首尾良く必要な資産を用意でき、無事FIREを達成したとしても不安は数多い。もしも病気になったらとしたら……。AERA 2021年4月5日号で経験者が答えます。47歳で資産約1億円を築いて会社を早期リタイアした桶井道さんと、40代後半でFIRE達成のたぱぞうさんに聞いた。



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 FIRE達成後にもし病気になったらどうすればいいのか。

 若い頃から消化器系の持病があり、40代にはその病気を理由に時短社員の道を選んだ桶井道(おけいどん)さんの答えは「保険に入っておく」だ。医療費が高額になる先進医療に対する保障もついた医療保険に二つ加入している。

「がん保険と医療保険に、先進医療特約を目的に加入しました。『もしも』をカバーするためですが、がん保険のほうは貯蓄型保険でもあるので、すでに払戻金が支払額を上回るプラス運用に入っています。もう一つの医療保険も保険料は200万円一括払い、いつ解約しても180万円が返ってきます」

 FIRE達成者は、資産はあっても年収は低くなる。その結果、治療費も節約できる。

「国が運営している健康保険制度にも、高額な医療費に対する支払いの上限金額を定めた高額療養費制度があります。FIREを達成して年収が低くなれば、この高額療養費制度だけで十分だと思います。実際、僕には持病がありますが、これまで加入した医療保険から保険金などをもらった経験はありません」

 高額療養費制度は、高額な医療費を支払った場合、自己負担限度額を超える分があとで払い戻される制度のこと。月収に応じて自己負担の上限額は変わるが、標準報酬月額が26万円以下の場合、月5万7600円を超える医療費は後で払い戻される。療養開始から4カ月目以降は4万4400円に自己負担限度額が引き下げられる。

「病気は人生の不安要素の一つ。だからこそ、経済的な自立を達成することが大切だと思います。自身が持病を持ったからなおさらそう思います。労働は、健康が大前提。これは健康なときには気づかないものです」と桶井道さんは語る。

■勤めていても妻は退職

 資産1億円でFIREを達成し、今では米国株に加えて不動産や太陽光発電にも投資しているたぱぞうさん(40代後半)は、会社員時代に妻を病気で失うつらい体験をした。

「妻は安定した企業で働いていましたが、3年間の病気療養で退職せざるをえませんでした。企業に勤めていても、病気になったあとの生活を一生担保してくれるわけではありません。組織は契約関係の中で人を切っていく面があります。逆に同僚が心の病を患う姿などを見てきて、『なんのために会社でそこまで頑張る必要があるのか』という思いが出てきました。それも会社を辞めて独立するきっかけになりました」と語る。

 会社に勤めているから大丈夫というわけではない。備えが必要なのは、FIREをしていてもしていなくても同じだ。(ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・小長光哲郎)

※AERA 2021年4月5日号より抜粋