コロナ禍、医療現場で働く医師たちへの尊敬はやまない。もし子どもが「医師になる」と言ったら応援したい半面、親としては高額な学費が気になるところ。いったいいくら、用意すればいいの? 『医者と医学部がわかる2021』(朝日新聞出版)では、「医学部に合格するための確実な方法」や学費・志願者数・医師国家試験合格率などの最新データを集めたランキング、受験にも役立つ「国公私立82医学部データブック」など情報満載だ。



 今回は「医学部進学 現実的マネープラン」という企画から、国立大と私立大の学費の違いについて紹介する。

 医学部へ進学するためには学力はもちろん、高額な学費も念頭におかなければならない。6年間授業料を払い続けるためには念入りな計画が必要だ。まずどれだけ学費がかかるのかを把握するため、医系専門予備校メディカルラボ本部教務統括・可児良友さんから最新の学費情報を提供してもらった。

 国立大学は文部科学省により標準額が定められており、各大学はこの額に基づいて授業料を設定している。国立大は医学部も他学部と学費は同じだが、6年間履修するので2年間分、余計にかかる。公立大学の学費は国立大学に準じた金額になっているが、入学金は大学設置の自治体に住む受験生には低く、他の自治体に住む受験生には高めに設定している。

 一方、私立大学はどうか。私立大学の学費を掲載しているが、ここからわかるように最も安くて1850万円と、かなり高額だ。国立大と私立大に関していくつかのモデルケースを、ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに示してもらった。

 1年浪人しても国立大医学部に進学すれば、現役で私立大医学部に進学した費用の半分以下に収まるという。また、実家を離れて仕送りを受けたとしても、国立大のほうが安い。このケースの私立大は、最安値の学費を想定しているので、実際にはもっと差が広がるだろう。

 日本政策金融公庫の2020年調査では、自宅外通学生への仕送り額の平均は年間90.3万円だが、医学部生にはもっと必要だという。

「医学部生は勉強が大変で、なかなかアルバイトに精を出すことができません。教材も高額なので、仕送りは年間150万円以上を見込んであげたいところ。6年間の仕送り総額は900万円程度を見積もっておくのが無難です」(竹下さん)

 一人暮らしの場合は引っ越し代等の初期費用が低く見積もっても50万円程度は必要になる。

 私立大医学部を目指すには、さらなる経済力も必要だ。


「私立大は大学によって学費が2千万〜5千万円程度と幅があります。志望校が決まっていない段階では必要金額がはっきりしませんが、相談に見える親御様には目安として3500万円用意するようにアドバイスしています」(同)

 医学部受験に向けて多くの受験生が予備校に通うが、私立大向けのほうが高額になるという。

「予備校の種類や受講コースによって変わりますが、概算で国公立志望なら年間100万〜300万円、私立志望なら300万〜800万円くらいの想定でしょう」(同)

 一般的に私立大学は学費が安いほど偏差値が高く、学費が高いほど偏差値は低くなっている。08年に順天堂大学が6年間で900万円と大幅な学費の値下げに踏み切り、志願者数が増えて難度も上昇した。順天堂大学に続いて東海大学、昭和大学、東邦大学、帝京大学、日本医科大学とほかの大学も次々と値下げをし、私立大学への学費の垣根が低くなったことでサラリーマン家庭でも地方の国立大学に進まず、地元の私立大学を志望する受験生が増えた。17年に開学した国際医療福祉大学は、6年間の学費を1850万円と最安値を設定している。メディカルラボの可児さんは、「後発の医学部ということで学費を下げ、優秀な学生を確保する狙いでしょう」と話す。

 しかし最近では20年に昭和大学が学費を500万円値上げし、さらに東京女子医科大学も21年に1200万円の値上げを予定している。

「学費の高い大学は敬遠されがちなので、間違いなく入試にも影響が出てくると思います。併願して複数合格すれば、受験生は学費の安い大学を選ぶ傾向があります。そうすると繰り上げ合格を出さざるを得ず、偏差値が下がる可能性もあります」(可児さん)

 最近では海外大学の医学部へ進学する生徒も増えている。学費や生活費を含めた費用は、日本の私大医学部と比較しても安い。ただし渡航費ほか別途費用がかかることも考え、余裕をもって見積もっておきたい。(ライター・柿崎明子)

※週刊朝日  2021年2月26日号より抜粋