コロナ禍での長時間労働などで「ブラックな職種」として敬遠されている教職。中学、高校教員は慣れない消毒やリモート作業などで疲弊している。教育学部の志願者数も都市部では減り続けている。一方、地方ではコロナ不況による民間企業の採用控えで人気の復活の兆しがあるという。



 既に定着した「教職はブラック」という労働環境に加え、新型コロナウイルスの感染対策、ICT(情報通信技術)教育化が加わり、ネット環境が脆弱な公立校の教員はさまざまな苦労を強いられている。

 国公立大学教育学部系志願倍率は2011年以降低下し、近年は4倍前後だ。教育学部人気について、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんはこう説明する。

「1974年に田中角栄内閣が、一般の公務員より教員の給与を優遇することを定めた『人材確保法』を公布。5年間で段階的に給与の改善を行ったため、あの当時は教員志望者が多かった。しかし、90年代に学級崩壊、2000年代には理不尽なクレームを言うモンスターペアレントが話題になりました。近年は教育を取り巻く厳しい環境のため、教育学部の人気が低下しています」

 教育学部の人気は、景気に左右される。

「景気が悪いときには、安定した職業である教員が人気になります。10年に志願倍率が上昇したのは、リーマンショックによる経済不況の影響です」(石原さん)

 では21年の動向はどうなりそうなのか。模試の志望動向を見てみよう。

 9月に実施した第1回駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試の受験者数は約40万人。コロナ禍の影響もあってか前年より3%減少し、教育学部の志望者も6%減少した。

「昨年は前年より8%減だから、昨年よりは少し教育学部の人気が戻ったと言えそうです。小中学校の教員の負担が重すぎるため、大都市部では教育学部志望者は減少しています」(同)

 近年、毎年のように教員採用試験の志願者数が減っていたが、今夏はどうだったのだろうか。まず、大都市である東京と大阪の志願者数を前年と比べてみよう。

 東京都は小学校が3762人から3628人、中学・高校共通が5827人から5224人に減少。大阪府も小学校が2016人から1936人、中学校が2024人から1965人、高校が2037人から1974人に減少した。

 しかし、就職先が少ない地方は事情が異なる。

「コロナ不況もあり、教育学部やメディカル系の学部が人気です」(前出の石原さん)

 地方で教育学部に一定の人気があるのは、他にも理由がある。

「地方は大都市部よりも教員が尊敬されています。また、地方の国公立大では従来のセンター試験の得点率が4割台でも合格するなど入りやすいこともあります」(同)

 一方、河合塾が8月に実施した第2回全統共通テスト模試の受験者数は約37万人。

「志望者数を前年と比べると、国公立大の前期は93%ですが、教育学部は95%。私立大も全体の89%に対して、教育系志望者数は93%。昨年までは教育学部は不人気でしたが、志望動向をみると、人気の復活が感じられます。特に地方で顕著です」(河合塾教育情報部チーフの岩瀬香織さん)

 コロナ不況による企業の採用控えを警戒して、教育、看護、社会福祉、薬学など資格をとれる学部の人気が高いという。

「今夏の教員採用試験のときには、既に企業の内定をもらっていた学生もいましたが、来年は受験者が増えるのではないかと思います」(同)

 西日本の市立中学校で数学を教える女性教員Aさんが居住する県では、高校は333人から328人に減少したものの、小学校は428人から441人、中学校は368人から401人に増加している。地方都市の複数の私立の進学校でも、例年よりも教育実習に来る卒業生が多かったという。

 一方で教員の負担が重すぎて、うつ病になる人や教員をやめる人もいる。Aさんの中学校に新卒で採用されたある教員はコロナ禍の苦悩をこう話す。

「給与や賞与がちゃんと出たのはいいのですが、仕事は本当にハードです」

 新人教員がやりがいを感じ、楽しく働けるよう、労働環境やネット環境が改善されることを願いたい。(庄村敦子)

※週刊朝日  2020年11月20日号より抜粋