うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんの子どもも小学生に! 日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。

 この連載が『東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』という本になりました。杉山さん自身が心理カウンセラーとして学んできた学術的根拠も交えつつ語る「私の育児論」を、ぜひご覧ください。

*  *  * 
 現在小学1年生である息子は、幼稚園の頃から驚異的な運動音痴でした。マラソン大会ではほぼビリでしたし、発表会の縄跳びだって、何度チャレンジしても1回も跳べませんでした。

 年中と年長の2年間、幼稚園の体操クラブにも通ったのですが、運動神経が良くなることはなく……母親としては、「まぁ早生まれだし、親だって運動神経がいいわけでもないし、別にいいや」と思っていました。ところがどうも息子自身は、「もっと速く走って、かっこいいところをみんなにみせたい」と悩んでいたようでした。 

■縄跳びが一回も跳べないことを、先生に相談
 
 かつて通っていた幼稚園では、園長先生が親向けの相談および懇親会をひんぱんに開いていたので、「それならば」と私も一度参加してみることにしました。そこで、息子が縄跳びを一回も跳べないことについて相談してみたのです。

 その時の園長先生の回答は、なかなかに驚くものでした。
「縄跳びが跳べない子どもなんかいません。あの子は、実際は縄跳びを跳べるのだけれど、わざと跳ばないようにしているのです」というのです。その理由は、「跳べないダメな自分でも、お母さんは愛してくれるだろうか? と、試しているから」。

 つまるところ「息子は、母親からの愛情に不安を覚えている」ということなのだそうです。

 私は、息子がマラソンや縄跳びを懸命に何度も練習するところにつき添っていたので、「跳べるのにわざと跳んでいない」という言葉に、違和感しかありませんでした。しかも私は、「失敗こそ成長の種」と考えているので、息子に何かできないことがあっても、まったくと言っていいほど咎(とが)めたことがないのです。

 相談会の後、園長先生から幼稚園の体操教室に関して、「うちは小学生コースもやっているので、卒園後も通ってみたらどうか」という誘いを受けたのですが…… もし息子が縄跳びを跳べないのが「母親の愛情を試すため」という精神的な理由ならば、物理的に運動能力を高めたって意味がないのでは? 

 そんな矛盾を感じつつ、結局、縄跳びを跳ぶにはどうしたらいいのか具体的な解決策は分からないまま、幼稚園を卒園してしまいました。

■テストで運動能力を測り、科学的に分析

 そして小学生になったある日、友人が「科学でスポーツを教えるジムを見つけた」と知らせてくれました。名前は「ARROWZ(アローズ)」。そこでは、さまざまなテストをして運動能力を測り、それを全て「科学的」に分析し、良い点と、もっと伸ばすべき点を指摘してくれるというのです。

 勉強ならば、テストをして得意・苦手分野を割り出す、というやり方は一般的なものですが、運動では聞いたことがありませんでした。息子の運動神経改善のため何かヒントが見つかるかもしれないと、さっそく無料体験してみることにしました。

 テストでは、コンピューターをつかって動体視力や眼球運動をみたり、しゃがんだ状態からジャンプさせて下半身の筋力のパワーを測ったり、全力ダッシュをくり返して瞬発力を試したり、垂直跳びや連続ジャンプなどから跳躍能力を調べたりしました。そして最終的に、全国の平均と比較して、テストの結果から息子の現在の能力値を割り出してくれるのです。なんと、ここまで無料!

 このテストにより、「なぜ縄跳びを跳べないのか」という疑問は即座に解決されることとなりました。ジャンプをするとき、息子は毎回、かかとまでべったりつけてしまっているうえに、足の裏が地面に接している時間が普通の子よりかなり長かったのです。そのせいで、足にあるバネの筋肉が一切「活動していない」状態になっていると言われました。

 走り方がバタバタしてしまうのも、同じ理由だとのこと。 さらに、走るときに腕はひじを90°に固定してワキを締めるのが一番効率的だけれども、 息子はそこにまったく力が入っていないなど、もろもろ直すべき箇所をアドバイスしてくれました。

 コーチいわく、「筋肉には短距離で使うものと長距離で使うものがあり、その中でうまく使えていない筋肉をみつけ活動させてあげることで、全体の運動能力が伸びていく」のだそうです。また、幼少期の運動能力の差は骨密度とも関係しており、そこで成長が早いか遅いかまでもわかるのだとか(ジムで実際に測ってくれます)。 

■運動だと、精神論が出てきたり対策がアバウトになりがちに

  もし勉強でテストの点数をあげたいならば、問題を解くことでどの分野が弱いかを判断し、「ではこの範囲の暗記を強化しましょう」と具体的な対策をたてていくのが普通です。

 しかしなぜか運動となると、どこを直せばピンポイントでうまくなるのかという流れにはなりにくく、単なる走り込みで体力をつけることから始めたり、「甘えているだけ」「もっとがんばるべき」といった精神論が出てきたり、対策がアバウトになりがちな気がします。息子も、具体的なアドバイスの通りに練習したおかげで、「私からの愛情を試す説はいったい何だったのか?」と思うほど、身体を上手に動かせるようになってきました。

「息子は 運動神経が悪い」と前述しましたが、それは単純に特定の筋肉の使い方が下手なだけだったのです。勉強で苦手な分野を暗記すれば点数があがるのと同じで、運動だって、サボっている筋肉を突き止めて「活動させて」あげるようにしていけば、伸びていくものだと知りました。それなのに最初から、生まれつきとか才能だとかで諦めてしまうのは、もったいないことだと知りました。

 ARROWZはまだ、東京、大阪、横浜、静岡の数カ所しかないということですが……全国には、息子のように「なんでこんな運動ができないのだろう?」と悩んでいる子どもがたくさんいるでしょう。そんな子どもたちのために、「科学的に根拠のある解決策」を教えてくれる場所が増えてくれれば、と願うばかりです。