクの高い高齢者をどう守るかが課題だ。高齢者のいる暮らしのなかでは、感染をどのように防ぎ、どう対策したらいいのだろうか。高齢者ホームでの対策を参考にしながら、自宅での感染症対策について考えたい。



 まずは、「家庭内へのウイルス侵入を予防すること」が重要だが、家庭内における感染予防は、どうしたらいいのだろうか。どんなに気をつけていたとしても、ウイルスが自宅に侵入してしまうことはありえる。その際の高齢者への対応や掃除や消毒の仕方、換気、感染防護具についてもきちんと押さえておきたい。

 地域で新型コロナウイルスが発生または流行している状況(下記)でも、家族に新型コロナウイルス感染を疑う状況でなければ、「家庭内での感染予防で、特別な対応は必要ない」と沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科の高山義浩医師は言う。沖縄県立中部病院感染症内科では、高齢者ホームで新型コロナウイルスの感染者が確認された場合の感染対策の考え方も公開しているが、これらは高齢者がいる家の感染症対策の参考にもなるのだ。

■新型コロナウイルスが「地域で流行している状況」とは?
□居住する都道府県もしくは市町村が、地域における流行を宣言している
□居住する市町村において、どこで感染したかわからない患者が複数認められている

 対策が必要になるのは、同居家族や高齢者に咳や発熱などの新型コロナウイルスの感染を疑う症状が認められた場合だ。その場合は、医療機関を受診して、検査を受けたほうがよい。結果が陽性であった場合には、原則として入院措置となる。

 しかしながら結果が陰性だったとしても、【検査で陰性後、感染管理の強化を解除するタイミング】(下記)の三つの条件がすべて確認されるまでは感染予防を心がけたほうがよい。また、その間、下記にあげる(1)〜(4)の【重症化の兆候を疑う状況】には医療機関に連絡、搬送するなどの速やかな対応をとるべきだという。

【検査で陰性後、感染管理の強化を解除するタイミング】
□咳などの呼吸器症状が改善している
□解熱してから3日間が経過している
□症状が表れてから10日間が経過している

【重症化の兆候を疑う状況】
(1)症状が長引いている場合
(2)呼吸苦を訴えている場合
(3)意識レベルの低下を認める場合
(4)水分や食事がとれなくなっている場合

 結果が陰性であっても【検査で陰性後、感染管理の強化を解除するタイミング】の条件が確認されるまでの期間、あるいは保健所の指示ですぐには検査が受けられない場合の検査結果が出るまでの期間はどのように対策すべきか。

 あるいは、同居家族が高齢ではないケースでは、感染が確定したとしても自宅療養になることも考えられる。高山医師はその際の家庭内での対策について、こう話す。

「症状が軽いとしても、家族や高齢者本人に発熱や咳などの症状がある場合には、家庭内で感染を広げないよう心がける必要があります。まず症状のある人は、できるだけ自室から出ないようにしていただくのが一番の感染対策となります。食事は自室でとるようにしてください。寒くならない程度の換気もおこなってください。症状のある人が部屋を出るときや、ほかの家族と同じ部屋で過ごさざるをえないときは、できるだけマスクを着用しアルコールまたは石鹸で手指衛生をしていただきます。あちこち触らないことも大切です」

 症状のある人が使用したタオル等は、ほかの家族が共用しないように注意する。タオルやシーツ、衣類の洗濯は自分でおこなうのが原則だが、使用後3日経過するまで自室に置いておくことで、ウイルスの不活化が期待できる。通常の洗剤で洗濯すれば感染の危険性は失われるので、タオル・シーツ類の特殊な消毒は不要だ。

 また、症状のある人は、トイレ、風呂場などの共用の場では触った箇所を覚えておき、アルコールや消毒薬をしみこませたペーパータオルで消毒する。なお、入浴の順序は最後とする。

 症状のある人の状態によっては看病が必要なケースもある。そのときは、接触して看病する人を限定する。とくに高齢者や基礎疾患を有する人、妊娠中の女性には看病させないことが重要だ。

 症状のある人のケアにあたるときは、少なくともマスクを着用する。症状のある人がマスクを着用できない状態の場合には、マスクに加えてフェースシールドの使用も有効だ。ただ、症状のある人がマスクを着用できるなら、フェースシールドは不要だ。こまめに手洗いをすれば、ケアするごとに使い捨て手袋をする必要もないという。

 普段から、「もし家庭内に感染者が出たら」を想定して、マスクなどの感染防護具やアルコールなどの消毒液を常備しておくことが望ましい。家族に症状が出てから慌てないように準備が肝要だ。

 アルコールなどの消毒液が手に入らない場合の代用品としては台所用合成洗剤がおすすめだ。なお、基本的に、症状のある人の部屋の清掃は、なるべく本人に任せるのがよい。

 高齢者が気をつけたい感染症は、新型コロナウイルスだけではない。季節性のインフルエンザやノロウイルスなども含めた感染症対策を考えておくことも大切だ。

「季節性インフルエンザやノロウイルスは高齢者や家族に感染が起こり、その媒介者となりうる感染症です。一度発生すると家族間に感染が広がる恐れがあるので注意が必要です」(同)

(ライター・石川美香子)

※週刊朝日  2020年10月16日号より抜粋