外国人とのコミュニケーションでは、伝わることが一番大事。だから発音なんて気にすることはない──。そんな意見をよく聞くけれど、本当に英語の発音練習って必要ないのだろうか? 現在発売中の『AERA English 2020 Autumn&Winter』(朝日新聞出版)では、英語講師の山田治さんに取材。ビジネス英語の発音について聞いた。

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■ビジネス英語学習で「発音練習」は必要? 

 今や世界中で使われている英語。ノンネイティブ同士で英語を使う機会も増え、母語の影響を受けた発音で英語を操る人も少なくない。「ネイティブをお手本にした発音練習」など、もはや行う必要はないのだろうか?

「読み書き中心で音声面の学習が足りなかった世代の人たちは特に、どこかのタイミングでしっかりと『音の学習』をすべきでしょう」

 そう語るのは、ビジネスパーソンへの指導にも詳しい英語講師の山田治さんだ。

「ネイティブ並みをめざす必要はありませんが、英語の音の特徴を学び、日本語の影響を少しでも抜け出て、相手が理解しやすい英語の音に近づける。それが世界中で通じる英語を身につける近道です」

 また、発音練習はリスニング力を伸ばすことにもつながるという。

「リスニング能力を鍛えたいと思ったとき、英語をただ聞いているだけでは、残念ながら聞き取れるようにはなりません。脳の中に『英語の音を認識する仕組み』を作らなければ、聞こえるようにはならないからです。英語の音をつかみ、それを声に出す練習を重ねることで、頭の中にある『音のデータベース』が更新され、その音を認識、処理できるようになります。リスニングで悩んでいる人は、一度発音について学ぶことをおすすめします」(山田さん)

 日本語とは大きく異なる英語の子音・母音についてはもちろん、イントネーション、強弱リズム、音声変化などについても理解を深めておこう。

■音の特徴を学んだら音読練習に挑戦

 英語の音の基本を押さえたら、次は英文を声に出して読む「音読」のステップに進んでほしい、と山田さん。

「まずは音源をよく聞いて、文の中で個々の音がどう変化しているのかをつかみます。次に、その音を再現することに注力して声に出しましょう。さらに意味や内容を意識して発話することで、きちんと伝わる英語へと進化していきます」

 音読は発音面以外にも多様な効果が期待できる、と山田さんは続ける。

「文頭から順に意味を理解することはリーディング力につながります。内容を伝えるつもりで言葉を発することでスピーキング力が鍛えられます。そして、読んだり話したりできる英語は最終的には書けるようになるので、ライティング力にもつながっていきます。結果的に4技能をバランスよく伸ばすことができるというわけです」

■意識的な音読がさらなる力になる

 ここで気をつけたいのが、漫然と読んでも意味がないということだ。

「音読はインプットとアウトプットの両方の要素を含んでいます。音や意味をしっかり意識しながら丁寧に進めることを心がけましょう。スマートフォンの音声入力機能を使って、発話した英語を認識してもらう、なんて練習も楽しくておすすめです」

 音読の総仕上げは、本人になりきって発話する「なりきり音読」だ。

「本人の気持ちになって話すことで、学んだ英語の『自動性』を高め、自分の言葉として使えるレベルに引き上げることができます。ただそれには、繰り返し練習することが重要。本当に好きな素材、飽きずに何度も味わえる素材、あるいは自分が英語を使うシチュエーションに近いものを選ぶのもいいでしょう」  ややもすると軽視しがちな発音練習。日々の学習に取り入れてみてはいかがだろう。

(文/岡田慶子)

※『AERA English (アエラ・イングリッシュ) 2020 Autumn & Winter』より。