我々人間が生きていくうえで欠かせない3大栄養素と言えば、「糖質」「脂質」「たんぱく質」ですよね。「糖質」は主にエネルギー源として、「脂質」はエネルギー源の他に細胞膜を作るのに必要で、「たんぱく質」は、筋肉や骨をはじめ、皮膚や臓器など我々のカラダを作るのに不可欠な栄養素です。


 
 たんぱく質を含む代表的な食材といえば肉類のイメージが強いですが、魚にも肉に負けないくらい多くのたんぱく質が含まれているんです。中でも、サーモンやマグロ、ブリなどは、肉類とほぼ同じ量のたんぱく質を含んでいます。

 そして魚に含まれるたんぱく質は、肉類のものに比べて消化、吸収しやすいため、お年寄りやお子さま、そして筋トレ中の方などにはおすすめなんです。

 ボディービルダーの方が、毎食、ほとんど味のしない(といったら語弊があるかもしれませんが……)鶏のささみを食べているシーンをよくテレビなどで見ますが、たまにはマグロの赤身やツナフレークなどで味や食感を変えても問題ないと思うんですが……。

 個人的には、脂などの混ぜ物のない「ネギマグロ」は、高タンパク&低脂質で吸収も早い、理想的なトレーニング食だと思っています。

 ところで、「ネギマグロ」と言えば、先日、友人とお寿司を食べていて「ネギマグロ軍艦」が出てきた時に友人が「このネギマグロ、ネギが入ってないんやけど」とつぶやいていました。

 ご存じの方も多いと思いますが、実は「ネギマグロ」のネギは、植物の葱ではないんです。

 職人さんの間では、マグロの肋骨や皮についた身を、スプーンなどでこそげとることを「ねぎる」と呼んでいて、そうして取った身のことを「ネギマグロ」と呼んでいるんです。

 ただ、葱を乗せた「ネギマグロ軍艦」もありますので、ややこしいですが……。

 ちなみに、筆者だけかもしれませんが、焼き鳥屋さんの「ねぎま」について、少し前まで、鶏肉の間にネギを挟んで焼いたものだと思っていました。

 本当はそうではなくて、「ねぎま」は、鶏肉ではなくネギとマグロの組み合わせ、「葱鮪」がオリジナルだと教えてもらったのは数年前でした。こちらの「ねぎ」は野菜のネギで、「ま」が間じゃなくてマグロの「ま」なんですね。

 話がそれてしまいましたが、我々が通常食べる代表的な肉類である牛肉や豚肉、鶏肉などは、ほとんどが人の手で食用に育てられたものですよね。ですので、多少の気候変動などがあっても、安定した品質のものが、安定して供給され、価格も安定しています。

 では、魚はどうでしょうか? 昨年もサンマが不漁で価格が高騰というニュースが流れるなど、年によって価格が大きく変動する魚がある一方で、サーモンなどではそうした価格変動はほとんど聞きません。

 というのも、以前このコラムでも書きましたが、サーモンは全量がノルウェーなどで養殖で育てられているので、安定供給されているからです。

 一方のサンマは、秋口に北から南下してくるのを漁師さんが取ってくるのが大半ですので、その年の漁獲量によって価格が大きく変動します。

 それなら魚もどんどん養殖をすれば、安定供給できるのではと思いますよね。でもそう簡単ではないんです。

 日本の漁獲量全体に占める養殖比率は約25%程度と、肉類に比べると非常に低くなっています。その理由として、日本は周囲を海に囲まれていて、新鮮な天然の魚が豊富に取れるということもありますが、他にも魚ならではの理由もあるんです。

 それは、魚の養殖の効率の悪さです。

 一般的には、鶏は生まれて50日〜60日で出荷され、豚は約半年、牛でも1年半から2年半で出荷されるようです。

 一方の魚はというと、最も早いハマチで約1年半から2年、ブリと呼べる80センチまで育てるには3年以上かかります。真鯛で2年〜3年、クエやハタだと3年から5年程度でやっと出荷できるんです。

 さらにある程度仕切られた空間で飼育される牛や豚、鶏に対して、魚の養殖は、自然の海に浮かべた生簀で行われることが多く、台風で生簀が壊れて逃げたり(一度逃げた魚を捕まえることはほぼ不可能ですよね)、赤潮などで全滅したり、大きい魚が小さい魚を食べてしまうことによる数の減少(それほど大きさが違うわけではないので、大抵の場合、大きい方の魚ものどに詰まらせて死んでしまうようです)もあるとのことです。飼育期間が長いほどこうしたリスクが高くなりますよね。

 その他、餌のコストなどの課題もあり、養殖業の拡大は一朝一夕にはいかないようです。

 そうした中、くら寿司では、付加価値の高い「オーガニックはまち」の養殖や、より効率的な餌やりを実現するAI給餌の実験を開始するなど、国内の養殖拡大へ向けた取り組みを、漁業者の皆さんと共同で開始しています。

 こうした取り組みによって、これからもおいしい魚をリーズナブルな価格で提供していきたいと思っています。

 2019年4月に始まったこの連載が、『お魚とお寿司のナイショ話』(税込み990円)として書籍化され、2月19日に発売されました。

 ご家庭や職場、学校などでのちょっとしたコミュニケーションのきっかけになるネタが満載です。書店やネット書店のほか、全国のくら寿司のお店でも販売しています。

○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長

※AERAオンライン限定記事