私学最難関大・早稲田の内部で変化が起きている。これまで人気のなかった学部が注目を集め、学内でも人気を誇っているのだ。



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「社学が第1志望でした」

 こう話すのは今春、早稲田の社会科学部(通称・社学)に進む女性(18)だ。同大の看板学部の一つ、法学部にも受かったが、社学を選んだ。

「社学はさまざまな学問を広く浅く学べる点が魅力的でした。やりたいことを入学後に決めることができるのがいいですね」

 社学はもともと、第二政治経済学部、第二法学部、第二商学部を統合して1966年に創設された夜間学部だ。ジャーナリストの津田大介さん、ミュージシャンの小室哲哉さんやデーモン閣下らが在籍したことでも知られるが、早稲田内の序列では下位だった。社学に合格した女性は言う。

「今、偏差値は政治経済学部や法学部と並ぶレベルだと思います。昔の社学のイメージはないです」

 何が起きているのだろうか。教育ジャーナリストで追手門学院大客員研究員の西田浩史さんとデータサイエンティストの井上孟さんに、最新学部序列を作ってもらった。過去3年間のインターネットでの検索数や言葉の種類の多さといったデータ(約5億件)を分析した結果だ。

 データを見ると、社学は、ブランド力では早稲田トップと言われる政治経済学部の次に位置する。慶應の看板学部である経済学部や法学部などとほぼ同等レベルだ。この背景として「幅広く学べる学際系学部の人気がある」と西田さんは見る。

 2009年に完全昼間学部に移行した社学では、経済学や政治学など社会科学のほか、哲学や歴史学などの人文科学、生物物理学など自然科学も学べる。英語による授業やフィールドワーク(現地学習)もある。学部長の早田宰教授は言う。

「環境問題や貧困など社会の課題に取り組む現場に行くと、複数の専門領域の理解がないと解決できないことに気づきます。こうした問題解決の手法を身に付けるのが世界の潮流で、それに取り組んでいるのが社学です。社学の学びはグローバルスタンダードなのです」

 ほかにも、教育学部や国際教養学部、文化構想学部など学際的な学びができる学部の人気が高まっている。なかでも注目は人間科学部(人科)とスポーツ科学部(スポ科)だろう。

 人科は87年、スポ科は03年に創設された「若い」学部だ。郊外の所沢キャンパス(埼玉県所沢市)にあり、しかも最寄り駅からバスで15分かかる。都心の本部キャンパス(東京都新宿区)にある政治経済学部や法学部、商学部などと比べると、人気が低かった。

 しかし、今年度の河合塾の偏差値によると、人間科学部人間環境科学科(文系)は18年度65から67.5にアップ。スポ科も同62.5から65に上がっている。

 人科に通う新4年生の男性(22)はこう語る。

「コロナ禍で本部キャンパスとの差が薄まっているように感じます」

 オンラインで授業が行われるようになり、学生はほとんどキャンパスを訪れなくなった。

「今の1年生やこれから入ってくる新入生は僕たちみたいな格差はあまり感じないでしょうね」

 立地だけではなく、学びそのものにも目が向いている。人科には早稲田で唯一、ネットで学ぶ通信課程がある。フィギュアスケート男子で2大会連続して五輪金メダルを獲得した羽生結弦選手が在籍(昨年9月に卒業)したことでも有名だ。専用の収録スタジオがあり、オンライン授業のノウハウも蓄えられている。入試広報担当者は言う。

「今年の通信課程の志願者数は昨年の266人から20%以上増えました。人科の環境や健康、スポ科のスポーツビジネスなど社会の関心の高いテーマを幅広い視点から学べることで注目が集まっています。学内での人気も上がっています」

(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日  2021年4月2日号より抜粋