「現代ホスト界の帝王」と称されるローランドさんは、コロナ禍に直面してきた、ホストクラブ閉店を決めた。逆境といえる状況にこそ、ポジティブな側面を探すのが彼のやり方だ。AERA 2020年11月16日号は「逆境マネジメント」を特集した。



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――今年3月30日、小池百合子都知事が「夜の街は控えて」と発言した。以降、ローランドさん(28)が身を置く「夜の街」は、打撃を受け続けている。経営するホストクラブを緊急事態宣言前から休業し解除後に再開したが、7月に閉店を決めた。

ローランド:一時はマスクやパーテーションで営業していましたが、オーナーとしてスタッフに「頑張れよ」、お客さまに「来てよ」と自信を持って言えない状況がイヤだった。どこかに後ろめたさがあるのは健全ではない。だから閉めた。何が正解かはいまでもわからないから、自分が正しいと思うことをやっただけです。

 夜の街が叩かれて、ホストが悪者になっている時、店を閉めれば、ローランドの店はコンプライアンスを順守していると評判になって、世の中が平常に戻った時、プラスに作用するかもしれないという考えもありました。いまを耐えれば競合他社が減る、いまはテナントが空いているから事業拡大もできる、という視点も持ちましたね。

 客が来ない、メディアに叩かれてつらいとか言ってたらキリがないじゃないですか。

 みんな不安だと思いますけど、条件は一緒です。人がいない、感染が怖い、コロナ禍でできない理由は探さなくてもたくさん出てくる。そんなものを探さずに、この状況だからこそできることを探せばいい。常にポジティブな側面を探すのが、俺のやり方です。

――2年前、新宿・歌舞伎町の現役カリスマホストから、ホストクラブを経営する実業家に転身した。歯に衣を着せない発言がテレビ等で「名言」と脚光を浴び、昨年刊行した初の自著『俺か、俺以外か。ローランドという生き方』は累計30万部超のベストセラーになった。

 1992年7月、東京に生まれた。幼い頃からサッカーにのめり込み、将来の夢はプロサッカー選手。中学でJリーグの下部組織に所属し、高校は特待生扱いでサッカーの名門校、帝京高校に入学した。目標は日本一を決める全国高等学校サッカー選手権で優勝することだったが、予選大会の決勝で敗退する。サッカーからきっぱりと足を洗い、大学に進学したが入学初日に退学した。

ローランド:このまま俺は大学に入って、卒業して、どこかの企業に就職して、いつか定年を迎えて、そして人生を終えていく。そんな人生はまっぴらごめんでした。先が見えない不安に比べたら、先が見えてしまう不安のほうがよっぽど怖いと思うんです。

――その不安に抗うために飛び込んだのがホストの世界だ。18歳の春だった。だが、最初の1年は売れなかった。コンビニのパンで空腹をしのいだ。

ローランド:ホストは女の子と話すのが仕事なのに、全く喋ることができない。致命的ですよね。お客さまは楽しんでくれないし、あからさまに不満そうな顔をする。何より、その表情を目の前で見ないといけないのがつらかった。

 少女漫画や恋愛教本を読み漁って、その知識を現場でアウトプットして、女性のリアクションを観察した。何度、トライ・アンド・エラーを繰り返したかわからないですね。

――初めて売り上げナンバーワンになったのは22歳の時だ。ホスト界の常識を覆す、酒を飲まない接客スタイルも確立した。

ローランド:酒を飲んで酔うと、陽気になるというメリットもあるけど、判断が鈍ったり横柄になったり、デメリットもあるじゃないですか。でも、素面(しらふ)なら一定のクオリティーでサービスができる。運転もできる。飲んでいるホストとは違うよ、というアピールも込めて、ロールスロイスの車体に自分の名前をでっかく入れて、歌舞伎町の細い道を遠回りして出勤するんです。売り上げだけでなく、あんなホストはかつていなかったね、と言われる唯一無二の存在でありたいと思っていました。

――頂点に立ってしばらくすると、不安を意識するようになる。

ローランド:年を重ねていったとき、サッカー選手なら例えば指導者の道があるかもしれない。でも、ホストにはその先の明確なビジョンがなかった。だから一つの正解例を作りたくて起業したんです。漠然と不安を抱えているホストたちの未来になりたかった。

――原動力は、「唯一無二の存在になる」という信念と、「自分は特別だと信じる思考」だ。自著タイトルにもなった「俺か、俺以外か」という言葉が象徴する。特別な存在になるためには、自分は特別だと信じ、努力することだという。

 圧倒的な自信と自己肯定感があるように見えるが、「決して強い人間ではない」という。他人からどう見られているか気になり、SNSでエゴサーチをしていた時期もある。

ローランド:顔も見たこともない人間が、好き勝手言っているだけでも、発言がつまらない、態度が気に食わないという書き込みを見て、命が削られる思いがしたんです。

 だから考えた。登山に例えるなら、ヒマラヤのエベレストやアンナプルナであれば、山頂から見下ろす景色は、命をかけて登ってよかったなと思えるでしょう。だけど、SNSはスマホのわずか10センチ四方の世界。命を削ってまで見る景色ではない。だからSNSは、一方的に発信するだけ。好きなことを書くだけにしています。

――仕事では当然、失敗もある。けれども、右に進んで失敗したとしても、左に行っていたらもっと大きな失敗だったと考える。自分らしく生きる秘訣は、ポジティブな面を探し、前向きに考えることだ。

ローランド:「やまない雨はない」という言葉があります。もっと自分流に解釈するなら、雨がやむのを待っているだけだと、能動的な状態ではない。やまない雨があるならば、その雨雲の上に行けばいいんです。そこに行けば必ず晴れますから。雲の上に行くという発想と努力をしている人がどれだけいるか。少し思考を変えるだけで、自分らしい道は必ず開けます。

(編集部・中原一歩)

※AERA 2020年11月16日号より抜粋