私学最難関大として競い合う早稲田と慶應義塾の学部序列に異変が起きている。インターネットでの検索数などを分析したところ、早稲田の社会科学部(通称・社学)が看板学部になりつつあることなどがわかった。両大の現状と未来を紹介する。



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 今春、慶應の医学部に合格した女性(18)は言う。

「慶應の医学部は別格です。早稲田? 受けようとは思いませんでした」

 データを見ても、両大を通じて最上位に位置していることがわかる。早稲田には医学部がなく、「慶應との決定的な差はここにある」と指摘する早稲田OBは多い。

 慶應医学部といえば、私学最古の歴史を持つ医学部だ。付属病院は臨床の最先端を行き、研究もトップクラス。学閥が強く、各界へのパイプもある。

 そんな医学部の地位がさらに上がる出来事が起きた。昨年11月、慶應が東京歯科大との合併協議を始めると発表したのだ。合併が実現すれば、文系・理系の学部がある総合大学で、医・歯・薬・看護を持つ医療系総合大でもあるのは、慶應が日本で唯一となる。

 近年の教育や研究の現場では他学部との連携が必須だ。慶應では医学部と理工学部が、治療・手術支援や診断・評価支援などの研究を一緒に行っている。医学部、薬学部、看護医療学部も共同で授業を実施するなどしている。医学部に合格した女性は期待を寄せる。

「世の中は医療だけで成り立っているわけではありません。歯・薬・看護や理工系の学生と一緒に学べるのは大きいです」

 今回、教育ジャーナリストで追手門学院大客員研究員の西田浩史さんとデータサイエンティストの井上孟さんに、早稲田・慶應両校の最新学部序列を作ってもらった。過去3年間のインターネットでの検索数や言葉の種類の多さといったデータ(約5億件)を分析した結果だ。データによると、医学部をはじめ、理工、薬、歯、看護といった理系学部のブランド力は上がると予測されている。私立医学部・歯学部専門予備校メルリックス学院の鈴村倫衣学院長が指摘する。

「早稲田も医学部創設の話がありますが、もたついています。慶應は看護医療学部を作り、薬学部を合併し、サクサクと医療系総合大学に発展していきました。早稲田も東京女子医科大と連携するなど取り組んでいます。ただ、学内で連携できる慶應とは差がつくでしょう」

 慶應の序列で最下位に沈むSFC2学部(総合政策学部、環境情報学部)も上昇傾向にある。湘南藤沢キャンパス(神奈川県藤沢市)の頭文字を取ってSFCと言われる。

 両学部とも90年に創設され、日本で初めてAO入試(現・総合型選抜)を導入。外国語教育やコンピューター教育、ディスカッションなどの双方向授業に力を入れ、看板学部にのし上がった。その後、そうした特徴も他大学で取り入れられ、独自性は薄れた。都心から離れた立地の悪さや就職率の伸び悩みなどから、人気は落ちた。

 しかし、状況は変わりつつある。例えば慶應義塾高からSFCに進学した生徒は、19年の20人から20年は74人に増えた。学びの魅力に注目が集まっているとされる。推薦・総合型選抜の対策を専門にする洋々の清水信朗代表が説明する。

「AOの志願者は増加しています。教員の入れ替えが多く、第一線で活躍する旬な人が授業を持っていて、学生の満足度は高い。1期生が50歳を超えるころ。卒業生の活躍の姿が見えてきているこれから、より人気が高まると思います」

 最後に20年後の序列を見ておこう。文系学部では早稲田に勢いがあり、特に社会科学部の上昇が目覚ましい。政治経済学部と並ぶ看板学部になり、両学部は慶應の経済学部、法学部よりも上位に来る。スポーツ科学部は文学部より人気を集め、上位と下位の学部の差はなくなっていく。

 慶應では医学部を筆頭に理系学部がブランドを牽引(けんいん)する。そのなかでSFCも人気が急上昇する。井上さんはこう見る。

「SFCは文系学部だけでなく、理工学部など理系学部とも比較されています。こうした比較は、慶應の経済学部や早稲田の政治経済学部など最難関学部ぐらい。SFCは早稲田の社学並みか、それ以上の大出世学部になる可能性を秘めています」

(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日  2021年4月2日号より抜粋