終活をテーマにした内館牧子さんのベストセラー『すぐ死ぬんだから』が今夏、本誌連載「新生ヘルプマン ケアママ!」の作者・くさか里樹さんの手でコミック化されました。お二人が介護の“クリエーティブ”を語り合います。


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内館:「新生ヘルプマン ケアママ!」は毎週楽しみに読んでいるんですけれど、“キャラ立ち”がすごいですね。顔に刺青(いれずみ)のあるプロレスラーのヘルパー(早乙女千陽)がいきなり出てきてびっくりしちゃって。こういう話でまずプロレスラーって出てきませんよね。

くさか:アハハ、ありがとうございます。プロレスラーは実際に老人ホームに慰問に行くことが多いんですね。そうするとおばあちゃんたち、筋肉を触りにきたりして、すごくテンションがあがるらしいんです。

内館:そりゃあ、ああいう人間ばなれした体を見たら、興奮しますよね。

くさか:気は優しくて力持ちのタイプが多いから、実はヘルパーに向いているんじゃないかなって。私もおばあちゃんだったら、プロレスラーに介護してもらいたいなって。

内館:私は力士がいいなァ(笑)。登場人物の中で私、松原亀子が好きなの。正直者でカッコつけたりせずに感情を全部出すでしょ。そういうことをやると、生きにくくなるからできない。

くさか:カッコつけようとしているのに頭隠して尻隠さずという感じで。そのあたりが意外と可愛くて、描いていて楽しいキャラクターですね。

内館:事前にずいぶん取材はなさったんでしょ?

くさか:完全に漫画として描いているので、取材はほぼゼロなんです。

内館:ホント!?

くさか:前作の「ヘルプマン!!」は、実際の社会問題を切り取っていくという側面がありましたから、現場の熱も知りたかったですし、法律のことも間違ってはいけませんし、たくさんの人に会ってお話を聞きました。お会いした方々はやっぱりみんなすばらしくて、カッコよくて、それを伝えたいという思いで描いていました。今回は、純粋にフィクションとして楽しんで描いています。

内館:介護の現場は面白い、楽しいんだっていうことが、もっと世間に伝わるといいですよね。

くさか:そこにクリエーティブな遊び心がなければ、面白い、楽しいとはならないと思うんですよ。介護ほどクリエーティブで面白い世界ってないんじゃないかなって思ったりもするんです。

内館:記事で読んだ話なんですが、介護の現場で、のみ込む力が弱くなった高齢者に、ごはんとかおかずとか全部ミキサーにかけて食べてもらおうとした。ところが、口をぎゅっと閉じて食べてくれなかったそうなんです。困っていたところ、別の担当の人が、お魚や煮物をまず見せてから、ミキサーにかける。そうすると食べるんですって。そのうちに、ミキサーにかけなくてもちゃんと食べて元気になったって。

くさか:介護現場の創意工夫のいい例ですね。

内館:私、何年か前に出先の盛岡で、急性心臓病で倒れたんです。救急車で岩手医大病院に運ばれて13時間の大手術を受けて、2週間意識不明だったらしいんです。意識が戻って、そのとき初めて流動食が出たんですけど、食べられなくて。

くさか:ドロドロにして食べさせるというのも、おいしく食べてもらおうということよりも、生きさせないといけないというのが先にきちゃうからでしょうね。それじゃあ介護するほうもされるほうも、面白くなくなっちゃう。どう手をかけて、どう楽しむのかというところがクリエートなんだと思いますね。取材でお会いしたヘルパーの一人は、それが難しければ難しいほどやりがいを感じるとおっしゃって、そこを探っていく、見つけていくというのが宝探しみたいで本当に面白くて、と話していました。

内館:「ケアママ!」の主人公の名前も“たから”ちゃんですもんね(笑)。あるファッションデザイナーに聞いたのですが、高齢者施設にボランティアで訪れるときにハンカチやスカーフの明るい色や柄のものをたくさん持っていくんですって。いきなり明るい色の洋服を着てみましょうと言っても、「絶対嫌だ」と断られる。「スカーフだけレモンイエローにしてみましょうか?」とか「ボタンをピンクに変えてみませんか?」とか、小さなところから変えていくと、次はもう少しピンクやイエローの面積が増えても大丈夫になっていくんですって。髪を少しおしゃれに切ってもらうだけで元気になったりするのも、ひとつの“クリエーティブ”ですよね。

(構成/本誌・太田サトル)

>>【後編/内館牧子「“若者には負ける”がいい老後のスタート」 人生100年時代の生き方】へ続く

※週刊朝日  2020年10月16日号より抜粋