東京学芸大附(東京)は、共学校トップの東大合格実績を上げてきた。文系・理系のクラス分けをしないなど、受験中心ではない独自の授業を展開しながらだった。



 卒業して1年後に青山学院大に進み、現在はアイドルグループ・SKE48のメンバーとして活躍する惣田紗莉渚さん(28)は、こう振り返る。

「古文の試験では『自分で歌を作る』という問題が課されたこともありました。物事がなぜそうなっているのかを本質から考えさせてくれる授業が多かったです」

 過去40年の東大合格者数を見ると、1980〜90年代は100人台に達する年も珍しくなく、ランキングは最高2位。脳科学者の茂木健一郎さん(58)、衆院議員の山尾志桜里さん(46)ら東大に進んだ著名人も多い。

 附属の中学校が現在3校あり、約半数しか高校に進めない。内部進学の厳しさも、高い東大合格実績を支えてきた。

 しかし、2000年以降、東大合格者は減少傾向にある。16年には前年に生徒がいじめで骨折などをし、学校側の対応も遅れたことが発覚。17年は高校入学者が定員に達せず、昨年の東大合格者は28人まで減った。

 いじめ事件からの立て直しを託されたのが、17年に赴任した大野弘校長だ。都立有数の進学校・戸山で校長を5年間務めた実績がある。学芸大附はそれまで大学教授が非常勤で校長を兼任してきたが、常勤となって再発防止に取り組む。

 受験指導も始めた。大野校長が説明する。

「放っておいても生徒が自主的に勉強してくれるならば、それが理想的。しかし、客観的に見ると、今はやはりそのような状況ではないのかなと」

 卒業生による大学学部別ガイダンスや長期休校中の講習、過去問の添削指導などを実施。業者模試も導入し、結果について教員研修会を開くようになった。

 ただ、多彩な人材を生んだ自由な校風は変えない。東大にこだわらず、多様化する進路希望に対応していくという。大野校長はこう話す。

「進路は本来、生徒の個性に応じて選ぶべきものです。どの大学に行ったとか、現役か既卒かではなく、生徒自身の満足度を最重視したいです」

(本誌・松岡瑛理)

※週刊朝日  2021年3月19日号